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志邑えるか

  • @shimura_elca
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elca_shimura
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  • 2024年6月15日

    火炙り小話「帰郷を拒む」

    時系列:40話より後 「あ〜ぁ、これで男所帯に逆戻りか。むさくなるねぇ」  ガルとホナミが去ったあとの食卓で、ハロルドさんが呟いた。明らかに残念そうな声音だが、多分に冗談を含んでいることは察せられる。なんといっても長い付き合いだ。 「そうは思わないかいバッツ君」 「俺は別に今の生活に不満無いんで……というか、ハロルドさんは奔放にやってるでしょうが」  俺に話題を振ってきたハロルドさんを受け流す。ハロルドさんもハロルドさんで、俺の差し向けた少しの棘を、はっはと笑って受け流してきた。  食事が終わり、片付けをしていた時のことだった。ギュスターヴさんは自室に戻り、ハロルドさんは考え事をするように、付け合わせの香草を手慰みに弄っていた。  ハロルドさんが何を考えているのか気になって、皿を洗う手はそのままに聞く。 「ハロルドさん、あいつらのことは随分気に入ったようですね」 「揶揄い甲斐がありそうだとは思うね」  ハロルドさんは、俺の背中に答えた。香草に爪が食い込んだのか、良い香りがふわりと漂ってくる。 「正直僕は、あの二人は従属契約を解除出来るとは思っていないよ」  皿を洗う手が止まる。悪意を持って発した訳ではなさそうだったが、解除を望む二人にとっては酷な言葉だと思った。俺自身も、難しいことだというのは分かっているし、解除できなくても、二人なりに生きていけば良いと思ってはいるが……。 「あの平和ボケしたホナミに、フランの気持ちが察せられるとは思えないしね」  くるくる、ハロルドさんは手の中で香草を弄ぶ。その言葉が、妹弟子を思ってのものかどうかは分からなかった。  この人は、デリカシーが無くて人の内面に土足でずかずか入るような真似をするかと思えば、どこか他人を遠巻きに見ているような節もあって分からない。 「ま、お人好し平和ボケ娘だからこそ、奇跡を起こすかもしれないと期待しているけどね」  にこ、と笑って、ハロルドさんは香草をゴミ箱に放り込む。勿体無いと思うとともに、いじくり回されてボロボロになった香草に憐憫も抱いた。この人に深入りすべきでないと、本能で察する。いや、もう手遅れなのかもしれないが……。 「バッツ君も、たまには故郷に帰ってきたらどうだい」  部屋を出ようとしたハロルドさんが、突然立ち止まって言った。扉に隠れて顔は半分見えなかったが、そのヘーゼルの瞳が自分を真っ直ぐに捉えていることに、背筋が粟立つ。 「い、や……俺は……」 「気乗りしないなら無理にとは言わないけどね。たまには休暇も必要だと言いたかっただけさ!」  俺が言い淀んだのを察したのか、ぱっと笑顔になったハロルドさんは、はははと笑いながら部屋を出て行った。  苦手だな、あの人のああいうところ……。
  • 2024年5月28日

    火炙り小話「獣人族の名前」

    「そういえば、ガルさんの弟さん達もガルさんも、皆さん名前の後半に『ヴェイル』って付きますよね」  ああ、とガルさんが振り返って言う。散歩の帰り道、何の気なしに私は先述の言葉を呟いたのだった。 「獣人にも、種族によって名付けの決まりは色々ある。俺達は、名の後半は父親から取る。誰の子供だか分かりやすいようにな。古い習慣の名残みたいなもんだが」 「へぇ……」  ガルさんはガルヴェイル。弟さんは、ブランヴェイルとベルデヴェイル。ということは、ガルさんのお父さんは、なんとかヴェイルさんだったのだろう。ナザリーさんはナザリーラムだから、お父さんはなんとかラムさんだったのだろうか。  バッツアルグさん、その妹はローザアルグさん。なるほど、規則に従っている。 「魚人族の名前はやたら長いとかもあるな。たしか、長ければ長いほど高貴な身分だとか……」  あー、ダリアさん。本名、スピネルダリアリグルー。ダリアさんは高貴なご身分なのだろうか? 「色々あるんですねぇ」 「ホナミのいたところは何かあるのか?」  私の元いた世界でも、海外では聞いたことがあるような気もするが、身近ではない。親の名前から一文字取る人や、なんとか太郎だとかを揃える人もいるけれど、ガルさん達のように種族として規則がある訳では無いし。 「うーん、あんまり無いですかね、規則みたいなものは……」 「そうか。じゃあ珍しく感じるだろうな」 「はい。こういうことが知れるのも、面白いですね」  もっとガルさん達のことを教えてくださいね。と、そう言うと、ガルさんは優しく笑って頷いた。 「ああ、勿論だ。ホナミのことも、俺に教えてくれ」 「勿論です」
  • 2023年10月21日

    火炙り小話「ハロウィン?」

    「お菓子をくれないといたずらをします」 「……?」  目の前のガルさんが首を傾げる。無理もない。急な思い付きで言ってみただけなのだから。 「菓子?」 「えっと、ハロウィンっていうのがあって。私の故郷の……お祭りみたいなもの? ですかね……仮装をして、お菓子をくれなきゃイタズラするぞ〜! って言って近所を訪ねたりするんです。丁度このくらいの時期かなって」 「へぇ。……しかし、今は菓子は持って無いな……」  予め教えておいてくれれば用意したんだが、と言うガルさんに、いやいや思い付きなので、さっきカボチャを見かけて思い出しただけの戯言です、と返す。 「この世界には、何かそれに近いような催しってあるんでしょうか?」 「う〜ん、何だろうな……。この時期なら、俺の故郷では慰霊祭だな」 「慰霊祭?」 「村の広場で大火を焚いて、もう使わなくなった毛皮とかの動物由来のものや、狩りに使った道具だとかを焚べるんだよ」 「おぉ……」  ハロウィンとは趣が異なるが、どうやらガルさんの村にとって大切な催しであることは分かる。興味深く頷きながら聞いていると、ガルさんは故郷を思い出すように少し遠くを見ながら話してくれた。 「獲物の命や、日々の糧に感謝しながら、大火の周りで音楽を奏でて、踊ったりする」 「ガルさんも踊りを?」 「ガキの頃だけな」  火の周りで踊る、小さなガルさんを想像する。可愛らしい。 「まぁ、元々の祭りの意味なんて廃れてきて、今や爺ちゃん婆ちゃん世代しか意識してないだろうな。俺達の世代やもっと下は、要らないモンの処分祭みたいな感覚だよ」  私にとっても、ハロウィンはもはやコスプレパーティーのような感覚だ。どこもそういうものなのだなぁと、少しだけ親近感を覚える。 「あぁ、慰霊祭でペアで踊ってる奴らは大体番か、それに近いな。ある程度の歳になると、踊りに誘って受けてもらえるか……なんてのが一大イベントになる」  つがい、という言葉は聞き慣れないが、文化祭の後夜祭のフォークダンスのようなものだろうか? 好きな人を誘って、一緒に踊る。若者にとってはロマンチックな一大イベントだ。  私は、大きな炎に照らされながら踊るガルさんを想像した。薄暗がりの中、白銀の毛並みが橙色に煌めき、瞳のトパーズに大火が揺らめくさまは、さぞかし美しいだろう。 「見てみたいです、ガルさんの踊り」  そう言うと、ガルさんが一瞬だけ固まった。その後、私から目を逸らし、少しだけ小さくなった声で言う。 「……一緒に踊るか?」  その言葉に、咄嗟に「私なんかには無理ですよ」と言い返そうとして、思いとどまった。  私はこの国の世界の踊りなぞ知らないし、大体元の世界でも踊りなんて得意ではなくて、創作ダンスなんてやらされた日には目も当てられない動きしか出来ないような人間だ。  けれど、トパーズに揺らめく炎を一番近くで見てみたいと……願わくば、その瞳に私も映りこんでしまえたら良いのに、と思ってしまったのだから、こう返すしか無い。 「はい、ぜひ」  ガルさんはその言葉に耳をぴくりと震わせて、ふわ、ふわ、と尻尾を揺らしていた。 「話を戻すぞ」  今度はガルさんがこちらをじっと見つめてくる。戻す、とは、何か会話が途中になってしまっていた記憶はないけれど……。 「俺は今、菓子を持っていない」 「? はい」 「で、ホナミはどんないたずらをしてくれるんだ?」  にやり、と不敵な笑みを浮かべたガルさんは、挑戦的な瞳で私を見る。明らかに面白がっていた。 「えっ……えぇ⁉︎ いたずら……?」  いたずら。いたずらって何だ⁉︎ 思い返せば私、ハロウィンに悪戯をしたことなんて無かったのではなかろうか。  急にいたずらをしろと言われてみると、思いつかないものだ。ここは王道のアレしかない……。 「目を閉じてください!」 「目⁉︎」  お、おう……と言いながら素直に目を閉じたガルさんの背後に回り込む。ガルさんが不安そうに「ホナミ……?」と呟いた。  そして。とんとん、と、二回ほどガルさんの肩を叩く。  ん? と振り返ったガルさんの頬に、私の指が刺さった。これぞ悪戯の王道、肩を叩かれて振り返ったら指が頬に刺さるやつ。正式な名称は分からない。あるかどうかすら知らない。 「……ぶっ」  堪らず噴き出したという様子のガルさんは、私の稚拙な悪戯が大層お気に召したようで、心底楽しそうに笑っていた。 「良い行事だ、はろうぃん」  来年もやろう、と言うガルさんに、来年はもっと気の利いた悪戯を考えておかねばと決意をした。  ……ん? 来年?
  • 2023年9月24日

    火炙り設定[人物]:ジザロ

    ガルの友人の、トカゲの獣人。 基本的には何でも仕入れて何でも売っているが、専門分野は武器。情報屋でもある。フランセスカとはあまり折り合いが良くなかった。 ドルトの外れの農村を拠点にしている為、ガルも必要なものがあるとよくジザロを訪ねている。 ガルとは、行商人をやっていた頃に知り合った。ガルの酒飲み仲間でもある。 ガルとホナミについては、旅の無事を祈るくらいの情はある。
  • 2023年8月22日

    火炙り設定[人物]:ガル

    ガルヴェイル 穂波が異世界に来て初めて会った、獣人の青年。 火炙りになっていた穂波(フランセスカ)を救出した。 魔女との契約により、魔女に命令されれば逆らうことが出来ない。 フランセスカの中身が穂波だと知り、従属契約の解除のための協力を持ちかける。 穂波とは協力関係であったが、次第に惹かれていく。 名前の「ガル」は狼っぽさを意識して名付けました。ヴェイルは響きで……。ガルの一族、というより獣人達には、種族ごとに名付けの傾向があったり規則があったりします。
  • 2023年8月16日

    火炙り設定[人物]:ホナミ

    安斉穂波(あんざい ほなみ) 都内でOLをしていた25歳女性。仕事で心を病みかけていたところ、川縁で足を滑らせ、気が付いたら火炙りにされていた。 円満な家庭で育ち、友人付き合いは狭く深い。異世界に来る一ヶ月前に亡くなったペットの犬を大切にしていた。 心優しい性格だが、豪胆な一面も持ち合わせている。 異世界では「ホナミ」と呼ばれることが多い。自ら名乗る時は「穂波」と名乗る。
  • 2023年4月22日

    火炙り小話「ガルは博識?」

    (時系列→18話より前) 「ガルヴェイルさんて博識ですよね」  突然ホナミが言い出したものだから、パンを口元に運ぶ手が止まった。夕食時の雑談として何気ない様子で言うホナミに、「そうか?」と返すと、「そうです」と頷かれる。 「この世界のこと、色々教えてくださいますし」 「特別詳しい訳じゃない」   本を読むことはそれなりに好きではあるが、特別物を知っているという訳でもなければ、頭が良いという訳でもない。ただ、この世界に初めて来た奴に何かしら教えられる程度には知っているというだけだろう。 「ホナミだって、元いた世界のことならある程度説明できるだろ?」 「う〜ん……まぁ、ある程度なら……?」 「それと同じだ」  そうですかねぇ、なんて言われ、そうだ、と返して、この話は終わりとなった。  夕食を終えると、ホナミは言葉の勉強を始める。俺はそれに付き合いながら、ふと思ったことを口にした。 「ホナミは、勉強は好きな方か?」  ホナミがきょとんとした顔でこちらを見る。ペンを顎に当てて考える仕草をしてから、俺の質問に答えた。 「好きではないですね」  勉強をしている様子を見ているとそうは思えなかったが、本人の自覚と周りからの見方に相違があるのは珍しくない。俺は適当な相槌を打って、ホナミのスペルミスを指摘した。 「ガルヴェイルさんが丁寧に教えてくださるので続けていられるようなものです」  スペルミスを修正したホナミは、晴れやかな顔で「いつもありがとうございます」と言った。それは、ホナミにとって教わる相手は俺しかいないがためのリップサービスだったのかもしれない。  しかし、俺に取っては、ホナミの勉強に惜しみなく時間を割いてやりたいと思うくらいには、嬉しい言葉だった。
  • 2023年3月15日

    火炙り小話「あなたは特別な人」

     ガルヴェイルさんがジザロさんのところへ買い物へと出掛けて行った昼下がり、気まぐれに焼いたクッキーを頬張りながら、お菓子といえばバレンタインやホワイトデーというものがあったっけ、なんて思い出す。最近は全く縁のないものだったから忘れていた。考えるとしても、会社の人に義理チョコを配るかどうかくらいなものだ。この世界にも、そういったイベントはあるのだろうか。ガルヴェイルさんが帰ってきたら聞いてみよう。  そういえば、ホワイトデーのお返しには意味があるのだったっけ。私が今持っているクッキー。これはたしか…… 「友達でいましょう」  だったか。マシュマロはお返しの定番のようにも思えるが、意味は「あなたのことが嫌いです」だったような。 「ただいま」  ガルヴェイルさんが帰ってきた。私は出迎えるためにクッキーを口に頬張りながら席を立つ。急いで噛んで飲み下し、ガルヴェイルさんの元へと駆け寄った。 「そういやこれ、ジザロんとこで買ったんだが、食べるか?」  渡されたそれは、可愛らしく梱包されたカップケーキだった。私は先程まで考えていたことを思い出す。カップケーキ。カップケーキの意味は……。 「い、いただきます……」  私は赤くなった顔を隠すように、ガルヴェイルさんに背中を向けた。
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  • 2023年3月2日

    火炙り小話「ガルは器用」

    「そういえば、トリ以外の肉はどうやって調達しているんですか?」 夕食の席で何気なく聞いてみると、ガルヴェイルさんはパンをちぎって口に放り込みながら答えてくれた。 「森で調達している」 サバイバルだ。すごい。都内でOLをしていた私には馴染みのない響きだ。 「後で見せてやる」 そう言ってガルヴェイルさんは再び食事に集中したので、私も倣って食事を再開した。今日のメニューは兔肉(恐らく)のソテーだ。 食事を終えると、ガルヴェイルさんが自分の部屋へ戻り、何かを持って帰ってきた。 蔓か何かをロープのように編み込んだものや、木製の弓矢のようなものまである。 「これで木材を括って罠を作ったり、弓で射ったりしてるな」 ロープと弓を手に取って解説するガルヴェイルさんが、私の方に道具を渡してくる。受け取って上から下から、まじまじ眺めた。 「これ、もしかして自作ですか?」 「そうだが……」 えええ。ロープは丁寧に編み込まれていて非常に頑丈だ。弓も、木を丁寧に削って加工してあることがわかる。さすがに私の知る現代の弓に比べれば、手作り感はあるが、簡単に作れるなどとは到底思えない。 「器用なんですね……」 ガルヴェイルさんは少しだけ嬉しそうな顔で「そうでもない」と返した。
  • 2023年2月17日

    火炙り小話「野菜、よく煮る?」

     ことこと、くつくつ。お鍋に入れたお湯が沸騰し、音を立てている。鳥の皮で取った出汁に塩胡椒で味付けして、野菜を煮る。ことこと、お鍋の蓋が僅かに持ち上げられる音、くつくつ、沸騰したお湯の気泡が弾ける音。 「ガルヴェイルさんって、お野菜はよく煮るほうが好きですか?」  そう聞くと、ガルヴェイルさんは読んでいた本から顔を上げてこちらを見た。 「然程拘りは無いが……どちらかといえばそうだな」 その答えに、私は胸を撫で下ろした。どうせ一緒に生活するなら、好みは近い方が嬉しいものだ。 「私もです。よく煮て柔らかい方が好きなんですよね」 「そうか」 「ご飯の好みは似ているかもしれませんね。嬉しいです」  ことこと、くつくつ。夕飯時、二人の間に流れる静かな時間。  この時間も悪くないと、気泡に翻弄されて鍋を舞う野菜を見ながら思った。