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海本読記(読書日記) その15

【謝罪】
四月に三十一日が存在すると思っていて、昨日はディスコエリジウムやってました。四月中の更新が間に合わなくて申し訳ありませんでした。以後気を付けます。ディスコエリジウムは人格クリエイト次第でテキストが結構変わるの楽しいので、おすすめです。これを読んだ皆さんもやってください。終わり。

【読書日記 本編(ネタバレ注意)】
一冊目:凪良 ゆう『汝、星のごとく』(講談社)

本屋大賞、おめでとうございます! なんとなく「今年の受賞作は、これっぽいな……」と思っていたら本当に受賞していて、びっくりしました。

それでこの話のあらすじなんですが、ざっくり一言で言えば「クソ田舎出身カス親持ちの男女の恋愛物語」ですね。とにかく治安の悪い設定の中で、陽キャと陽キャがすごいわちゃわちゃする……って感じの話です。

まぁその……「Twitterのbioに"破滅的な小説が好き"と書いている海沈生物とかいうオタク、絶対苦手そうー!」と思われるかもしれないんですが、ですが…………うん…………って感じでした。

ですが! 確かに主人公二人の関係性はそんな好きになれなかったんですが、ホモソ……主人公の男とバディを組んで漫画家をやっている尚人くんって子いるんですが、その子と主人公の関係性が本当に最高~って感じでした。

特に尚人くんが自殺した時の描写が良くて、

"尚人、と名前を呼んだ。いいや、呼んでないかもしれない。自分が声を発したのかどうかわからない。頭の中でぷつんと音がした。ぷつん、ぷつんと次々切れていく。俺をつなぎ止めていたものが、すべて切れていく。"

って描写なんですが…………本当に良くないですか!? まぁ人間関係を「糸」のようなものに例えること自体は結構あると思うんですが、恋愛ではないバディの関係性が「糸」に例えられ、その上で尚人の死が主人公をつなぎ止めていた「すべて」であるという事実が本当に良い。

非恋愛のホモソ的男男大好きオタクはそのために読んだ方が良いと思います。おすすめです!


二冊目:安壇美緒『ラブカは静かに弓を持つ』(集英社)
本屋大賞一位を逃したのが……悔しい! 個人的なイチオシだったので、一位じゃなかったのを見て本気で悔しい気持ちになりました。でも、二位だったのも十分す
ごい。とにもかくにも、おめでとうございます!

それで話のあらすじなんですが、一言で言えば「JASRACの俺、お金を払わずに演奏をしている音楽教室にスパイして、証拠を掴んできます!(なお、めちゃくちゃそこの講師に絆される)」って感じの話です。別になろう系とかではない。

この話の良かった点としては、演奏している場面の没入感がすごい。例えば、

"その音色は真水のように、柔らかくぬるく澄んでいた。あの日とはまるで響きが違う。古い絵画が色を取り戻していくかのように、鮮やかだった”

みたいな文がボンボン出てきます。それが作品への没入感をどんどん増させていき、やがて読者は深海の奥深くに沈んでいくような気持ちになるんですよね。これ体験したら「おおお……」って本気でなると思うので、真面目に読んでほしい、おすすめです!

三冊目:青島もうじき他『零合』(零合舎)
今まで読んだ百合小説アンソロの中で一番好きかもしれない、と本気で思ったぐらい良かったアンソロです。そんな百合アンソロ読んでないけど、暫定一位です。すごい、すごい。

どれも良かったので全部紹介したいのですが、今これ書いている時点で大分目がしょぼしょぼになってきているので、一作品だけ紹介します。まぁ前述のように「破滅大好き!」なオタクなので読んだ人なら分かると思いますが、綾加奈「過去にはなく、未来にもなく」です。(山口隼「嘘n」も破滅的な話ではあるけど、青春系の破滅の方が若干性癖なので……申し訳ない)

それでこの話のあらすじですが、一言で言えば「人生をおしまいにしたい女を、そんな女のことが好きな女が助けに行く話」って感じです。いかにも私が好きそうな話ですね、確実に。

特に良いのが最後の一文で。これ深刻なネタバレになるのであまり深くは言わないんですが、

”その後の話なんて、気にするものじゃない”

って一文で締めているんですよ。ですよ。いや、この一文だけ見ても「このオタク、なんでこんなに興奮しているんだ……?」と思われるかもしれないんですが、太宰治『斜陽』が私の破滅理論の根幹にある、って言ったのなら、なんとなく理解できると思います。ああいうタイプの破滅が好きなので、こういう「未来とかどうでもいい、今さえ良ければ良い」みたいな刹那主義的なやつが本当に好きなんですよね。

まぁとにかく、この作品はこの最後の刹那主義的一文に至る経緯もめちゃくちゃ良かったので、是非実際に買って読んでみてほしいです。「嘘n」も読んでほしいし、「あーちゃんはかあいそうでかわいい」も読んでほしいし、本当に買ってほしい。夏の次回作も楽しみに待ってます。

【終わりに】
今月(もう五月入っているが……)はまぁ結構本読めて良かったし、特に零合とかいう超弩級の「当たり」を引けたのが本当に良かったです。皆さんにも買ってこの気持ちを共有してほしい。

ということで、今回の読書日記はここまでとします。来月(今月)こそはちゃんと五月中に出したいと思います。それでは、また。

(次回更新は五月の月末予定です)


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