※日々変化しつづけるのならば、日々なにも蓄積されない無常さを覚悟せねばならない。
671:【低評価が心地いい】
その道に詳しい人から、「おまえのそれは~~ではない」という評価を受けることがちいさいころから多かった。褒め言葉だと思っていたけれど、どうやらそうではないと捉える人がすくなくないようだ。いくひしは、「よかったよ」の一言よりも、「規格外」の評価を受けるほうがずっとうれしい。なにより、なんだこんなもの、という視点を持ちながらも、目を逸らさずに、そそいでくれることがうれしい。ありがたい。
672:【ぎんこう】
いまの世の中、安定した大きな組織ほど時代にワンテンポ遅れている。あべこべにちいさな組織のほうがサービスが充実していたりする。銀行はその典型だ。都市銀は言うに及ばず、地方銀行のなかでも企業ではなく個人相手に融資をするちいさな銀行(店格のひくい銀行)は、ゆうちょ銀行並みにサービスが豊富だ。また、新しいサービスをはじめるのも基本的にはちいさな銀行だ。たとえばいまはどの銀行もビットコインは扱っていない(独自の仮想通貨の扱いをはじめている銀行はあるが、ビットコインを扱っている店舗はまだない。もっともビットコインは銀行などの関所を設けないで機能する通貨である点が利点の一つでもあるので、これはしぜんな流れともとれる。しかしこのままビットコインが経済の円滑剤として主流になっていくと銀行の存在意義が大きく揺らぐ懸念は押さえておく必要がある)。なぜかというと、ビットコインはデジタルという世界をひとつの国と見做した新しい貨幣であるにも拘わらず、今回分裂したように、極めて不安定な状態でその価値を右往左往させていることに一つの因子を見てとれる。国と国が分裂すれば、その国内で流通していた貨幣も(たとえ同一の貨幣を使用していたとしても)価値が二分する。まったく同じ価値にはならない。いずれかが高く、いずれかが低くなる。そして重要なのは、ビットコインなどのデジタル貨幣は、物理世界にとってデジタル世界の単一貨幣として扱われている点にある。デジタル世界はそれで一つの国なのである。現金をデジタル化したいときにビットコインにするわけだが、それはビットコインだからそうしたいのではなく、飽くまでデジタル化したいときのための手段の一つにすぎない。したがって、ほかにデジタル貨幣がある状態は、一つの国にいくつもの価値の異なる貨幣が混在している状態であり、極めて不安定だと評価せざるを得ない。なぜ不安定かというと、一つの貨幣が価値を高めれば、必然的に、その貨幣の使用率があがり、さらにその貨幣の価値が高まる。反面、そのほかの貨幣の価値が相対的に落ち込んでいく。すると、あるときを境に、価値の下落したほうの貨幣が消滅する。たとえば一万円札と百円玉が、別個の貨幣としてこの国で扱われたとする。一万円のおつりに、黒円玉というこれまでの百円玉に代わる新しい貨幣が使われるようになれば、百円玉を使用する者はいなくなっていく。なぜなら百円玉を百枚集めても一万円にはならないからだ。黒円玉と百円玉は、当初こそ同等の価値であったにもかかわらず、その貨幣価値、すなわち流通する過程での価値が異なるため、徐々にその価値の差がひらいていく。デジタル貨幣にも同様のことがいえる。今回、ビットコインは分裂した。これを物理世界での貨幣の問題で捉えるならばそう深刻になる必要はない。国が分裂したとしても貨幣はその国のなかで残るからだ。しかし、一つの国のなかで貨幣の価値が分裂すると、価値の低いほうの貨幣が消滅する。これのなにが問題かと言えば、デジタル貨幣は物理世界の貨幣と密接に繋がっており、ひとつの貨幣が消滅するというのは、物理世界の貨幣が突然いずこへと消え去るのに似た混乱を世界経済に引き起こす。言い換えれば、ビットコインの分裂を含めた、デジタル貨幣の乱立は、巨大なバブルそのものだと呼べる。デジタル貨幣は一つに統一されるべきである。そうでなければ、バブルは急激に膨張し、あるとき勃然と物理世界へ津波と化して襲いくるだろう。銀行がビットコインに及び腰なのはこうした懸念があるからであるが、しかし世界経済の流れはビットコイン迎合の方向へつよく傾いている。新しいサービスが失敗しないと判ってから、おいしいところだけを吸うような大きな組織のやり方は賢くはあるが、そのワンテンポの遅さはいまの時代、確実に死活問題となることは、世に廃れた大企業の歴史を鑑みることなく観測できる事項であろう。不安があるから手を出さない、ではなく、そのシステムを取りいれるために不安を払しょくする方向へみながいっせいに同一の舵を切ることが必要だ。
673:【いくひし、天才になる】
「なぁ知ってたか」「なにさ」「天才は自分のことを天才だとは言わないらしいぞ」「へぇそうなんだー」「で、いくひし、おまえは自分のことどう思ってんだっけ?」「え? ヘルメットみたいだなーって」「髪型のことじゃねぇよ」「じゃあなにさ」「天才か天才じゃないかで言えば?」「いくひしが? そりゃ天才ですが」「うん、でも本当の天才は?」「ん?」「ひとの話は聞きましょう天才は自分のことを天才だとは言わないんだって」「ふうん」「言い換えるとだな」「うん」「自分のことを天才って言うやつはバカだ」「そうなの!?」「すくなくとも天才ではない」「うっそでー」「もっかいだけ訊くな?」「うん」「いくひし、おまえは自分のことを」「天才だと思ってるよ」「おい」「だって天才だもん」「おいおい」「英語で言うとね、ギフテッド」「クマのぬいぐるみの映画だな」「それはテッドでしょテッド」「岐阜県で上映したら?」「あは、岐阜テッドだぁ、あはは、あははー」「言わせといてごめんだけど、つまらんわ」「うー。テッドみたいな顔してるくせに」「ウソを言うなウソを」「かわいいってことだよ?」「あの映画観たことねぇだろ」「あるよ?」「ホントかよ」「下品の代名詞だよね」「……」「なに、なんでじとってした目でみるの」「……まあたしかにな、ギフテッドって言い方はあるよな」「あ、話ずらした」「でもあれって天才ってか、先天的に才能が突出してるやつのことだろ」「そうなの?」「ちなみに先天的バカはただのバカだからな」「ふうん」「で、いくひし、おまえは?」「天才だよ?」「バカと天才は紙一重って言葉知ってっか」「知ってるよ。でもそれの意味もよく分かんないんだよね」「と言いますと」「だってけっきょくどっちなの? バカと天才は同じだって言いたいの? 紙一枚分のちがいが天国と地獄の分かれ道みたいな感じなの? それとも天才とは九十九パーセントの努力と一パーセントのひらめき、みたいなことが言いたいの?」「つっこもうと思ったら案外にまじめなこと言いやがった」「ねぇどれなの、正解は? おしぇーて」「たぶんだけどな」「うん」「そういうことに拘る時点でそいつは天才ではないってことが言いたいんだと思うな」「うん」「で、いくひし、おまえはどっちだ?」「どっち?」「天才に拘っているようにあたしには見えるわけだが」「うん?」「いくひし、おまえは天才か? それともバカか?」「天才だよ」「バカは?」「イヤ」「それってつまり天才に拘ってるってことだよな?」「なんで?」「おーい、話が通じん」「バカをまえにしたテッドみたいな顔しないで。だってイルカにきみはイルカかイカかって聞いたら、わたしはイルカですって答えるでしょ」「イルカはしゃべらん」「しゃべるとして!」「それでもイルカをイルカと名付けてんのは人間の都合であって、イルカ自身は自分をイルカだなんて思ってないんじゃないか。要するに、天才も同じだよ。天才を天才と呼ぶのはいつだって周りの人間だ。天才は自分を天才だなんて思わない。思う必要もない。イルカが自分をイルカと呼ばないのと同じだ」「でもいくひしは天才なんだもん。そうなんだもん」「はいはい」「うー、もういい!」「あーあ、いじけちゃった」「うるさい! うざい! てんさい!」「罵倒に乗じて天才を刷りこもうとすんな」「サブリミナルこうか!」「頭いいこと言おうとして超絶頭ワルいからなそれ」「うわーん!」「あーあ、泣いちゃった。いいだろ、バカだって。天才になろうとすることは何もわるいことじゃねぇんだから、諦めんなって」「ネバーギブアップ!」「英語で言ったって頭良くはねぇからな? 英語にすりゃ頭いいって感性がすでに超絶頭わるいからな」「ネバーギフテッド!」「おー、すこしうまいこと言ったと思わせといて、それだと永遠に天才になれない、もしくは、いちども天才ではない、の意味になるけどいいのか」「いくひしは天才!」「もはやひねりがなくなっちゃった、ただ言い張ってるだけになっちゃった、一周回って素直にただのバカになっちゃった」「うるさーい! いいでしょ一回くらいいくひしのこと天才って言ってくれても」「一度でいいのか?」「ずっと言って!」「ムチャクチャかよ」「ネバーギフテッドネス!」「もはや意味が解らんが、一生天才って言いたい旨は理解した」「もういい、わかったよ。いくひし天才じゃない。もう天才のショウGOはそっちにあげるよ、きみに決めた」「ポケモンじゃねぇんだから」「いくひし、天才がすき。フォーネバー、ラヴ」「エバーな」「フォーエバー、ラヴテッド」「ギフを取ってつけるな、ラヴにすり替えるな」「ラヴ取って」「フォーエバー、テッドっておい、テッドじゃねぇか、一生下品なクマのぬいぐるみでいろってか、ふざけんな」「オナペット?」「下品だった! もういいわ」「ほらね、天才だったでしょ」「とんだ天災だったじゃねぇか、とんだとばっちりだよ、巻き込み事故だよ」「うへへー、じゃあアレの装着はかかせないね☆」「言わねーよ?」「ほらほら、これこれ」「自分の頭を差すのをやめなさい」「ほらほらー、このままじゃフォーエバー終わらないよ」「くっそー、ヘルメットみてねぇな頭しやがって」「だっていくひし、天才ですから」「赤髪坊主のスポーツマンみたいに言ってんじゃねぇよ」「バスケット?」「うまいこと言ってた!」「ギフテッドですから! あははー」
674:【評価】
評価について人と話したとき、うまく会話が成り立たないことがある。なぜだろうと思いながらもずっと放置してきた疑問だった。今さらながら気づいたのだが、たとえばある動物を見て、それがゾウだと判った。「あれはゾウだ」と認識する(人によっては、「あれは太郎だよ」と固有名詞まで答えるだろうし、またある人は「あれは乗り物だよ」と答えるだろう)。いくひしは、これを評価だと感じる。けれど多くの人は、「あれはゾウだ、だから好きだ(或いは嫌いだ)」までを含めて評価だと捉えるようだ。うまく話が伝わらない要因はそこにある。いくひしは、ある任意の対象を観測したときに、「あれはこういうものだ」という認識、或いは分析、それに類する分類が評価だと考えている。ゆえに、そこに付与される感情が正か負かは気にならない。それをどのようなものだと捉えたか、それが重要なのである。おもしろい、おもしろくない、は靴を飛ばしてでも導きだせる単純な選択だ。そうではなく、これはなんだろうと考えたときに、これはこういうものだ、というその人物固有のカテゴライズに興味がある。なるほど、この人にとってアレはそういうふうに視えたのか。どう感じたかよりも、その視方のほうが貴重に映る。むろんこの価値観もまた貴重か、貴重でないか、靴を飛ばしてでも導きだせる単純な選択だ。
675:【クソダサかっこいい】
https://www.youtube.com/watch?v=EEc-f3Yn5HY676:【もっとも更新がうれしいWEB漫画】
おもしろいWEB漫画は数あれど2017年8月25日げんざい、いくひしがもっとも更新されててやったーとなるWEB漫画は苦楽たくるさんの「女子高生にムリヤリ恋をさせてみた」です。めえちゃんかわいい。
677:【つよわみ】
ぼくの知能は平均より低い。口頭で会話を交わせばまずまちがいなく「バカ」のレッテルを貼られる。じっさいにバカなのだろうと思う。接触した相手を不快にさせることが多いし、大概は呆れさせてしまう。さいわいというべきか、アイツはデキソコナイかもしれないと、接触を持つ前から予測できるからか、相手に失望される確率は、ぼくがおそれているよりかは低い。けれどぼくは、文章を通して、ほかの人たちに並ぶくらいの知性を働かせることができる。ぼくは、文章を通して、過去のじぶんや未来のじぶんと繋がることができる。足りない知能をそうして、文章上では補うことができるようだ。なぜかは解らない。ぼくがなぜ、ほかの人たちみたいに考えたり、動いたりできないのかが解らないのと同じように。或いは、こうも言い換えることができる。ぼくは、文章のうえでしか、ぼくとしての外郭を得られないのだと。ぼくは、ただぼくであるかぎり、ぼくではいられないのだ。
678:【おいおい】
それで人並みのつもりかよ。
679:【端的な指示】
モノAI(IoT)の普及により、端的で的確な指示が日常化する。裏から話せば、いわゆる迂遠な言い方が淘汰されていく。やんわりと伝える、ということが日常から消え去る日はそう遠くない。
680:【自分道】
じぶんの道を貫くのも、新たな道を歩むのも、いつかはいずれ行き詰まる。そのときに立ちどまるのもほかの道をいくのも、一つの在り方だ。しかし道のさきを知りたくば、じぶんの手で道なき暗がりを進み、それにより道と言い張るほかない。優劣はない。ただどれを選ぶかという〈意思〉があるだけだ。〈あなた〉が選べば、それはどんな道も、あなたの道である。
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参照:いくひ誌。【101~110】
https://kakuyomu.jp/users/stand_ant_complex/news/1177354054881386208