• 現代ドラマ

画面は思いやり発信局 棚おろし

 元NHKアナウンサーの住吉美紀という人は、「50代、自分をいったん棚おろし」という記事を書いているけど、僕は「40代、自分を棚おろし」かも……、ていうか、同級生と再会したりLINEのやり取りをし始めた時点で、今まで引籠ってた自分にとっては「棚おろし」なのだろう。
 
 横紋筋融解症で二度も救急搬送された後から、小学校からの同級生と、連絡を取り合うようになった。計算すると、20年以上も同級生とは梨の礫だった事に気付いた。
 「棚卸」には在庫確認という意味と、欠点を一つ一つ取り上げるという意味があるそう。僕は両者の意味で「棚おろし」。

 一度は意識を失った身体。意識を取り戻してもう一度0から……と考えて、病院の臨床検査技師の女性に、連絡先を書いたメモを渡したりしたけれど、それは間違い。
 0からならば、同級生で向き合ってくれる人がいるだけで、ありがたい事。

 弟は横紋筋融解症を、「他の薬の副作用もあるのかもしれない」と分析し、父方の叔母は、「あの子はノートに三行くらいの悩みを十行くらいにするから、きついんでしょうね」と、各々が母のスマートフォンに言って来たそうな……。その話ですら後日談で、全くの初耳だった。

 要は、これまでに培い会得しておかなければならなかった、言って良い事と悪い事などの分別、判断力、推測する頭を全く培いもしなければ、会得もしていなかった。
 大人としての対応が出来ない。人に甘えるだけ甘えて、傷付き落ち込むだけで、何も実になっていなかった。
 弟の言葉を借りるならば、「40年分の副作用」なのだ。
 でもその弟は、「そこに気付いたって事は、成長したんじゃない」とあっさり。
 彼は間違っていれば「それは違う」、正しければ「そうだ」とはっきり確言出来るサバサバした性質。だから嘘を言わない。

 女性の同級生は「良いきっかけになったんじゃない」て何気に言ったけど、本当に「良いきっかけ」。1日に二度も救急搬送されるくらいの事がなければ、誰とも再会もLINEのやり取りもしていなかった。
 30代の10年間も雲隠れして、40代の10年間も隠れるつもりだったのか!!
 生来、そのくらいの事がないと動かない。遅疑としていてのろくさい人間なのさっ。
 男性の同級生も「人は自分が思う程、気にしてない」て言っていたくらいだから。

 だけど、自分を否定してばかりでは、誰が自分を受け入れてくれる? まずは自分が自分の事を受け入れないと。
 君は生来マイペースで、常に何か勘考しても解決しようがない事を勘考するのが好きで、興味を持ったものを調べて、文章や物語を書いたり作ったりするのが、「好きなだけ」なんだよ。
 それに、人から「考え過ぎ」とか「自分を客観的に見過ぎ」て言われるのも、それはそれで君の個性……なのだろうよ。
 この様に、今現在も「棚おろし」中だ。

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