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海本読記 その8

【前書き】

熱中症にもならず、無事生き延びています(生存報告) 先月も似たようなことを書いたと思うんですが、本当にクーラーのおかげで夏を乗り切ることができています。本当にありがとう、クーラー……(ちなみに先月の海本読記を書いた後にメーカー検索したら、どうやら本当に東〇製だったらしい)

さて、今月は大して本を読んでない(暑すぎて読書するやる気が起きず、アマプラで「ド〇ブラ」とか「リ〇リコ」とか「ピン〇ドラム」とか「メ〇ドラゴン」とか見てた)ので、二冊分だけ作品の感想を読書ノートしていきます。

【作品の感想】

一冊目:『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ著(中央公論新社)

一言で「癖」に刺さった所を言うなら「孤独に対する解像度の高さ」です。主人公は生まれた環境が悪かったとはいえ、お世辞にも「現実にいたら絶対関わりたくないな……」と思うタイプの女性です。彼女の別作品である『星を掬う』同様に、まぁ読み手からしてもヘイト買いやすそうなキャラ造形をしているなぁと思いました。ですが、それを超える孤独に対する「解像度」……もとい詩的な「描写」がすごい「癖」でした。

特に刺さった部分だけ抜粋させていただくのですが、

「孤独の匂いは肌でも肉でもなく、心に染み付くものなのだ。(中略)海にインクを垂らせば薄まって見えなくなってしまうように、心の中にある水が広く豊かに、海のようになれば、染み付いた孤独は薄まって匂わなくなる」

という描写です。

これ、本当に天才的ですよね。特に「染み付いた孤独は薄まって匂わなくなる」って描写は、ただ「孤独」が「染み付く」だけじゃなくて、「匂わなくなる」……つまり日常的に「孤独」を思い出すわけではなく、ふとした瞬間に――――まるで「古傷」が疼くように――――その「孤独」の記憶を思い出して辛くなる……っていうのが身に覚えがありすぎて、この部分を読んだ瞬間に辛すぎて一度本を閉じてしまいました。

数十分ぐらい辛さが取れなくて、でも同時に「町田そのこ、やっぱりすごい作家だわ………!」と編集者でもないのに編集者目線で感嘆していました。マジで辛くなること間違いなし(最悪の売り文句?)なので、解像度の高い「孤独」に「ゲー!」ってなりたい人にはオススメの本です。


二冊目:『なめらかな世界とその敵」伴名練著(早川書房)

私の人生において「これだけは葬式の時に一緒に燃やして欲しい五冊」というものを定めているのですが、その中に入りました。ランクインです。

それはさておき、一言でこの本の「癖」に刺さった所を言うなら「癖の嵐」です。「こいつ何言ってたんだ……」と思う人もいるかもしれないんですが、そのレベルの話がこの中に収録されていました。それが「美亜羽へ贈る拳銃」という短編です。

「癖の嵐」というからにはマジで「癖」だらけだったんですが、簡潔に言えば「自分より賢い人間が好きな男主人公が出てくるのが好き(私もそうなので)」「『わたし』や『貴方』のような人間の人格は砂の城のように脆いという論」「その論を踏まえての結末(ネタバレになるので言えないが)」まで全部「癖」でした。

一つ一つの項目に対して長々と書くと面倒なので語らないんですが、この中でも特に二つ目の論が好きでした。すごいですよね。私がいつも語りたい! と思っていた人間の「変化」に関しての話を、私の数十倍は高い「解像度」で語ってくれているんですよね。しかもそれが小難しい感じ(いわゆるSF的な描写)ではなく、「突然女遊びに目覚める」とか「(突然)後ろ向きになる」みたいな分かりやすい例で書かれていたのが、もうすごい。「敗北した」……というか、正直ここまで私がいつも「自分の小説で語りたい!」と思っているテーマをこのレベルで書き出したの、正直悔しいなぁと思いました。これで人外と人間の作品だったら、本当に筆折っていたかもしれません。そのレベルで私の「癖」にぶち刺さり、「これだけは葬式の時に一緒に燃やして欲しい五冊」にランクインした小説でした。ちなみに他の四冊は『斜陽』とか『恋する寄生虫』とかです。(これから死ぬまでの間にもっと変動していく予定なので、私が文学沼にハマる原因もとい処女を奪った『斜陽』以外の作品は変わると思うけど)

【後書き】

課題も一段落して落ち着いてきたので、来月はもう少し投稿頻度を上げることができたらなーと思います。できたらいいな。最近サボり癖ついているし、無理かもしれないけど。

それでは、また。その9は来月末に更新予定です。

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