先日書いた通り、思考停止に陥る『対処法の想定外』について、別の例を挙げます。
昼間に銀行で大金を引き出して、一人暮らしの自分の部屋までそれを入れたバッグを持ち帰る場合を考えます。
その際は、不良に絡まれないか、ひったくられないかを警戒しますよね。それが『状況の想定』。
もしそうなったら、すぐに助けや警察を呼ぼうとか、そうならないように、安全な道を通ったり、平静を装ったりもします。それが『対処法の想定』。
それを想定したのは、大金を引き出そうと決意した時。そこから銀行に行くまで、あるいは引き出してからも時間があるので、想定を膨らませることができます。交通事故にも遭わないようにしようとか。状況が想定されなければ、対処法も想定できません。それが、『セット』という意味です。
そして、無事にバッグを自室まで持ち帰り、机に置いて、『ミッション完了。さて、昼飯でも作るか』と思い、翻って台所に向かおうとした瞬間、部屋に隠れていた見知らぬ人が目の前に現れたらどうでしょう。
当然、驚きますが、部屋に入った時は、荒らされた形跡もなかったので、『どうやって入った?』『強盗?』『夢か幻か幽霊か?』『なぜ姿を現す必要が?』のようなことしか最初に思い浮かばず、それからほんの少しの間があって、大声を出したり、逃げたりするでしょう。部屋に隠れた存在がいるという想定がされていなかったので、対処がすぐに思い付かず遅れてしまうということです。しかも、その想定はバッグに入れた大金を盗まれないようにするためのものではないので、『状況の想定外』にも当てはまりません。これが、『状況の想定外』が存在しないという意味です。
仮に強盗だとして、その強盗からすれば、部屋の主が自分を見つけた瞬間から思考停止しているに等しく、向かい合っているにもかかわらず、その間を利用して、様々な手段をとることができます。主がそれまで大事に抱えていたバッグを奪って逃げることも容易でしょう。
これが、(『状況の想定外』or『状況の想定外が存在しない』)=『対処法の想定外』=『思考停止』が成り立つ図式となります。