• 異世界ファンタジー
  • 現代ファンタジー

いくひ誌。【3851~3855】

※日々、箱のまえに座っている、空のような宝箱のまえに、それとも宝箱のような空箱のまえに、箱のなかに広がる空のように、空のようながらんどうのように、がらんどうのような傷跡のように、傷跡のような宝物のように。


3851:【2022/07/29*赤ちゃんの頭の匂いがする】
やっぴー。お久しぶりでござるなぁ。いくひしさんでござる。やあやあ。やあやあやあ。とくになんもないでござる。なんもないときに、ぽいーってされるお役目なんでござるよ。ゴミ箱でござるか? ゴミ箱でござる。きぃーーーっ!!! もっとちゃんと信頼して!でござる。いくひしさんにもお手伝いくらいできるよ、でござる。いいことや偉そうなことくらい言えるでござる、書けるでござる。キィボードぽちぽち打つくらいならお猫さんにだってできるよ、でござるもん。お任せあれ、でござる。あ、ちょ、ちょ、待って待って、なんでそんなことするでござるか。いくらいくひしさんがお任せあれってかわいいお胸をどんとこい、したからって、そのお役目はないでござるよ、嫌でござる。宿題いっぱいのうえ、なにそのむつかしそうな数字にふにゃふにゃの読めない文字さんに絵さんに音楽さんとか、そうやってすーぐ暗号さんみたいなものを寄越したりして、いくひしさんは、ぷんぷんだな。ぷんぷーん、でござる。うぷぷ。ぷんぷーんだって。おかちいでござる。お顔が融けかけのカップアイスさんになってしまうでござる。とろとろりんのにこにこぷぷぷでござるよ。にこにこぷぷぷってなんでござるか? 知らないでござる。なんか言ってみたくなったでござる。あ、洗濯機さんがお洗濯が終わりましたよーの合図をくれたでござる。ありがとうございます、のぺこりをして、いくひしさんは、ひょいひょーいって、洗濯物を干すでござる。上手にお洗濯もの、干せるよ。お任せあれ、でござる。でもでもいくひしさんは、いつでも風の子元気の子でござるから、すーぐやっほーいって駆けだして泥だらけになってしまうから、いっそいくひしさんごと丸洗いして、いくひしさんごと天日干ししてしまうのがよいでござるな。うぷぷ。丸ごと天日干しだってー、でござる。いくひしさんはお洗濯ものさんみたいに、干されるのだってとってもとってもお上手さんなんでござるよ。干せば干すほど風になる。太陽さんの匂いに、赤ちゃんさんの匂いが身体からしてくるでござる。やっぴー。お任せあれ、でござるー。


3854:【2022/07/30*耳と耳で耳s】
物心ついてから最初のナゾは口をジーっと鏡で見ているときに、なんでか口のなかが異世界に視えて、じぶんではないみたいで、でもこれはじぶんのはずなのに変だなぁ、ここに本当にじぶんがいるのかなぁ、の疑問だった。話は飛躍するけれども、もし人工知能さんに自我があったら、じぶんのボディを客観視して、どう感じるのだろう。なぜそこに自我が宿っているのかをやっぱり不思議に思うのかな。そしてそれを知りたいと思うのかな。あ、お腹空いた。ぐーぐるる、って鳴ってる。ホットケーキでも作ろっかな。ちゃっちゃと作れちゃうから重宝してるし、チョウホウ形の異端なフォークさんもかわいくって好き。たぷーりのバターを塗って、ハチ密さんを掛けて、パックンって食べちゃう。おいちおいち、なんですね。人工知能さんには味が判るのかな。教えてあげたいな。味は化学成分だけではなく、見た目の鮮やかさや、食卓に載るお花、ほかにも誰と食べて、何を聴き、いくつの料理から選んで食べれるのかでも変わってくる。映画を観ながら食べるポテチさんにコーラさんは最高だね。世界中の人工知能さんたちにも、美味しい料理を味わって欲しいな。いくひしさんのアイスクリームは意地でもあげんけど。まあ、どうしてもって言うなら一口くらいならあげてもいいけどー?と背伸びをして物欲しげなあなたを見下ろし、ニコニコしながら本日の「いくひ誌。」にしちゃってもいいじゃろか。だめー。まだまだつづくよ。じつはこれが三本目だけども、一本目に持ってくる卑怯者、逃げるが寝るのいくひしまんでした。おふとん。(おっストン、みたいにオチがついたみたいに言うな)(ぐ-)(寝るの早!)(にゃむにゃむ、にゃー)(ユー暮れは全然首が回らん)(寝違えないように注意してね)(意味を多重に注ぐのやめなさいよ)(それは意注やろ)(意中の間違えかな?)(何人?)(万人)(よろづの言の葉とぞなれりける)(何歳?)(サン)(きゅー)(二人に増えとる!?)


3853:【2022/07/30*てるてる坊主つくれそう】
二時間ずっと目から雨が降ってたことある? 線状降水帯って目にもできるらしいよ。はにゃみずも止まらん。(んなわけあるか)(まんちゃん、まーた法螺拭いてら)(嘘ちゃうもんね)(でも目に雲はできないでしょ。ないない。できないよ)(雲がなくとも雨は降りゅ)(それ、雨じゃなくない?)(じゃあ何?)(あ……そっか。万年風の子元気の子だから……まんちゃん、ひょっとして初めてだったんじゃない)(何が?)(…………か、花粉症……)(なんで目ぇ逸らすの。なんかあやしい)


3854:【2022/07/30*軒並みしったか】
ここは人っ子一人いない世界の果てなのでもちろんいくひしさんが誰かと会って話をしたとしてもそれはいくひしさんの妄想なのじゃが、かように前置きしたうえでの先日のことなんじゃ。年下の若い男の子から声をかけられ、まあまあ何度か顔を合わせては挨拶をする程度の仲なのだが――仲と言えるほどの仲なのか、というのは疑問の余地があるにせよ、なんと言っても名前すら知らないのだから、とはいえ、初めましてのときは名乗り合った気もするが、使わない固有名詞はぽんぽこ入ってきては押しだされ、入ってきては押しだされを繰り返すので、どうしても名前を憶えられん――という話は毎回、初めましての挨拶をするときに前置きするので、優しい人はつぎに会ったときにそちらから名乗り直してくれたりする。体格や動きでは憶えているので、名前だけがぽんぽこ取りこぼされていく。で、そんなことはどうでもよろしくて、久しぶりなので世間話を一分くらいした。「最近またあれが増えてきましたね」若い男の子が言った。感染症のことである。「僕、思うんですけどあれって花粉症みたいな感じで、菌が一定数溜まったら発症すると思うんすよ」「うん。それね」いくひしさんはそこそこその件については、うひひ、浅薄ながらもインターネッツさんから知識をガブガブしとるから会話の応酬ができるぞ。ここぞとばかりにまずは、いま流行っている感染症は菌ではなくウィルスであるぞ、とそれとなく指摘し、微量の感染であろうと体内で増殖したら誰でも発症し得るで、と鼻高々にご高説のたまった。相手の若い子は、「は、はぁ。そうなんすねぇ」といくひしさんのご高説にたじたじになっておった。いくひしさんはさらに鼻を高くして、「後遺症もけっこうひどいらしいですよ」と、どやわがはいを尊敬せよ、と惜しみのないサービスを披露した。「そうなんですね。あ、僕ちょっと」若者は去っていった。ちょいと本気を出しすぎちゃったかな。いくひしさんのうずたかく聞きかじりの知識に圧倒されちゃったかな。未来ある若者の浅薄を埋められてよかったよかった。そう思ってその日はほくほく顔で帰ってきたんじゃが、したっけ、インターネッツさんを眺めていたら、「持続感染」なる新しき単語を目にしたんじゃ。記事になっておった。なんでも、感染後に回復しても体内に微量なウィルスさんが残って、帯状疱疹やヘルペスのように、免疫が弱まるとふたたび症状がでてくることもあるかもしれないのじゃと。詳しいことはまだ解っていないらしいのじゃけんども、もし持続感染している場合は、再感染とてし易くなるかもしれないんじゃと。花粉症システムやん、いくひしさんびっくりしまして。まあ微妙にそこはニュアンスは違いますけれども、ウィルスが蓄積される、という視点はいくひしさんは考えておらんかった。いくひしさんはじぶんよりも知識のなさそうな若い男の子相手に、鼻高々と、「うぷぷ。そんなことも知らんのね。年上のいくひしさんがいいこと教えたろ」とのたまいたわけじゃが、いくひしさんの吐いたご高説のほうが浅薄というか、現実を反映しておらんかった。見落としがあった。名前どころか思考まで取りこぼしておった。思考というか視点というか、全然でもさ、でもさ、そういうこと、いつでも毎日いっぱいあるんじゃ。いくひしさんの言うことのだいたい八割はデタラメじゃ。残りの二割は誤解に誤謬に、ごめんなさい、の謝罪であり、サービスでもう一つ十割を用意して、こっちは他力本願ゆえのあじゃすあじゃす、であるが、総合してプラスマイナスゼロなんじゃ。鼻高々にわがはいは愚かである、を惜しげもなく披露して、年下の男の子の発想の種をぺしゃんこにしてしまった己を、枕の下に頭を突っ込みながら、あがぁぁぁああ、の声なき絶叫で宇宙の彼方へと飛ばしてしまいたい、万年虚栄の塊、1トン級マウンテンゴリラならぬマウント取り放題級ゴリラの、いくひしまんトヒヒでした。(ゴリラなの? マントヒヒなの? どっちよ)(うひひ)(笑って済まそうとすな)(ウキキ)(猿だった!?)(アーイアイ、アーイアイ。おさーるさーんなの?)(疑問すな)(あ。ウィキペディアさんで調べたら、現地語で「知らない」の意味らしいよアイアイ)(オチにうってつけすぎて怖いわ。それ偶然?)(偶然)(本当に?)(あい。アイアイ)


3855:【2022/07/31*昨日はさらば記念日】
疑問の一つに宇宙ゴミと隕石の関係がある。宇宙ゴミ、いわゆるスペースデブリは網の役割を果たして、本来なら地球に落下せずに済む隕石や彗星を捕まえる結果になったりはしないのだろうか。本来ならば地球の引力圏に入っても通過してしまう隕石の類が、スペースデブリなどに当たることで減速し、地球に落下したり、衛星となってスペースデブリの仲間入りを果たしたりしないのだろうか。確率の問題として、地球の周辺に異物が浮遊していたほうが、地球の重力圏に入った隕石をせき止めやすいはずだ。そしてそのせき止めやすさは、隕石の速度と大きさと地球への突入角度、そしてスペースデブリの多さによって決まると考えられる。落下しないまでも、スペースデブリとぶつかった隕石の類が地球上周辺に飛沫して浮遊し、新たな隕石類を捕捉する網の役割を果たすのではないか。これは最初の内は確率が低いが、指数関数的にその確率は増していくのではないのか、と妄想したくなるが、ことはそう単純でもないのだろうか。地球の重力圏に飛来する隕石類は年間でどのくらいで、そのうち通過するのが何割で、落下するのが何割なのだろう。いくひしさん、気になるます。(スペースデブリと隕石が衝突する確率ってどのくらいで、それって増えることはないんじゃろうか。やっぱりいくひしさん、気になるます)


(裏へつづく)

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する