定期的に近況ノートを報告しつつ、本編も投稿して創作意欲を崩さないようにしてます。
さて、今日のお話は登場人物の名前。昨日今日とで新たに二つの作品の連載をはじめ、現在小説四作品を連載中。プラスしてニコニコ動画で動画も投稿しているわけですが、私として小説と動画に使われる脳の処理が異なるので、あまり苦は無く制作できています。
私が書く小説の登場人物は、みな意味のある名前にするように心がけています。突拍子もない名前は避けよう、という個人的なポリシーです。
分かりやすいところでは『異世界動物記』です。前の記事で書いたとおり、アツシは「シートン」を漢字変換し、「史敦」→「敦史」→「アツシ」としています。では、他の登場人物は?
『異世界動物記』で他に名前が与えられている人物は、現在「グレース」のみです。ではこのグレースは何処から来ているのでしょうか。正解はシートン動物記の作者であるアーネスト・トンプソン・シートンの妻、「グレース・ギャラティン・シートン・トンプソン」です。彼女はアメリカで作家をしていたそうです。ちなみに馬に乗ってロッキー山脈を越える体験記を最初に出版したそうです。馬に乗っているのはここから来ています。
『四谷小春シリーズ』では、主要メンバーの二人は春にまつわる言葉を入れています。「四谷小『春』」に「『桜』庭香織」です。益子美紗はそのまんま「マスコミさ」という意味ですが……。この辺はまた後に物語に関わってきますので一旦保留。
第一章「塵塚怪王の木」に登場した人物にも由来があります。「生野源蔵」「伊瓶伸太郎」「伊瓶の母」です。それぞれごみの種類が入っています。生野源蔵は「生ごみ」と「資源ごみ」、伊瓶親子は「瓶ごみ」です。実は、伊瓶伸太郎と一緒に遊んでいる子供たちにも名前が当初はついていて、それぞれ紙ごみや金属ごみから名前をつけていましたが、執筆段階で不要と判断して除外しました。
現在連載中の第二章「百々目鬼の涙」では、堂崎美琴、六城弥咲、保屋朱音、海野沙織が登場します。一見疎らな名前に見えますが、今回は単純な名前の由来で、それぞれの苗字の頭文字をとると「どろぼう」となる仕組みが備わっています。店長の直木は、初稿当時盗まれるのが本という設定だったため、直木賞と芥川賞の由来となった作家の名前を混ぜ、「直木龍之介」と名付けたところ、結局苗字しか出せなかったのがオチです。
新作『ミステリーサークル』より、「File1.幽霊学園殺人事件」の登場人物は、かなり多いです。
・樫村悠一
・芹沢志穂
主人公とそのパートナーとなる、樫村悠一と芹沢志穂は、それぞれ植物の名前が苗字に入るようにしています。そして、
・綱本友実
・奥京子
・遠見佳乃
・大黒涼花
・荻澤隆宏
・一文字和彦
・景谷雄輔
・保科眞白
・上出悟志
・馬場朋美
・北原義崇
残りのメンバーはどうでしょうか。全て、演劇に関する用語が含まれています。
綱本友実は「綱元」から。天上に物を吊るすための、バトンと呼ばれる棒を字昇降させる際に用いるものが「綱元」です。
奥京子は舞台奥の通称名「奥」から。これはまんまですが、舞台上の左右を上手、下手と呼ぶに対し、舞台前方を舞台面、舞台後方を舞台奥と言います。それぞれ、「上(かみ)・下(しも)・面(つら)・奥(おく)」と言います。
遠見佳乃はそのまま「遠見」という演劇用語から。元々は歌舞伎で、背景を書いたパネルのことを「遠見」と呼んでいます。作中に書き割りが登場しますが、実は、書き割りと遠見は役割が違っていて、遠見はあくまで風景、書き割りは建物や家財などが描かれます。
大黒涼花は「大黒幕」から。聞きなれないですが、照明を当てて背景として用いる白い大きな布のホリゾント幕を隠す目的で使用されるのが大黒幕です。ホリゾント幕を昼間の場面で使うなら、大黒幕は夜の場面で使われます。通称「おおぐろ」と言います。
荻澤隆宏はかなり変則的な由来で「わざおぎ」から。これはつまり役者のことで、そのまま「俳優」と書きます。元々は神様は人の心を和らげ楽しませる人のことを指しました。いわゆる芸能の起源とされています。
一文字和彦は「一文字幕」から。一文字幕とは、舞台の上に吊るされている照明や道具の幕を観客から見えないようにするための長い幕のことを言います。体育館のステージに布が下がっているのを見たことありませんか? それぞ手前から、一文字幕、二文字幕、三文字幕というそうです。
景谷雄輔は「景(けい)」から。景とは脚本の場面割の単位みたいなものです。よく第一幕、第二幕……という分け方を聞いたことがあるかもしれません。その幕をさらに小分けにした際に用いります。第一幕第一景、第一幕第二景……。論文などの、章・節・項と似たようなものです。
保科眞白は「科白」から。元々「科白」とはセリフではなく「かはく」と読みます。と言っても意味はセリフと同じで、「科」は役者の動き、「白」は言葉を意味しています。二つ合わせで言動という意味になるわけです。
上出悟志は「上出し」から。「上出し」とは、舞台上にある回り舞台を時計回りに、つまり上手側にある場所が舞台前方に見えるように回転させることを言います。回り舞台は、よく歌舞伎の舞台で見ることができます。
馬場朋美は「場」から。景谷の説明の時に出てきた、一幕・一景の説明と同じく、脚本上の場面を小分けにした際の単位です。単位としては、幕と景の間に入ります。大きな使い分けとしては、場が『場面の転換』で、時間や場所が変わり場合の区切りです。景は「景色の転換」で、要はその場からそこまで動いてはいないが、新たな登場人物が登場したなどの小さな変化に用いられます。論文の章・節・項でいえば、順番は幕・場・景となります。
北原義崇は変則的に「北原白秋」から。演劇で使われる声出しの「あめんぼの歌」。「あめんぼ あかいな あいうえお」で有名なこの歌を作ったのが、北原白秋です。そんな彼の名前から、苗字を拝借しました。
私は名前に意味を持たせたくて回りくどい名付け方をしていますが、頭の中に浮かび上がった名前をつけても全く問題ないと思います。あくまで一人のこだわり、一人の小ネタとして楽しんでいただけたらなと思います。
今日公開された『BIRDS』の登場人物の名前の意味あってつけていますが……。こちらは最新作すぎるのと、まだ登場人物がきちんと出そろっていないので割愛。とはいえ、なんとなく鳥に関係しているもの(鳥籠、止まり木、餌の米など)なのは察していただけるかもしれません。
今後の作品も、こうしたように名前にちょっと小ネタを挟みます。是非それも楽しみの一つに読んでもらえたらうれしいです。
それではまた次回の更新で。