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冥臓


『冥臓』

 人間やその他の生物には冥臓と呼ばれる霊体の臓器が存在し機能しているというアイデアを考えました。


 冥臓の機能や働きについては三つのアイデアがあります。

 一つは冥臓は身体と精神を結ぶ機関であるということです。これは心身二元論を前提にしたアイデアです。具体的に次のような描写が考えられます。

"冥臓に濾された新鮮な血が心を明るく満たしていく"
"キノエの冷たい態度でチマキの冥臓は萎んでしまった。"
"肺に吸い込んだ冷たい空気が冥臓まで送られて心までも凍らせた"


 二つは冥臓が霊体であり、臓器としてはあり得ない派手な運動や奇抜な機能を果たすというアイデアです。具体的には以下です。


"キノエは腹を殴られて口から冥臓を吐き出した。それは砂まみれになって縮んだ。"
"冥臓が急に発火して肺や腎臓など周囲の臓器を火傷させた"
"暴走した冥臓が肺を噛みちぎり甲は呼吸困難になる"

三つ目のアイデアは"心"という概念を物語から消して冥臓がそれを代替するというものです。これは心身を一元化することを意味します。
 例えば以下のようになります。
 "彼方にひどいことを言われてリラの冥臓はまた真っ暗になった。"
 "将来への期待に冥臓が膨らみ他の臓器を圧迫した"
 "「ありがとう」と言われてキノエの冥臓は踊り体内のあちこちにぶつかって痛いぐらいだ"

今思えば"心"という概念は本当に上質なフィクションだなと思います。貨幣・心・時間の三つが人間が発明した3大ファンタジーだと感じます。

"心"という言葉は少し身体から隔絶した概念になってしまっています。だから、"心"の意味を改竄してもっと身体的にしてもいいのかもしれません。例えば心に血が通ったり 心が他の臓器を傷つけたり 心が特別な分泌物を心臓に送って体を健康にしたりなどです。

 心を受容するだけでなく働きかける存在にするのです。

最近五臓六腑を動かすような表現が少なかった気がします。もっと内蔵に訴えるような文章が僕は好きです。

 例えば
"肺が好意で満たされて口から漏れる言葉の一つ一つが褒め言葉しかなかった"
"空腹のあまり胃が喉元まで登ってきた"
"心臓が家出したみたいに身体が気だるい"
"10年かけてこの悪意を腎臓が濾し落としていった"
"血を飲んで明るくなった冥臓が周りの臓器を照らした"

"崖から足を踏み外し心臓が喉元まで浮かび上がる"
"すごいスピードで誘拐されて心臓は置いてけぼりにされた"



冥臓の働きとその根源についてアイデアを広げていきます。

冥臓の働きについて三つ思いつきました。
一つは冥臓は霊的物体や霊的存在の宿であるというアイデアです。例えば鈴虫の幽霊が冥臓にいつのまにか泊まっていて、その人はいつも腹から鈴の音が聞こえます。

二つは冥臓は他の臓器に働きかけるというアイデアです。たとえば、驚いた時冥臓が血管をぐるぐる巡って肺や心臓を蹴り付けます。他にも冥臓が大きく膨らんでその人は太っちょになってしまったり、冥臓が空気よりも軽くなってその人を浮かび上がらせたりです。冥臓が身体に物理的な影響を与えるのです。

3つ目は冥臓は相手の表情などコミュニケーションから栄養を得ているというアイデアです。例えば美人にウインクをされると喜んだ冥臓が跳ね上がって身体が勝手にジャンプして天井に頭をぶつけます。睨まれると冥臓に穴が空いて血がダラダラ垂れてきます。握手をすると冥臓は暖かくなって他の臓器を照らします。

 『冥臓』

 物語の中で不思議な現象や事物が発見されていく過程を描きたいです。それが、さも元から存在していて読者も作者も気付いていなかっただけだ。そのように、仮想の事物を当たり前のこととしてでっちあげたいのです。例えば以下のような登場人物の独白を考えました。


りんりんりーん。
 僕の胸から鈴虫の鳴き声が聞こえる。冥臓に泊まっている鈴虫の幽霊が夜毎になくから心臓も肺も音楽中毒になってしまった。
 そうだ。冥臓を最初に見つけたのは誰だっただろうか?たしか、丘に住んでいるある羊人だった。その羊人は友達がいなくていつも膝を抱えてうずくまっていた。そんなとき、聞こえたんだ。鈴の音が心臓の拍動に合わせて全身に廻った。それは、血で聞こえる音だった。
 そして、羊人は冥臓に関する本を書いた。その本を読んでみんな気づいた。ぼくたちの身体には心臓や肺や腎臓や肝臓、脾臓いがいにもう一つの六番目の臓器があるってことに。それは、目に見えない透明な霊体だから気づかなかった。でもそれは心臓から血を受け取って僕たちの身体で確かに生きているんだ。
 冥臓の位置は人それぞれだ。ぼくはだいたい心臓と重なるあたりにある。人によっては踵にあったり、お尻にあったり、喉にあったりする。でもこれはいわば臓器の幽霊だから位置はあんまり関係ないんだ。冥臓が浮浪者みたいに体内を彷徨うことだってあるんだ。
 誰かが微笑んだ時、冥臓が明るくなる。ほら、たまにあるでしょ?体の中で眩しく感じること。まるで、胃の壁に未熟な目が開いたみたいにお腹が眩しく感じること。あれはね、冥臓の働きの一つなんだ。

 冥臓にはよく幽霊が止まりに来る。今僕の冥臓に泊っているのは鈴虫の幽霊だ。この前は魚の幽霊だった。冥臓から逃げ出した魚の幽霊が跳ねて胃を叩いたから、胃は魚が苦手になってしまった。それからというもの僕は魚が食べられない。冥臓というのはこんな感じだ。”


 冥臓についてさらにアイデアを深めます。
 例えば、食事が胃を通るか冥臓を通るか選択するというアイデアを考えました。
アイデア1
 冥臓による消化

  ”登場人物が魚を食べる。それは歯にかみ砕かれて舌で丸められて喉を通る。のどは肺へ続く道と、胃へ続く道と、そして冥臓へ続く道の三股になっているんだ。食べ物が肺に入ると当然むせ返る。胃に落ちるとそのまま消化されて登場人物の栄養になる。そして、冥臓に落ちるとそれは跡形もなく消える。冥臓に落ちた食べ物が一体どこに消えるのか?それはまだ解明されていない。昔、ある泥棒が宝箱の鍵を呑み込んだことがある。それは運悪く冥臓に入った。泥棒は苦い汁を飲んだり喉に指を突っ込んだり、腹を裂いて胃の中をまさぐったりしたけど鍵は見つからなかった。冥臓がカギをどこかに消したんだ。けどそれがどこなのかわからない。”
アイデア2
 血を飲み干す冥臓
 ”恐ろしい病気。冥臓が暴走して体内の血を全部飲み干して人間を死なせてしまうっていう恐ろしい病気がある。これは、本当にごくまれにしか起こらない。”
アイデア3
 冥臓に住む菌
 ”冥臓には特殊な菌が住んでいる。その菌は血を黄金に変換する作用がある。だから人はたまに黄金を吐き出す”

アイデア4
 死なない冥臓
 ”人が死んで全機能を停止しても冥臓だけは機能を停止しない。”

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