火炙り小話「野菜、よく煮る?」

 ことこと、くつくつ。お鍋に入れたお湯が沸騰し、音を立てている。鳥の皮で取った出汁に塩胡椒で味付けして、野菜を煮る。ことこと、お鍋の蓋が僅かに持ち上げられる音、くつくつ、沸騰したお湯の気泡が弾ける音。

「ガルヴェイルさんって、お野菜はよく煮るほうが好きですか?」

 そう聞くと、ガルヴェイルさんは読んでいた本から顔を上げてこちらを見た。

「然程拘りは無いが……どちらかといえばそうだな」

その答えに、私は胸を撫で下ろした。どうせ一緒に生活するなら、好みは近い方が嬉しいものだ。

「私もです。よく煮て柔らかい方が好きなんですよね」
「そうか」
「ご飯の好みは似ているかもしれませんね。嬉しいです」

 ことこと、くつくつ。夕飯時、二人の間に流れる静かな時間。
 この時間も悪くないと、気泡に翻弄されて鍋を舞う野菜を見ながら思った。

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