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いくひ誌。【1221~1230】

※日々何もせずとも死に近づく。


1221:【ペットボトン】
確率を操る競技がある。名をペットボトンという。運命を捻じ曲げるスポーツとして名高く、古くは紀元前までさかのぼる。羊飼いたちが手持ち無沙汰になったとき、或いは見張り役を押しつけあうときにそれは行われた。手持ちの水筒を投げ、うまく垂直に着地させる。投げる際、水筒を宙で一回転させなければならない。ルールは単純だが、水筒には水が四分の一ほど入っている。裏か表か、とコインを投げるのとはわけが違う。時代の変遷に伴い廃れたそれら風習が、西暦二千年代、情報社会の到来によってふたたび脚光を浴びた。火付け役は一人の少年だった。インターネット動画投稿サイト「YOUTUBE」にて、水の入ったペットボルを放り投げる動画を投稿した。映画を観ながら、自転車に乗りながら、自動車の助手席の窓から、あらゆる状況からでも、少年の放ったペットボトルは地面に垂直に着地した。動画はまたたく間に閲覧数を増やし、二年後には一億PVを記録した。全世界に膾炙したその絶技は、単純なルールと、ペットボトルさえあればできる手軽さから、一躍トップスポーツとして流行した。それから十年、いまではペットボトンは世界大会が開かれるまでに規模を拡げた。これは、そんな現代によみがえった古の風習、新時代のスポーツ、確率と運命を操る競技に人生をかけた少女と、彼女の運命を捻じ曲げたひとりの男の物語である。(つづかない)


1222:【鬼ごっこ】
知覚の裂け目を移動する。追いかける者、逃げる者、その空間内にいるふたりだけが体感することの可能なそれをひとは瞬間移動(セコンドワープ)と呼ぶ。一流のトップアスリートだけがその領域に足を踏み入れることができる。オニゴッコ。世界共通語となったそれは、フランス本場のパルクールと融合し、チェイスタグと呼ばれる新しいスポーツとして昇華された。2020年現在、チェイスタグはXスポーツにて爆発的な人気を博している。2015年から世界大会が開催され、五年連続で1ON1にて王者に君臨しつづけているランナーがいる。国籍、年齢、性別不肖の、名をニージャ。瞬間移動(セコンドワープ)の魔術師として不敗記録を更新しつづける生粋の魔物である。これは、そんな魔物に引導を渡すこととなるスラム出身の万引き少女と、期せずして彼女の才能を開花させることになる元軍人(義足の女)の青春愛憎英雄譚である。(つづかない)


1223:【マネー・ド・ローン】
世界中のマフィアを一晩で敵に回した男がいることをあなたは知っているだろうか。2025年日本時間の10月6日にそれは起こった。マフィアたちの資金洗浄前の裏金がごっそり、たった一人の男の手によって奪われたのである。のちに男には三名の協力者がいたと判明するが、実行犯はその男ただ一人だった。男の名はソージュ・カーン。アフリカ系アメリカ人で、技術者である。結婚三年目にして妻と幼い娘を誘拐された。要求された身代金はとうてい払える額ではなかった。勤めていた企業へ相談したが、前向きに検討するとの回答があるばかりで、時間だけが無駄に過ぎた。警察、企業、犯人たちとの交渉と、あくせく動きまわった挙句に期日は迫り、けっきょく妻と娘は帰ってこなかった。遺体は見つかっていない。カーンは企業を辞めた。彼は退職金を費やし、独自に犯人を追った。職場ではAI開発部門の専属チーフを任されていた。世界で指折りのテクノロジィ企業である。主として彼は、次世代型自律式小型ドローンの開発を指揮していた。カーンは自ら開発した虫型ドローンを駆使し、世界中の諜報機関へのクラッキングを仕掛けた。マフィアとCAIが密接に繋がっていたことを知り、妻と娘の誘拐事件も軍事作戦の一環だと見抜いた。政府は企業へ、軍事利用を目的とした技術提供を求めていた。しかし企業はそれを拒んだ。のみならず、本籍を租税回避地へと移し、経済面でも非協力的な態度を保った。CAIを通じて政府はマフィアを活用し、テクノロジィ企業主要社員への強請りや身内の誘拐を実行する。法外な身代金である。社員は企業を頼るよりない。警察はそもそも当てにならない。企業がマフィアの要求を呑んでも呑まなくともどちらでもよい。呑めば資本を失い、拒めば社員からの信頼を失う。情報の流出をおそれる企業は、部署ごとの機密性をより高めるように働きかける。機密情報を扱う職員の辞職はそれだけですくなくない打撃となる。世界中で行われている裏工作だった。テクノロジィ管理委員会なる組織の推進する軍事作戦だ。調査のさなか、カーンは妻と娘が生きていることを知る。辞職した職員に声をかけ、人質を救ったと話を持ちかければ、十中八九、政府側の言い分を職員は信じるだろう。あとは子飼いの企業や研究所に、戸籍を変えて働かせれば、政府に忠実なテクノロジィ部門ができあがる。誘拐事件は報道管制が敷かれる。職員同士のあいだで情報が共有されることもない。人質は無事保護しておくのが定石だ。しかし、ならばなぜ。カーンは頭を抱える。なぜじぶんには声がかからない。なぜ妻と娘を返してくれないのか。もしふたたび家族で過ごせる日々が訪れるのならば、この身に蓄えた技術などいくらでも擲てる。こちらからCAIの門を叩いてもよかった。信頼できないという一点で踏みとどまる。まず叩くべきは、実行犯ではないか。頭脳を破壊したくば、手足をもぎとれ。手足をもぎとりたくば、備蓄(食料)を狙え。その時間を稼ぐために、まずはなにより目を奪え。カーンは戦術として基本的な行動に打ってでる。CAIへのクラッキングから得た情報をもとに、世界中のマフィアの中枢を把握した。ボスを中心とした主要人物の行動様式から、交友関係、仕事の内容から取引先まで、得られる情報を洗いざらい掻き集める。並行して、世界中の技術者のネットワークに入りこみ、じぶんと同じような境遇に遭っている者がいないかを探った。CAIのデータベースをハッキングしようにも、さすがに現在進行中の作戦に関するデータにはアクセスできなかった。マフィアが仮想通貨の取引所そのものを運用することで裏稼業で得た資金を洗浄していることを突き止めたのと同時期、じぶんと同じ境遇に陥っている者を幾人か見つけた。直接会う約束を取りつけたのは三名だった。ほかの面々は政府と繋がっている可能性が高く、そうでない者たちは、みな廃人然としていた。三人はいずれも各界のはみ出し者だった。DNAを模した記録媒体を研究していた生物学者、超個体のアルゴリズムを人工知能の階層構造に応用した量子物理学者、そして元諜報員の女だ。女は、テクノロジィ管理委員会の立ち上げメンバーの一人だった。女は自身の家族まで人質にされ、反発したのを期に、FBIへと情報をリークし、処分された。テクノロジィ管理委員の持ちうるAIの演算能力は、世界中のどの機関をも凌駕する性能を誇っていた。たとえネットに繋がっていなくとも、デジタルでさえあれば、改ざんできないデータはなかった。ただし、その形式がゼロとイチでできていれば。カーンの用いるドローンの制御ソフトは、独自の進法を採用していた。図らずもそれは、DNAを模した記録媒体への情報形態を応用したものだった。「テクノロジィの進歩は管理されて然るべきものかもしれない。しかし、何人たりとも他人の人生をデータ化して扱っていいわけがない。ましてやそれを利用して、操ろうだなんて」元諜報員の女を含め、生物学者、量子物理学者、三人の協力を得て、カーンは、ドローンを改良した。新型ドローンは超小型で、短時間の自立飛行を可能とした。巨大な群れとして機能し、高い演算能力を兼ね備え、世界中のマフィアの裏金を一夜にして奪うことも不可能ではなかった。間もなく、資金を断たれたマフィアは壊滅までの秒読みをはじめる。テクノロジィ管理委員会はそれを看過できない。手足を失っては、紙に線を引けないどころか、導線に火を点ける真似もできやしない。マフィアの裏金のゆくえを追うと共に、テクノロジィ管理委員会はマフィアへ援助を送る。カーンたちはそれを記録し、全世界へ同時中継する。よくできたフェイク映像として何事もなく日常が流れていくが、世界中のテクノロジィ企業は、CAIの裏工作を知り、各国へと働きかける。テクノロジィ管理委員会は解散し、カーンの元には妻と娘が戻ってくる。「手段なんか関係ない。情報だろうがなんだろうが、人を操ろうなんて間違っている」仲睦まじく三人で暮らす家の窓には一匹のコガネムシが止まっている。小型ドローンではないそれは、生身の虫でありながら、電波を発し、その受信先では、元諜報員の女が、真新しいラボにて白衣に身を包み立っている。そばには、生物学者と量子物理学者の姿もあり、三人は巨大な容器を眺めている。容器のなかには黒く渦を巻く細かな何かがあり、女が指を弾くと、巨大な画面を編成する。ひとつひとつの細かな点が発光し、無数の立体映像を展開する。気づくと画面は球形をとり、色彩豊かなモザイク柄を浮びあがらせる。まるでそれは地球のようで、変遷の軌跡を集めつづける。


1224:【コイン積み】
V型アームをご存じだろうか。ロボット工学の粋を集め、生み出されたヒト型自律式義手である。箸を用いて、米粒を縦に積みあげる。人間ならばできて二個が限界だが、V型アームは米粒を十個積むことができる。当初の計画では、遠隔で手術を行うための補助機構として開発されたが、人体を遥かに凌ぐ性能の高さから、2020年現在では外科手術の軒並みがV型アームを使用している。極小の世界では、V型アームに人技が適う余地はない。しかし、そのころ、ひそかにV型アームの性能に迫ろうとしていた人物がいた。名を、無風、という。インターネットの片隅にて、地味に知名度が高いその人物は、コイン積みという、いかにも地味な趣味でやはりひそかに風靡していた。接着剤を使わずに、ゆびのバランス感覚でのみコインを積みあげる。トランプタワーさながらに、不安定な置き方で、それはたとえば、グラスのふちにコインを立て、さらにそのうえにコインの山を積みあげる、といった塩梅だが、日に日にその絶技は、人体の限界に迫っていった。無風の仕上げるコインの組み合わせは、つぎつぎと芸術作品と言って遜色ない色合いを宿しはじめる。V型アームにそれをやらせればおそらく、総じての作品を再現せしめるだろう。しかし、無風の成長具合は目覚ましいものがあり、コイン積みの画像をネットに投稿しはじめてから二年後には、一万枚の一円玉を使った船の模型を、いっさいの「繋ぎ」を用いずに完成させた。無風の特異な点は、それらコインの山を崩す場面を動画におさめるまでを作品と見做している点にある。接着剤や釘など、イカサマをしていないことを、それ以上ない臨場感と共に、無風の動画は訴える。話題が話題を呼び、とあるマスメディアが食いついた。その時期、V型アームの一般家庭への流通がはじまっていた。料理を選択するだけで、V型アームが材料の裁断から炒め物、味付けまで、調理を代行する。その腕前たるや、一流シェフ顔負けだというのだから、三種の神器が数十年ぶりに塗り替わるのも時間の問題だった。だが、なかなか需要がつかない。値が張るだけでなく、場所もとり、調理場の3Dスキャンを業者を通して行わなければならず、なかなかに手続きが面倒な点が一因にあった。安全面の徹底がなされている裏返しでもあり、いちど流行れば自動食器洗浄機と同じく売れ筋になると業者は睨んでいたようだ。プロモーションを兼ねて、コイン積みの達人たる無風を出汁に、V型アームの性能をこれでもかと見せびらかせようと画策した。無風はそのころ、話題になりすぎた自身を省み、SNSを含め、マスメディアへの露出を控えようと考えていた。話題にはなっても彼は単なるしがない保育士だ。ただでさえいそがしい日々から捻出した余暇を、一人黙々とコインをつまみ、積みあげるだけの時間に費やしている。彼はほかにも、趣味でジャグリングをしていた。ハッキリ言って、コイン積みは割に合わない趣味である。もう止めよう、これで最後だ。大作に挑むたびに、自身にそう言い聞かせつづけてきた。V型アームとの競演を決めたのは、一円玉一万枚の船を完成させた矢先のことだった。最後くらい華を咲かせよう。思いきりのよさが講じて、キリのよさに変わることを求めた。無風はV型アームとの勝負に打ってでた。企画は、主催者側、視聴者側、双方の予想をおおきく裏切り、無風の圧勝で終わった。無風が底力をみせた、それもある。どちらかと言えば勝敗を分けたのは、V型アームの繊細さ、なにより無風の並々ならぬ慧眼にあった。V型アームは基本的に、手術室のような密閉状態の、極限まで管理された室内での作業を前提としている。一般家庭への市販品では性能がいくぶん劣るため、この日は米粒を十個縦に積みあげられるスペックを備えたV型アームが用意されていた。反して、収録現場は、スタジオであり、空調は止められていたとはいえ、四方八方からライトが投射され、その熱は無視できない空気のうねりを生みだしている。さらには、この日行われた競技の大部分は、五百円玉を基準とした大量のコインを使用する建設じみた作業であった。必要なのは繊細さよりもむしろ、コインを積みあげていくにつれて帯びていく、物質の重力変化への対応だ。空気のうねりをも考慮にいれ、コインに働く摩擦力から斥力、電磁気力(静電気)、位置エネルギィの変化と、単なる物質の積みあげで終わらない、目に見えないチカラの均衡を見定める演算能力が欠かせなくなってくる。言い換えれば直感が物をいう領域に、その日、無風とV型アームは立たされていた。無風には、人工知能ですら感知できない空間認識能力があった。秀でていたのは指先の繊細さだけではない、並々ならぬ知覚の敏感さにこそあった。得られた外部情報から、微細なゆらぎを濾しとり、統合できる能力は、人知の域を超えている。この日の映像がネット上に投稿されてから三日後、無風の元に一通のDMが届く。SNSの通知が煩わしく、ネットから距離を置いていた彼がそのDMに気づくことはなく、業を煮やした送り主が、いかにもカタギではない面々を無風のもとに遣わせたのは、無風がコイン積みを趣味ではじめてからちょうど四年目に差しかかる節目の時期のことだった。その後、彼はとある組織の命運を握る重要な役割を熟すことになるのだが、その前に彼が組織に入るまでには紆余曲折、さらなる面倒な言葉の数々を重ねなければならない。無風ではない語り部たる私にはあいにくと、彼のような並々ならぬ能力は備わっていない。言葉が雪崩を起こしてしまわないうちに、ここいらで打鍵のゆびを止めておこう。物体に流れるチカラの均衡を感知可能な無風のように、自身の力量を的確に測ること。できる語り部(オペレーター)の、それが一つの条件である。


1225:【だめな日】
短編つくろうと思ったけど、半端なところで詰まってしまった。チッ。またくだらんこと並べなあかんのか。めんどくさ! なんだろなー。あ、久々にマンガ七冊くらい買ってきたんですよ、でもまだ読んでないんですよ、感想書けないんですよ、じゃあなんで言ったし、っていうね。話題がないいくひしさんですから、ええ。眠いし、がんばりたくないし、でも書くことないし、どうしよってところが今ですけれども。どうしよ。そうそう、ブーストかけたいときに、いくひしよくやるのが、短編つくることなんですよ。長編とか中編って、つくるの時間かかるじゃないですか。すると、そのあいだって達成感がまったくないんですよね。いつ終わるのか、ほんとに終わるのか、いっそこのままじぶんの人生が終わるのかって、そういう不安ともつかない薄暗い感情がふつふつと湧いてきては目のまえをふさぐのですよ。そういうときにですね、こう、短編をつくると、つくったぞー、やれたぞーっていう気持ちになれて、よっしゃこっちもやったるでー、って行き詰まってる長編も調子づくはずなんですけど、短編からして詰まってしまった。よくある、よくあるー。捨て置いたままの短編でピラミッドつくれそう。というか、ここ三日くらいやっつけでつくってる短編あるじゃないですか、ここのうえのほうにあるやつ、これもあと二つくらいつくったら、キャラ総出の短編にしようと思ってたんだけど、なんかあれだな、思ったより長くなりそうで、やんだくなっちゃった。アベンジャーズごっこしようと思ったんですよ。なにかしらうみょうみょしたミッションあって、それぞれ地味な能力じゃないですか、それがこう、うまくミスをカバーしあって、やったぜー、みたいなのをつくろうと思ったんですよ。行き詰まってしまった。本命の中編のほうも行き詰まったままで、だめだめないくひしさんですが、あすもきっとだめだめなままでしょう。だっていくひしさんだし。だめだめでもね、生きてていいんだよって証明したいんですよ。安心してくれ。きみがいくらだめだめでも、いくひしさんには敵わんぞ。上には上がいるものだから諦めてほしい。きみなぞにね、だめだめを名乗る資格なぞはないのだよ。きみね、案外ね、しっかりしとるから。ぜんぜんすごいやつだから。並ぶといくひしさんが惨めになるタイプのあれですからね。おまえごときがだめだめを名乗るなんて万年はやいんだよっつって、いくひしさん不機嫌になっちゃいますから。だめだめ道をおなめじゃないよ。ほんと、いくひしの爪の垢でも煎じて、飲ましてあげたいきぶんだよ。効き目五秒でだめだめだい!って、え? ぎゃく? おまえが飲めって? 煎じてやるからって? やだよ、きたないじゃん。あ、そろそろ文字数たまったかな。だめだめ言ってるだけでけっこういくな。どっかの大王様みたいだな。ってそりゃカメハメハやろーって、ツッコんでくれよな! はい。きょうはここまで。わいはもう寝るんやー。オチなんか知るか―! ぐぅー!!!


1226:【失望はされないほうが好ましいが】
下品な立ち振る舞いや表現はどんな時代であれなくなることはなく(下品の指し示す事象は変容するにせよ)、それらは一律に発信者の評価を下げる方向に働く。異論はない。しかし、一つの属性や、表現、または親や祖先の失言や失態を引き合いにだして任意の人物を不当に低く評価する。そうした判断もまた上品とは言えないだろう(そうした差別的な性質はネットワークの発達によって減少していくだろうと期待したい)。


1227:【差別的教育観】
知能が低い者ほど、合理性の報酬を社会の豊かさと規定しなければならない。反して知能が高くなるほど、合理性は自身の至福の探究として扱って差し障りなくなっていく。より遠い未来を見通し、そこから逆算して個人の至福を求めようとする行動原理が、合理性へと結びつく。前者をA,後者をBとすると、問題なのは、いちどBに転換した者の知能が低下し、本来ならばAに移行し直さなければならないのに、是正されることなくBでいつづけることにある。


1228:【揚げ足とり】
主語が大きいことを気にする人はぜひとも、「私」と「おまえ」だけ構文で物を語ればよろしいのではないか。そこに社会はなく、私とあなたしかいないマッチョな世界ができあがる。


1229:【だいじなこと】
なんども言っているけれど、バカにされているときこそチャンスだ。反論するよりも、まずはさきを進もう。


1230:【かくれんぼ】
じつはこれ、せいだいなかくれんぼやねん。見つかったらいくひしの負け。見つかる前に目標に届いたらいくひしの勝ち。どうしてそんな勝負をしているのかというと、そうすることで、埋もれた大量のガラクタのなかにも、有用なガラクタだってあるんだよって証明できるからだし、そうなったら、埋もれたものにももっと目を向けてもらえるようになるんじゃないか、水の底の泥を掬いあげようとする勢力がつよまるのではないか、と期待するからだ。勝負をする意図は判ったけど、じゃあどんな目標に届いたら勝ちになるのか、そこんところはどうなってるの、ってなると思う。それはね。多くの人からの評価がなくとも、権威からの後押しがなくとも、ただそこにあるというだけで、人類の能力の底上げに貢献する。時代の変遷に影響する。物語という網の目のつむぐ概念の繰り込みを促す。構造を刷新する。そういった媒体の一つに、ただそこにあるだけでしぜんと昇華されること、それがいくひしのいまのところの目標である。もうすこし具体的には、あなたが何かを決意するきっかけになれればいいなぁ、ってことであるし、そうでなくとも、あなたが挫けそうなとき、或いは打ちのめされてしまったときにそれでももういちど道を進み、道を選び直すための、うんとこしょ、の掛け声みたいなものになれたらなって、あなたの背に吹くちょっとした風みたいなものになれたらなぁって、そう思いながら、きょうもいくひしは人類のお荷物である自身から目を背け、都合のよい夢をみるべく惰眠をむさぼりつづけていくのである。


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参照:いくひ誌。【421~430】https://kakuyomu.jp/users/stand_ant_complex/news/1177354054882920665

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