幸運の女神には前髪しかないと申しますが、「季節」の前髪もかなりなぱっつんに思えます。
いわゆる前髪は「旬」にあたり、旬の食材はそれなりに値が張り、お洋服も正価ではちょっと手が出ずバーゲンで五割七割になりやっとこら食指が動く。季節を描いた物語を思いつくも、書き上がる頃にはいくつか季節をまたいでいる(季節どころか五、六年、ネタだけあっためている七夕の話もあるんですが)。
そんな「風流」とは縁遠い日々を送っているのですが、このたび夏が終わるぎりぎり前に小話を書き上げました。辛うじて夏の尾を掴んだといいますか。いやまあ、もちろん立秋は過ぎてるんですけど。『蝉時雨に沈む』とゆう作品になります。良かったら読んでやってください。
唐突ですが私にとって夏の花といえば、向日葵でも朝顔でも百日紅でもなく、ノウゼンカズラという花だったりします。あのとろけるようなオレンジ色の。肉入りミックスジュースといった風合いの。私の住む地方では、夏になると家々の壁やら木やらに生い茂るのですが、育てられている感ゼロ、むしろ侵略してやる気満々といった感が強く、その勢いに圧倒されることしばしば。きれい、美しいという前に、夏の暑さの化身に見えてしょうがないのです。
ノウゼンカズラを丹精込めて育てているんだ、という方がいたら大変申し訳ないのですが。実際どうなんでしょう。
さて、いわゆる一般的な夏休みも残すところあと一日。一か月だろうが二か月だろうが、どれだけ長くても、休みははかないもの。夏の尾を心穏やかに見送られますように。
あ、『蝉時雨に沈む』にはノウゼンカズラは出てきません。書こうと思ったんですけど、難しかった……また来年か再来年。