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海本読記 その6

 腰痛で死にかけてる私です。座椅子が切実に欲しい。今月の読書日記は読んだ三冊の本を紹介します。(内容のネタバレ注意です)

一冊目:ミラン・クンデラ著『存在の耐えられない軽さ』 集英社文庫
 いわゆる男女の恋愛小説です。四人の男女による愛の悲劇なのですが、哲学的部分が面白い。まぁ面白いと言えども、時代が時代です。恋愛関係の比喩表現が男女に限定されていたりと個人的に「うっ」となる所はあるのですが、それを差し引いたとしても、「俗悪的なもの」に関する話やタイトルである「存在の耐えられない軽さ」を巡る物語の哲学的部分の是非を考えるのは楽しかったです。
 個人的には存在の「軽さ」も「重さ」も肯定派です。私は変化する人間も変化しない人間も平等に愚かでしかないと思っているので。何の話かは読めば分かるので読んでください。多分Amazonとかにあると思う。本屋は……古い本なので、古本屋を探せばあると思います。あるいは、大きな本屋ならあるかも。有名な本なので。

二冊目:アガサ・クリスティー著『第三の女』 早川書房
 衝動買いした本です。話の内容ですが、かの有名な探偵ポアロの物語です。事務所を訪ねてきた女が「ポアロ年寄りすぎだわ」と言って去っていき、ポアロが叫んじゃうことから始まります。

 アガサ・クリスティーの本自体を読むのはこれで三冊目です。ですが、私はポアロの話を読むのは初でした。その感想なんですが、思っていた以上に感情的でした。
 私はてっきり、ポアロって煙管吸って珈琲飲んでいる名探偵だと思っていました。なので、ポアロが初っ端から「ちくしょう、ちくしょう……」って叫んでいるのを見て「こ、これが名探偵の姿なのか……? それも2000年代の作品ではない名探偵の!?」と驚き笑いました。本当に名探偵なんですか? これが? この人が?

 でも最後はちゃんと謎を解決しているし、優秀な探偵ではあるんですよね。「年寄り」呼ばわりされたのをめちゃくちゃ根に持つ、面白名探偵ではあったけど……。実は原作のホームズを読んだことがなかったのですが、今回のポアロの感じを見ていると、俄然読みたくなってきました。今度読むので、その時はまたここに書きます。

三冊目:ハリイ・ケメルマン『九マイルは遠すぎる』 早川書房
 これも二作目同様に推理ものです。内容ですが、ニッキイ・ウェルト教授が「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない。まして雨の中となるとなおさらだ」から推理しろという無理難題を主人公に押し付ける短編を始めとした短編集です。

 短編集だったんですが、今回読んだ本の中で一番萌えていました。主人公とニッキイ教授はいわゆる師弟関係みたいなものです。その時点で萌えまくっていたのですが、加えて、ニッキイ教授は主人公のことがめちゃくちゃ好きです。
 例えば、主人公が家を改装することになり、一週間ほどホテルに泊まるという話をします。それを聞いたニッキイ教授は、あろうことか「ホテルに泊まるぐらいなら俺の家に泊まれ」と言ったんです。いくら弟子とはいえ、他人です。そんな他人を自分の家に招くの、「愛弟子がすぎるでしょ!」と読みながら声出かけました。師匠から弟子への愛が強いと……嬉しい!

 また、ニッキイ教授はこう見えてまぁまぁ倫理的じゃないです。どの短編集の結末かはネタバレになるので言いませんが、倫理的じゃない顔を見せる瞬間があります。その開示自体は盛り上がる感じでもないのですが、前述のように愛弟子を部屋に招くような師匠が一方で、興味がないことに対しては倫理ないムーブメントをしているのがめちゃくちゃ良くて萌え萌えしました。
 最高師弟関係を浴びれるので、今回の三冊の中だと一番オススメの本でした。


 ということで、今回はここまでです。今回読んだ本は全部面白かったのですが、マジで『九マイルは遠すぎる』の私の癖に刺さり度は異常だったので、ぜひ気になった方は読んでほしいです。それでは、また次回。

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