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いくひ誌。【571~580】

※日々にんげんとしての核が欠けていく、内なる獣が駆け巡る。


571:【枯渇】
情熱の枯渇する音が聞こえる。出し尽くしてしまった。いよいよここからが本番、才能のない者にしか辿り着けない境地へといざゆかん。


572:【ほんとかぁ?】
これまでの新人賞ではおおむね、いまを切り取る作家が選ばれてきた。しかし現代において「いま」は「埋没」と同義である。流行を追った時点で手遅れだ。未来をつむげ。それはSFという意味ではない。「現代」は「埋没の軌跡」を描いてこそ「過去」として浮きあがる。それら「埋没の軌跡」の延長線上にのみ「未来」は枝分かれしている。いまを描くな。未来を描け。それは未来を切り拓くのとおなじだけの質量を帯びている。


573:【織子とナッツン】
原鮎美さんの漫画「織子とナッツン」がほしい。大型書店さんを二店回ったのに最新刊の3巻しか置いてない……。ぜったいおもしろいって分かってるのに手に入れられないもどかしさ。電子書籍に手を出す日もちかいなコレ。


574:【格闘】
いやー、きつい。さいきんさー、なんか昔馴染みのアイツがいくひしの中核の座を狙ってイチイチがおーって襲いかかってくるわけ。もういいかげんにしてほしい。ちみが偉いのはわかったから、つよいのはわかったから、はいはいかっこいいしかわいいよ、だからもうじぶんを大きくみせるのやめて。見ててつらい、我が身として。むかしみたいにクラーイ自意識の底に沈めてやってもいいのだけれどもそれだとまた亡霊みたいにいつの間にかよみがえってきちゃうかもしれないから、ここはいっそ飼いならしてしまったほうがいいような気がする。たしかにね、物理世界じゃ、アイツに任せておいたほうがいろいろと成果がでる、これは事実だよ。でもね、それじゃあダメなんだ。他人を威圧して、蹴落として、誰よりじぶんがいちばん、みたいなふうに振る舞ったらそりゃあそれなりの成果はでますよ、他人さまを虐げて傷つけた分だけじぶんが浮きあがりますからね。でもそれは相対的な成果であって本質ではない。いくひしはいくひしが成長しなきゃならんのですよ、進化せにゃならんのですよ、それと他人さまは別次元の話なのですよ、そこんところをアイツに分かってもらうのはムリなのかねぇ、いやー、ほんと、きついですわー。


575:【――といいなぁという願望】
文芸が一般的な娯楽として百年後に残っているのかは疑問の余地があるが、まだ残っているとして、百年後にも読まれているだろう現代作家の小説はなんだろうと考えたときに、ぱっと思い浮かぶものが「SAO」以外にない。「SAO」とは「ソードアート・オンライン」という川原礫さんの小説なのだが、いくひしは読んだことはない。ただ、概要だけでも百年後に通用する要素を含んでいると感じる。文芸は長らく、何を描くかではなくどう描くかの技術が重宝されてきた。しかし何を描くかのほうが重要なのは、映像技術の発展した現代ではことさら強調するまでもないだろう。どう描くか、はどう考えても映像分野には適わない。小説にできて映画にできないことはないと言っていい。極論、文章だけの映像だって撮れる時代だ。どう描くか、は、何を描くかを厳選してはじめて意味をなす。もっと言えば、どう描くは、誰が描くか、と同じ意味を持つ。誰につくらせるか、よりも、何をつくらせるのか、のほうが重要だ。誰に、は、何を、のあとに従属する。何を誰につくらせるのか。いま編集者やプロデューサーはこぞってそこを吟味している。何をつくり、誰にそれをやらせるのか。しかしこの考え方は飽くまで、さきを見通せる人間がやってはじめて効用を発揮する。価値ある「何を」を見いだせる人間はすくない。そして「誰を」を見極められる人間はそれ以上にすくない。問題なのは、往々にしてそれらを兼ね備えている者が、自身もまた創作者であるという皮肉である。これからさきの時代では、編集者自身もまた腕利きの表現者でなくてはならない。「何を」を見極めながら、「誰を」を考えたときに、それはじぶんではないと判る者、そうした者が、本業の片手間に上質な作品をプロデュースする。そうした時代がすぐそこに迫っている。YOUTUBERにその傾向は顕著に表れている。またフリーのライター業界もそうだ。いつだって新しいものが新しい時代を切り拓いていく。殻が破られる日は目前に迫っている。


576:【2017/6/14】
新作更新しました。「万妖衆~女編~」です。単品でお楽しみいただけます。六万字弱の中編です。神があーだこーだ悩みながら生きて滅ぶまでの話です。三万字の短編も今週中に更新します。どしどし新作つくっていきます。100年後には1億人に読まれているように計画してます。概算ですが、3年で読者が2倍ずつ増えるとして81年後には134217728人に読まれることになります。しかし現状、読者がゼロ人なので、このままだとたとえ1万年経ってもゼロのままです。ゆゆしき事態です。よかよか。気楽にいきましょう。おー。


577:【悪化?】
インターネットの社会浸透の影響で様々な問題が急浮上しているように観測される。が、それは元々社会の暗部に根付いていたものが可視化されるようになったことが大きな一因であるように思う。問題は初めから社会に内包されていた。それが誰であっても認知可能な状態にあるこの状況はそう悲観するようなものではないように思う。もちろん問題はある。犯罪行為の存在そのものを知ることでそれを実践してやろうという層はでてくるだろう、相対的に犯罪率自体が上昇する懸念は否めない。また悪事が一般化し、悪事ではないとする見方をされるようになるかも分からない。しかしそれを考慮に入れても、犯罪行為が可視化されやすい、或いは共有認知されやすい状況というものは、これからの社会にとって正の方向に働いていくだろう。問題が何かが分からなければ、我々は対処を施す真似もできない。対処をすればするだけ悪事はつぎつぎと進化し、更新されていく。いたちごっこに映るかもしれない、しかし確実に社会は改善されつづけている。ただしこの前提には、インターネットの情報が、統制や操作をされていないことが条件にある。権力が情報を操れば、上述の利点はすべて大衆のマインドコントロールを、我々が考えるよりはるかに容易にする危険をはらむようになる。他方で、我々がマインドコントロールされてはならない理由もじつのところそれほど思い浮かばない。


578:【ネット内バブル】
ネット内でのバブルの崩壊は思ったよりも緩やかに進行するのかもしれない。ある閾値を越えたときに一気に霧消へと向かう。じっさいに加速するのではなく、そういうふうに観測される、という意味だ。砂時計みたいな、と言えば端的だ。たとえばの話、三年前のリツイート数十万件超えの案件と、たった今話題になっているリツイート数数万件の案件、どちらが価値があるかと問えばそれは比べるまでもなく後者の、たった今話題を集めているほうだ。話題になっていることと、話題になっていたという履歴は、現在の価値が異なる。しかし数値で見れば、過去のリツイート数十万件超えのほうが価値が高く映る。本来、とっくに価値が消失しているにも拘わらず、見かけ上の数値はそのままなため、それを得た者やその周辺の者からすると、価値の暴落が実感しにくい。じっさいには、本質に気づいた者から順にそこから離れている。周囲から人が失せ、誰からも見向きもされなくなったと物理的に気づいたときにようやく、価値が失われていることに気づく。皮だけ残されているのだと気づいたとき、中身はとっくの昔に失われている。どこか虫歯のような構図が、現在、ネット社会で蔓延しはじめている。ネット内でのバブルは、弾けることなく、凍ったシャボン玉のように、あるとき突然欠けはじめる。しかし元からそこに中身はない。或いはあべこべに、ソシャゲのように、全体の数パーセントの重課金者によって回路を維持する機構は、その他の多くの駒を重視したりはしない。それらは飽くまでゲームの装飾の一部であり、課金意欲を煽るための餌である。主軸は種であり、その他の果肉や皮は、種を得るための養分である。ゆえに、いくらユーザーの数が多くても、課金総額が低ければ意味がなく、ユーザー数が多ければ安泰かというとそういうわけでもない。いずれにせよ、見た目の数値にまどわされないことが肝要だ。


579:【で、ホントはどう思ってんの?】
バブルが膨れるだけ大したもんですよ、っていうかふつうにうらやましいんですけど! いくひしだっていいねほしいー! いっぱい拡散されたーい、銀さん角さんみたいにヒカエオローってフォロワー数で威圧したーい! でもされないからひがんでんの! いわせないで!


580:【いいか】
幼児退行すりゃいいってもんじゃない。おまえはおまえ自身を解っていない。本音では――他人なんてどうでもいい、同じ生き物となんて思っていない。おまえはじぶんが醜い生き物の皮を被った概念生物だとそう感じているのだろ、偶然、その肉体に宿ってしまったが、器は仮宿であり、本体ではないと。じぶんの足のゆびを眺めては、なぜこんなにも気持ちわるいのかとめまいを覚え、体内の内蔵の構造を想像しては、なぜこんなにも脆弱なブヨブヨに寄生してしまったのかと現実から目を逸らしたくなる。あたかもクラゲに寄生したクジラのように、おまえは肉体と精神との乖離に頭を悩ませている。他人のことなんてどうでもいい、おまえは他人を同族だなんて一度も思ったことがない。そうだろ?


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参照:いくひ誌。【151~160】https://kakuyomu.jp/users/stand_ant_complex/news/1177354054881593302

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