「神庭琵琶夢語」完結しました。読んでくださった皆様、ありがとうございました。
この物語を書こうと思ったきっかけは、書くものを探していた何年も前のこと。今度は和風、いっそ江戸ものにしようかと考えていたときに、じゃああれするか、と思い浮かんだのがはじまりです。
大学時代、学芸員の資格課程のとある講義で、予算を気にせず博物館施設を建てられるならどんな施設を建てたいか、と講師の人に問われたことがありまして。そのとき、被差別階級の人々に焦点を当てた施設を、と答えたんです。その答えを物語の基軸にしよう――――そう考えました。
それから、江戸で身分違いの恋といえば吉宗! という謎の発想になり、和歌山でファンタジーなら熊野! とこれまた謎の結論になり。設定が追加されていきました。
で、某小説大賞に応募し、三次までいくものの落選。公開したものは、それに加筆修正したものです。
・神庭
神話の国っぽい名前を、というコンセプトで命名。現実の日本同様に島国で、四季がはっきりしています。桜薙山は当然、富士山をイメージしてます。
・火白
音の響きだけで名前を決めました。モデルはもちろん江戸。噂と火事と喧嘩をこよなく愛する、国でもっとも賑やかな場所、という設定です。
・和浪
和歌山の和と、和歌山の西と南に広がる海をイメージして命名。小雪と朱鷺が会ったのは、淡嶋さんの総本社がある加太をイメージした、西の小さな漁村という設定です。
ちなみに、和歌山城から少し離れたある地域には実際、被差別階級の人々が住んでいたそうです。数十年前までは、その地域の出身というだけで家の敷居を跨がせてもらえなかった――――なんて話もあります。
・隠神
モデルにした熊野は古事記で、隠野、隠国といった記述で表現されているので、そこから命名。よくわからないけどとりあえずすごい力と権威をもった巫覡集団、という認識です。
・野土
野を歩く者、ということで命名。
実際、決まった住所をもたず、各地を転々としている者は無宿者として、あまりいい扱いをされなかったりしていたそうです。特に地方の村なんかは、裕福なよそ者として命を狙われる話があったり……。あれです、六部殺し。
・土垢
身分制度の底辺にいる、被差別階級の土にまみれた卑しい者、という雰囲気を求めて命名。
モデルはもちろん、江戸時代の卑賤な者とされていた二つの身分。分けるとややこしくなるので、物語では一つの身分にしました。
作品中の説明は、大体この二つの身分の内情を参考にしました。
人物紹介は長ったらしいので、「鬼恋~」と同様、今回もここで一端区切ります。