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カラーパ(色霊)

 カラーパ(色霊)とは、僕の小説に出て来る色の霊体です。そして、冥鳴りは世界のありとあらゆる場所で同時に聞こえる特殊な音のことです。
 僕はこの二つの現象を水や空気のように当たり前のように描くことを目標にしていました。水や空気についてそれが何なのかいちいち説明することがないようにカラーパや冥鳴りについても説明を省いてきました。しかし、当たり前の者を改めて説明したり掘り下げることで異化効果が生じることもあります。だから、カラーパや冥鳴りについて説明する描写を工夫したいです。

『兎雲』
 晴天のある日、迷子の雪兎みたいな雲が空の真ん中に孤立しています。その小さな雲はどんなに強い風にさらされても全く動きがありません。その小さな雲はどんなに強い日差しに晒されても散る気配がありません。
 ふいに、隕石が落ちてきてその小さな雲を貫きました。しかし、その小さな雲は穴一つ空かずにずっと同じ形と白色を維持し続けているのです。
 これは雲ではありません。これは、カラーパです。空間を彩る霊体、それこそがカラーパです。

 『海底都市”ネッター”の伝説』
 昔、ある偉大な冒険家が海深くまで潜っていきある海底都市を見つけました。その海底都市には信じられないほど美しい宝石がありました。冒険家はなんとかその宝石を持ち帰ろうとしたのですが、ダメだったそうです。
 主人公は、この冒険家に憧れて海底の宝石を探す航海に出かけました。主人公は千の海に潜って海底都市を探しましたが結局ダメでした。夢をあきらめた主人公は故郷に帰りました。
 ある日、故郷で大きな地震が起きて大地が割れました。大地はまるで空に斬りつけられたみたいに裂け血を噴きだしています。その血が乾ききった後、大地の裂け目に美しい色霊が現れました。その色霊は陽の光に当たるとまるで宝石のように輝くのです。
 「そうだったのか」
 主人公は顎を大きく開けて驚愕しました。なぜなら、その宝石みたいなカラーパがあの冒険家の手記に記されている秘宝とそっくりだからです。
 「そうか、ネッターはわたしの故郷だったんだ!どうりで、宝石を持ち帰られないわけだ。宝石は色霊(カラーパ)だったのか!」
 主人公はそう言いながら大地の裂け目にあるカラーパを手でつかもうとしました。しかしそれは、まるで色形のある空気みたいに何の手ごたえもなく主人公をすり抜けていくだけでした。

『色霊都市』
 まるで、自分が小人になって本棚のある層を歩いているみたいなそんな縦に長い建物が並ぶ街だった。主人公は酷く喉が渇いて「ごめんください」とある黄色い建物に呼び掛けた。しかし、返事はなかった。まるで、その建物は金歯みたいに他から目立つ色をしている。主人公はこんどはドアをノックしようとした。しかし、主人公のこぶしはドアをすり抜け建物の中に埋もれていったのだ。
 「うわああ」
 なんだか、建物にこぶしを食べられたみたいな錯覚に陥手主人公は慌てて手を引き抜いた。この主人公はおっちょこちょいで、手を引き抜いた勢いで体勢を崩し前のめりに倒れたのだ。主人公はこぶしどころか体全体を建物の中に飲み込まれてしまった。主人公は目の前が真っ黄色になった。「うわああああああ」溺れたときみたいに主人公は取り乱した。

 「落ち着きなさい。その建物はカラーパです!」
 老人らしい低い声が冷たい雨みたいに主人公の恐慌を鎮めた。
 主人公は黄色い空間から声のする方向へと抜け出していった。すると、主人公はあっさりと元の通りに戻ってこれた。よく見るとこの建物は窓もドアもなかった。ドアだと思い込んでいたのはこの黄色いカラーパのわずかなでっぱりの部分だった。
 「この街を立てた連中がいたずら好きでね。カラーパが建物に紛れ込むようにしているんだよ。わざわざ家の形まで縦長にそろえてね」
 老人はあきれたというようにそう説明してくれた。主人公は「なるほど」と感心しながら気を失った。ちょうど、体の水分が枯渇しきってしまったのだ。

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