「うちの男は何もしない」とは、たまに聞く言葉だけど、それはうちも同じ。父も仕事で疲れて寝ている母を「おい、お茶お茶」と、一々起こしていたくらいだから。
お茶くらい、飲みたければ自分で淹れた方が早い。当時からこう思っていた。だけれど……。
僕も弟も独り暮らしを経験しているから、必要最低限の家事や掃除はやる。
弟は「味付けが気に入らない」とか、母が作る料理に文句を付けていた。
だからか、大学時代は飲食店でアルバイトをしていたみたいで、簡単な料理は作っている。僕も野菜を入れた味噌汁とか、簡単な物は作っていた。
学生の頃は協調性がなくて、特に小学生時代は口を開けば文句ばっかりで、非協力的だったくせに、仕事をやり始めた頃からか、それまでは人任せだったけど、今では「何かやらなければ」、というのか身体が動くようになった。
大阪の従兄が結婚して、披露宴後に伯父のうちで、身内だけの細やかなお祝いをした時の事。
お祝いの席が終わって、僕がオードブルの空き容器をキッチンに持って行く姿を見た祖母が、「宜蒼はよう動くね」て。
別にオードブルの空き容器をキッチンに持って行っただけなのに。
今度は湯呑茶碗に人数分のお茶を注いでいると、座っていた祖母がキッチンに来て、僕を指差して「こん子はようするがねえ」と、褒めているのやら、確かにキッチンに男は僕一人しかいなかったけど。
別に、「これからの時代、男も家事をやらなきゃ駄目だ」とか、喧しく言われて育った訳でもないけど、自然とそうなった。
けど、まだまだ傍観していて「見てないで仕事を探せ」と言われてしまったり、こんな事も言われなければ気が付かないのか……。と、未だに落ち込んだりするのですがね。
「機転が利く」人間って、案外大変な事。