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いくひ誌。【981~990】

※日々麻痺するためにつづけていく。


981:【そう見えるだけ】
現状、世に溢れている多くの因果関係とは、精度の高い相関関係でしかないのでは、とつよく感じるしだいでございます。


982:【ブラック違国少年】
ソイジョイのバナナ味がうまい。こんばんは、いくひしです。きょうはネタを仕込まずサクサクいこうと思います。まずは「ブラック・クローバー14巻」ですね。田畠祐基さん著の、少年ジャンプに連載中のマンガです。持てる者の驕りと、持たざる者の誇りがぶつかりあう寓話じみた展開が多いかな、と思います。スカっとする反面、いささかステレオタイプの嫌な貴族なんかがでてきまして、じっさい現実を見回してみれば似たような人間がいるところにはいるもので、やはりスカっとはするのですが、んー、できれば叩き潰すだけでなく、性根を直すところまで描いてくれると、心からスカッとできるのではないかな、と思いました。むつかしいですよね。勝負に勝って、叩き潰すだけで何かを劇的に変えられるのならそんなに簡単なことはなく、でもそれってお金を持っているだとか身分が高いだとか、そういうことで他人を思いどおりにできると思いあがっている人間とどこが違うのかと問われると、素直にそこは困ってしまう。少年漫画にそこまでねじくれた現実問題の解決策を期待するなと言われてしまえばそうなのですけど、やはり次世代の少年少女たちが物語を通して何かしらの基準を学んでいくことってすくなくないと思うんですよ。物語もまた時代の変化に応じて、ある程度は変質していってくれたほうが、読んでいるほうからしても抵抗なく楽しめるのかな、と王道の王とは何たるかを教えてほしい身としては思うところでありますよ。ブラック・クローバー、共感しやすいからこそ、高望みをしてしまうわるい読者こといくひしをどうかお許しください。おまえらなんか魔法騎士じゃねぇ。いちどは言ってみたいセリフです。はい。サクサクまいりましょう。つぎはですね、ヤマシタトモコさん著の「違国日記1巻」です。某いくひしの好きなライターアオヤギさんがツイッターで「めっちゃよ〜〜い」言うてたので買ってみました。おもしろーい。いいですね、いいですね、こういうの大好物です。たぶん百合って言ったら怒られる気がするんですけど、百合ですよね。いくひしのだいすきな、見知らぬ子どもを預かっちゃう系の物語でもありーの、男前な姐御肌のじつは繊細なお姉さまのお話でもありーの、もうね、大好物です。性別逆にしてもぜんぜんいけますね、たぶん最初はこれ、ネームの段階では性別男だったんじゃないのかな、と思うくらいに男前きゅんきゅんしちゃいます、たまに見せる人見知り仕草とか、横着な性格とか、もうね、かわいい。かっこいいなかに見え隠れする至らなさ。いいですね。十巻くらいまとめて食べちゃいたい。あーい。つぎはですね、高野ひと深さんのマンガ「私の少年4巻」です。第一部が完了して、第二部始動って感じで、いままでになかった少年側の視点、真修から見た世界がようやく描かれはじめました。聡子さんへの想いが、単なる恩人へのそれではないことが如実に示され、やっぱりなー、と微笑ましい反面、我々はほら、聡子さんの気持ちというか境遇を知っているじゃないですか、イタ気持ちくて仕方がないですよね。もうね、うまくいく未来が見えてこない。どう転んでも、何かをだって失うじゃないですか。すでに失っているのに、これ以上何を失うってんだい。こわいよね。開き直られてもこわいし、割り切られてもこわい。かといって常識的な判断で心を圧し殺されるのだって、嫌ですよ。なんとかうまくいってほしい。もどかしきゅんきゅんしてしまう。真修、もう男なんですよ。私の少年とか題打ってますけど、もはや私の男になる寸前ですよ。桜庭一樹さんの直木賞受賞作の「私の男」みたいになりそうですよ。ならないでほしいぞ。大団円を期待しながら、でもどうやって? いくひしにはつむげない物語の着地点をぜひ見届けたいな、と正座して待ってます。なんかきょうテンション低めな気がしない? そんなことない。そんなことないよ。ちょーげんき。まいにちたのしくてはっぴーです。そっちはどう? げんきしてる? 世のなかいろいろあるけどさ、おいしい物語を摂取して、人生飽きずにたのしもうぜ。もちろんあなたの人生がおいしくなるのがいちばんよ。そりゃもうぜったい。すでにおいしくなってるの? そりゃいいことだ。ぜひぜひ、いつか一口齧らせて。ソイジョイのバナナ味には負けるなよ。なかなかの強敵だけど、きみならいける。たぶん、きっと、なんとなく。都合のいいことばっか言ってるって? いいじゃんいいじゃん。無謀なことじゃないんだから。できるよきみの人生だもの。つづけりゃいいだけ、かんたんだもの。休み休み、がんばんな。じゃーな。おやすみ。いい夢見ろよ。悪夢だっておいしくなるぞ、起きてからも夢見ろよ。


983:【男前】
女らしさや男らしさなど、いわゆる文化的に形成された偏見を差別用語として指摘する声がある。解らないでもないが、もうそういう時代は終わって、つぎの段階に移行してもいいのではないか、という気がしている。というのも、「男とは」や「女とはこうあるべし」といった偏見はなくなってはいないが、だいぶん薄れてきたように感じるからだ。むろん、そういった偏見が一般的な常識として扱われた社会で育ってきた世代にとっては、未だに偏見だという認識は浸透していないように見受けられる。ただし、その下の世代、いまの二十代前半くらいからはだいぶん薄れたのではないかな、と感じる。そうしたなかで、「女らしさ」や「男らしさ」といった文化的に形成されるミームは、禁止するようなものではないように思うのである。女らしさや、男らしさを、どのような人間が備えてもまったく問題ない。また、女らしさや男らしさといったものは、基本的に、美化する装飾の意味で使われるように思う。他人に押しつけていいものではないが、性差につきまとうある種の幻想は、それを性別に関連付けて言語化しても問題ないのではないか。人間のある一面を褒めるときに「男前」と言うとき、なら女性的だとダメなのか、と顔をしかめる人もいるかもしれない。しかし、ペンギンを示して魚みたいだと称揚したとき、鳥みたいだとダメなのか、と声を荒らげるのは、どこかおかしい。逆説が成立する場合としない場合を見極めることが重要だ。また、誰より性差の違いに敏感に反応し、差別ではないか、と不当を訴える声は、差別の薄れてきた現代社会のなかで、あべこべに差別を根強く残すのではないかと危惧するものである。性差による差別を失くしたところで、性差を失くすことはできない。差異を認め、そこにある良さや難点を認め合うことが必要になってきているのではないかと思うしだいである。むろんいずれは、男らしさ、女らしさ、といった概念自体が時代の変化に伴い、薄れていくと予想するものである。つまり、性差による違いよりも、個性による違いのほうが大きくなってくる。いまはそういう時代への過渡期なのであろう。


984:【よくある話】
インターホンが鳴ったので出た。女が立っていた。何か用ですか、と訊ねると、昔ここで人が死んだ、たくさん死んだ、殺されたのだ、とうるさいので、ひとまず部屋に招き入れた。霊がたくさんいるらしい。平気でいられるのが信じられない、とやはりうるさい。ここは新築だし、部屋じゃまだ殺してない。


985:【よくある話2】
バーバー。この道にでる幽霊の名らしい。なんでも理髪店じみた霊なのだそうだ。愉快ではないか。出るなら出てみろ。鼻歌交じりに歩いていると、街灯の下でぐるぐる回っているおばぁさんを見かけた。何をしているのかと気になったが、目が合う直前で顔を逸らす。首だけがぐるぐる回っている。


986:【よくある話3】
あなたはよく私の爪がきれいだと褒めてくれた。髪の毛がすてき、肌がつやつや。うらやましいとあなたが言うたびに、私の爪は剥がれ、髪は抜け、肌は爛れた。あなたは最期まで私の目をうらやむことはなかった。指が、鼻が、耳が、腸が。あなたの声に削られていくたびに、私の目には満面の笑みが――。


987:【よくある話4】
そらを見上げる。高いビルがある。あそこから落ちたのか。視線を下ろし、地面に拡がるヒトガタを眺める。腸がはみ出ている。脳みそは白い。周囲に人影はない。着けている装飾品からいって裕福層の人間だ。盗るならばイマだ。内なる声に従い、死体から爪の垢をこそげとる。炬燵でくつろぎ、煎じて呑む。


988:【よくある話5】
電信柱のところに人影がある。暗くなると見えるようになる。アパートの窓から覗くと大抵そこにいる。ストーカーだろうか。恋人に隠しておくのも危険な気がし、あるとき打ち明けた。「で、とにかく夜はこないほうがいい」「なんで?」「危ないだろ」「大丈夫だよ」彼女は言った。「ずっと見てるから」


989:【よくある話6】
肝試しをすることになった。処刑場跡地がある。民家に挟まれ、ひっそりと祀られている。行ってみると、大きな樹の裏にたくさんの地蔵がびっしりと並んでいた。こわかったが思ったほどではない。後日、明るいうちに行ってみると、あったのは地蔵ではなく大小様々なお墓で、陽射しを遮るものはない。


990:【よくある話7】
ラーメンに髪の毛が入っていた。一本だけでなく、十本くらい束で沈んでいる。黒い麺かと思ったほどだ。クレームを入れるとすぐに換えてくれた。「すみませんね、さいきん多くて」「多いんですか」「このあいだは爪で、その前は指でしたわ」絶句した。「いえね」店主はほころびる。「可愛いコですから」


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参照:いくひ誌。【901~910】https://kakuyomu.jp/users/stand_ant_complex/news/1177354054884457582

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