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いくひ誌。【551~560】

※日々は百体のかかしであり、雪乞う星もまた待ち人なり。


551:【終極エンゲージ(1)】
原作:江藤俊司さん、著者:三輪ヨシユキさんの漫画「終極エンゲージ1巻」が嫉妬するほどおもしろい。これはあれやろー、おまえが得意としとるやつやろー、なにさきこされとんねーん、みたいな、内なる野次がとめどない。名実ともにオレつえー主人公が全宇宙から妃をつのるが、その条件は、宇宙最強であること。あろうことか主人公、じぶんのクローンを妃とする案を実行しようと画策するも、産まれたクローンは主人公への好意がゼロだった。あまつさえ全宇宙のために主人公を殺すとまで明言する。しかし主人公を殺すためにはまず結婚せねばならない。主人公はそんなクローンを結婚までに惚れさせてみせると豪語する。ほかの妃候補たちとの戦闘を交えながら、クローンは主人公を殺せるのか、それとも結婚するまでに惚れてしまうのか。無理やり現代ドラマに譬えれば、超絶凄腕ナンパ氏VS女スパイ、さきに相手の人生を奪うのはどちらだ!? みたいなの。おもしろくないわけがない。おすすめです!


552:【スーツ5・5】
海外ドラマ「スーツ」のシーズン5の5(9~10話)を観た。相変わらずの展開の怒涛がすさまじく、しかしさすがにマンネリ化してきたなーというところで、かつてないほどの窮地と救済と決断の嵐。ドラマがはじまった当初は金、金、金、世のなか金と地位がすべてなんだよ、といった傲慢さをかっこよく描いていたドラマから、なぜここまで真逆の展開に持ってこられるのか、と度肝を抜かれる、友情、愛情、家族秘話になっている。いままでさんざん他人を蹴落とし、利用し、だまし、はめてきた彼らがいまさら何言ってんだ感はたしかに拭えない。でもそこは彼らの中核にはホントはもっとべつの何か、欠けたものをホントは金や地位以外で埋めたかった時期があったのだ、挫折があったのだと知っているからこそ成立するドラマがある。涙腺がゆるゆるしてきて、でもけっしてそれはバッドエンドではない、ようやくこれで大団円なのだなーと油断したところで、おまえなー! やってくれますよ脚本陣。さすがです。


553:【詳細】
プロットに詳細も杜撰もない。建築の設計図とは根本的に異なる。設計図はそれ自体でひとつの作品だ。しかしプロットは、それを元につくりあげてもできあがる品は、それをつくる者の数だけある。極論、つくる時期さえたがえば、たとい同じ人物であっても出力される作品はまるっきり違ってくる。プロットは詳細にする必要はない。もののけ姫を考えてみればいい。本編からプロットを抽出してみたところで、それが宮崎駿氏の用意していたプロットと合致する確率は極めて低い。絵コンテをプロットとは呼ばないのと同じだ。プロットは飽くまで指針のようなものであり、それに沿ってつくる必要はない。スノースポーツの大回転と似ている。フラッグを経由すれば、あとはどのような道をどのように辿ろうと構わない。プロットとは、ストーリーの流れが分岐する地点に、任意の点を打つ作業だ。そこを通ればそれらしくなるという保証のようなものであり、さいあくその点を無視してもいい。絵画は額縁のなかにすべての対象物を描き入れる必要はない。見切れてもいいし、はみ出してもいい。それくらい表現や創作という行為は自由であり、可能性に満ちている。とはいえ、ないよりはあったほうがいいのは言うまでもない。たとえそれが脳内であろうと、シミュレーションしてみたという事実はそれだけで物事をより理想にちかづける。


554:【徹底的に】
さいきん思うようになった。誰かに評価してもらう舞台に立ちつづけないといかんぞと。必要に、執拗に、徹底的に否定される。そういう経験が思えばすくない。認められないことは常だけれど、それは単に認めてもらおうとしていないからだ。認められなくたっていいや、というやつだ。わかるひとならわかってくれる、そういう傲慢さがずっとある。そしてたいてい分かってくれるひとが現れる。成長しつづけるためにその傲慢さは欠かせないもので、だから敢えてそういうふうにじぶんに言い聞かせてきた背景がある。ともすればそれが逃げになり兼ねないので、ときには負け戦にでかけることもあったが、それもまた一種の逃げだと気づいた。勝てる戦でも徹底的に負ける経験が必要だ。勝てる戦とは、闘いの舞台の質とは関係がない。戦わなければ負けることはできない。同時に、勝ちにいかねばその負けに価値は生じない。負けてもいい。そう思って得た負けにどんな価値があるだろう。勝ちたい、しかし勝てない。そういう舞台に立ちつづけなくてはいかんぞ。むろんそれは本質を進化させるための触媒であり、それを核としてもいかん。肝に銘じよう。


555:【しゃべんな】
ほぉらまたかっこつけてる。無様だってことなんで気づかないかねぇ。いくひし、あんたさぁ、そういうところがダメだってホントは気づいてんでしょ、なんで直せないの? そうやってじぶんのこと大きくみせようとして余計にかっこわるくなってんの分かんないほどバカじゃないんでしょ、かんべんしてよもう、見るほうの気持ちになって。ね? いいコだから。


556:【やーだよ】
かっこつけてもつけなくてもかっこわるいならかっこわるくてもいいからかっこつけたいじゃん! いいじゃん! もしかしたらだれかだまされていくひしのことかっこいいとかかわいいとかおもってくれるかもしれないじゃん! もしかしたらもしかしたらこのひとあたまいいかもっておもってくれるかもしれないじゃん! いいじゃんちっとくらい! みのがして!


557:【ねらい目】
これからさき、需要を拡大する事業の一つに連帯保証人代理事業があげられる。少子高齢化の社会では、少なくない数の高齢者が一人で暮らすようになる。持ち家を持っている者はいいが、そうでない高齢者たちは自力で住む家を確保しなくてはならない。彼らには連帯保証人になってくれる三頭親以内の親族がおらず、アパートを借りられない問題が急速に浮上してくると予測される。そうなると、ある種の保険に加入するような感覚で連帯保証人になってくれる会社の需要が拡大する。シェアハウスという名目でかぎりなくグレーな介護施設も増加してくるだろう。或いは、問題を抱えた者同士での養子縁組がまかりとおる社会になるかもわからない。若者はすくなくとも法律的に、責任を分散できる相手がいる傾向にある。それは親であり、ときにきょうだいであり、祖父母である。しかし高齢者には、いずれも亡くしてしまい、この世にただひとり残された者がすくなくない。これからはその数は増えていくだろう。孤独死が騒がれて久しいが、まずは一人で生きていけるか、衣食住を満足に確保できるか、それが問題になってくる。社会福祉はすでに崩壊していると捉え、早急な新しい制度の確立が行政に、あるいは民間に求められている。


558:【たとえとどかぬ糸だとしても】
tMnRさんの漫画「たとえとどかぬ糸だとしても」を読んだ。表紙&あらすじ買いしてよかったー。兄嫁に恋する思春期女子のおとなびた恋心はしずかに燃え尽き、パチパチと炭火がごとく淡い熱を発しつづける。結ばれるだけが愛ではなく、また別れるだけが失恋ではない。たしかな絆で結ばれていようと求めた愛はそこになく、常にそばにいるのに実ることのない想いはぷわぷわとしゃぼんだまのように浮き沈みを繰り返しながらいずこへと消える。途切れることなくしかしそれは無数にあらわれてはやはり消えつづける。途切れさせまいと息を吹きつづけるじぶんがおり、同時にそれは炭火を赤く発光させつづける。2巻、ちょうぜつ待ち遠しいです。買いです!


559:【直感】
ひらめきと直感は脳の働く箇所がちがうらしい。大別するならば、その根拠を求めたときに言語化して説明できるのがひらめき、できないものが直感だという。そして直感は身体を動かす脳の部位が働いて導かれる答えであり、経験値による反射だ呼べるかもわからない。そういう意味で、これはここ数年優先しつづけてきた直感であるのだが、このさきクリエイターとして生き残りたくば、安易にバズらないほうがよい。ここ数年でバズったコンテンツのうち、いま残っているものはどれだけあるだろう。バズるという現象は、その名の示す通り、イナゴの大群に襲われるようなものだ。イナゴの過ぎたあとには草一本残らない。いまクリエイターのすべきことは、目先の承認や知名度を得ることではなく、大量のイナゴに食い荒らされようと消費し尽くされない土壌を築いておくことだ。これからの二年は、「生き残りたくばバズるな!」が合言葉になっていく。熱しやすいものは冷めやすい。世の理である。


560:【コスト】
小説はさいあく紙とペンがあればつくれる。創作のなかでもコストのかからない部類だ。現代だとPCが一台あれば事足りる。しかし果たして本当にコストがかからないのであろうか。すくなくとも数ある創作のなかでは一つの作品に費やす時間は並大抵のものではない。作品のための取材から換算すれば長編を脱稿するのには最短でも二か月はかかる。執筆自体は、やろうとすれば一週間で可能だ。もっともそれをつむぐためにはやはりというべきか仕込みが欠かせない。小説は、時間という人生においてもっとも重要な対価を支払っている。年に長編を十作品つくるならば、毎日二十四時間のうちさいていでも十二時間は創作のために費やさないとむつかしいというのが実感だ。時間を奪われればお金を稼ぐ時間も相対的に減っていく。得られるはずだった実りを得られない。たいへんな損失だ。もっともほかの創作にしても同様の傾向はあり、漫画やアニメ、映画や彫刻に比べればはるかに費用はかからない。やはり小説はコストのかからない部類なのだろう。


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参照:いくひ誌。【191~200】https://kakuyomu.jp/users/stand_ant_complex/news/1177354054881913978

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