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海本読記(読書日記) その13

【1.前書き】
長い冬が終わり、うららかな日差しが地を照らす春になりました。読者の皆様に置かれましては、どのようにお過ごしでしょうか。

私の方は来たるべき春の花粉に備えて「アバダケダブラ」の練習をしてます。実況動画でハ〇ポタのレガシーのゲームを見てから、ずっと「この呪文で花粉殺してえぇぇぇぇぇー!」と思って練習しているんですよね。今年こそ、この手で花粉を滅ぼします!(選挙演説)

さて、先月「積読消化してる!」と言った割にあんまり小説読めてません。いや読んでないというか、積読していた本の半分ぐらいが「ハズレ」だったんですよね。表紙買いしてハズレ引くと、本当に悲しい。

ということで、今月は二冊だけ本を読書ノート(動詞)していきます。



【2.本文(作品の感想)】

一冊目:『君の話』三秋縋著(早川書房)

『恋する寄生虫』とか『三日間の幸福』とか、海沈生物の大大大好きな物語を書いた作者さんの新作(二年前の作品だよ!!!!)です。「人外にめちゃくちゃにされる人間」とかは別に出てこないんですが、どの作品も表現が優しくも美しいのでオススメです。『恋する寄生虫』は最後まで最高なので本当に読んで欲しい。

それはそれとして、『君の話』の方の感想なんですが。すごく幻想的で虚しいな、と思いました。「好き」というものに「狂ってしまうほどに好き」と「胸を搔きむしりたくなるほどに好き」があるとしたら、後者の「好き」って感じです。

この話は「存在しない記憶(義憶)」によって過去を都合良く改変できるようになった世界で、主人公と灯火が「終わり」を前提にイチャイチャする話です。簡単に言えば。

これだけなら「うわっ、量産型悲恋物語かぁー?」という感じなんですが、この物語はそれだけじゃなくて。核心的なネタバレは避けるんですが、とある地点をきっかけに物語が「ひっくり返り」ます。

この「ひっくり返った」瞬間に全身の血液がふつふつと沸き立ち、身体中に鳥肌がぶわっと走りました。物語の結末に関しては個人的に「まぁまぁ……」という感じだったんですが、その「瞬間」だけは本当に良かったので、オススメです。



二冊目:『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信著(新潮文庫)

「これ私が紹介する必要ある?」ってぐらい有名な連作短編です。なんだかんだ米澤先生の作品って『氷菓』シリーズしか知らなかったなーと思ったので、今回読んでみました。

それで感想なんですが、まぁ面白いよね。面白い上に女女関係性の話が沢山あるので、私の癖にぶち刺さる。特に一つ目の「身内に不幸がありまして」が良かったです。癖に来た。

何が癖に来たのか? と言われたら、まぁこの話を最後まで読んでみてくれ……としか言いようがないんですが。でも、すごいですよ本当に。ざっくりいえば「信頼を寄せた相手が、実は自分のことを”愛すべき駒”と思っていた」って感じです。

これ以上は核心的なネタバレになるので言えないんですが、この話の終盤を読んだ瞬間にすごい険しい顔になることができます。険しすぎて額に皺の山ができそうなぐらい険しい顔になれます。

まさか○○が○○を○○しようと思っていたの、予想できなくはないけど、予想したくない事実すぎた。他の話もオススメなので、マジで読んだ方が良いです。(私が言うまでもなく、読んだ人の方が多いと思うけど……)



【3.あとがき】
今月読んだ作品はどっちも「ダーク!」って感じで、面白かったけど、胸がちょっと疲れました。来月はもうちょいポップでライトなモノを読みたいけど、あんまりライトすぎると、今度は内容が無さすぎて読むのが苦痛になってしまうんですよね。難しい。

それでは、また。その14は三月末更新予定です。



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