火炙り小話「獣人族の名前」

「そういえば、ガルさんの弟さん達もガルさんも、皆さん名前の後半に『ヴェイル』って付きますよね」

 ああ、とガルさんが振り返って言う。散歩の帰り道、何の気なしに私は先述の言葉を呟いたのだった。

「獣人にも、種族によって名付けの決まりは色々ある。俺達は、名の後半は父親から取る。誰の子供だか分かりやすいようにな。古い習慣の名残みたいなもんだが」
「へぇ……」

 ガルさんはガルヴェイル。弟さんは、ブランヴェイルとベルデヴェイル。ということは、ガルさんのお父さんは、なんとかヴェイルさんだったのだろう。ナザリーさんはナザリーラムだから、お父さんはなんとかラムさんだったのだろうか。
 バッツアルグさん、その妹はローザアルグさん。なるほど、規則に従っている。

「魚人族の名前はやたら長いとかもあるな。たしか、長ければ長いほど高貴な身分だとか……」

 あー、ダリアさん。本名、スピネルダリアリグルー。ダリアさんは高貴なご身分なのだろうか?

「色々あるんですねぇ」
「ホナミのいたところは何かあるのか?」

 私の元いた世界でも、海外では聞いたことがあるような気もするが、身近ではない。親の名前から一文字取る人や、なんとか太郎だとかを揃える人もいるけれど、ガルさん達のように種族として規則がある訳では無いし。

「うーん、あんまり無いですかね、規則みたいなものは……」
「そうか。じゃあ珍しく感じるだろうな」
「はい。こういうことが知れるのも、面白いですね」

 もっとガルさん達のことを教えてくださいね。と、そう言うと、ガルさんは優しく笑って頷いた。

「ああ、勿論だ。ホナミのことも、俺に教えてくれ」
「勿論です」

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