えー、皆さんゴールデンウィークは楽しんでますか?
わたしは仕事がらみで、すごく飛び飛び休みになっております。
とあるノートでのコメントのやり取りでお題を思いついたとのことで、匿名希望さんからお題パートの提案がありました。
ただ飯テロと微妙に絡まない、なじまないため、本編にのせることはできないのでここでの掲載になります。
匿名希望さん、いつもありがとうございます!
なお、お名前を拝借していますが、実在の人物とは無関係とのこと。
あくまでフィクションとして楽しんでくださいとのことです。
そして先に謝っておきます。
いろいろごめんなさい!
暇な人はどうぞ暇つぶししていってください。
あと、前半パートの投稿は随時受け付けております。
アカン奴は改稿の上でノートにあげます。
番外編『フタヒロ殺人事件』
五月三日 午後4時。
五反田にある中華料理店『珍宝楼』の二階にて、円卓会議が行われていた。
○
「今日、みんなに集まってもらったのはほかでもない。フタヒロ氏が殺されたのはもうみんな知っていると思う」
最初に発言したのはシャーロック・ホームズ風の衣装に身を包んだ女性だった。
「そうそう。みんな初対面だったね、わたしの名前は『幽鬼』。オフィス幽鬼の社長と言えばわかるかしら」
一同の目が一斉に集中する。
テーブルに肘をつき、白手袋を組んだ手に顎を乗せている。
どういうわけだか、顔が赤く、すごい量の汗をかいている。
○
「殺されたて、そな大げさなァ。アカウントBANされただけやないのォ」
ちょっと怪しい関西弁でしゃべる中年の男。
右目には真っ黒な眼帯、見事に禿げ上がった頭、そしてシャツが出ただらしない恰好。
「おっと自己紹介がまだでしたな。わいのペンネームは『出歯ナシ』。まずはビールでも飲みましょうや」
あ。ワインじゃないんだ……という周囲の落胆もまったく意に介していない。
もっとも唇からのぞく立派な前歯だけは期待通りだった。
○
「それは、殺されたのと同じことやわ。わたくしたちにとって、アカウントをはく奪されるのは殺されることと同じどす」
外見は銀座のスナックのママといった感じ、高そうな和服を着こなしている。
「あ。おわかりでしょうが、わたしがあの『鈴月』どす。あ、ウェイターさん、鉄槌丼をひとつお願い」
鈴月さんは店員を呼び止めて優雅にオーダーを告げた。
「その、ウチは中華で、そういうメニューはヤテナイあるよ……」
「分かんなかったら、リュウジの動画で調べて作って頂戴。そろそろアップされてるはずどす」
○
「問題は誰が運営に通報したか、ってことですよねぇー」
ちょっと唇を尖らせ、マイペースで黙々と折り紙を折っている男が間延びした口調で確信をつく。
うん。これは愛宕さんに違いない。
「あ。ボク『愛宕』でーす。ボクは通報もしてないし、危ないコメ返信もしてないですよー」
やっぱり。と一同がホッとため息をついた。
同時に危ないコメ返信の言葉に動揺するものがチラホラ。
○
「コメなんて関係ないっしょ? 今回のお題だって別に害がないぺさ」
ドンと空になったジョッキグラスを机にたたきつけたのは、セーラー服に身を包んだ女性。
もっとも年齢オーバーなのは誰がみても明らかだったから目を合わせないようにしていた。
「あ。自己紹介がマダだったよね! 『風ー林』ですっ! ねぇカラオケ行かない?」
○
「カラオケはアトよ、フーちゃん! アタシも自己紹介しておくわね♡ あたしが有名な和音よ、ワオーンッ♡!」
……この時代、LGBTは特にセンシティブな問題である。そういう描写・言葉には特に注意を払う必要がある。
したがって偏見のないように外見のみの描写にとどめておきたい。
彼女・彼の顔は、剃り跡の残る青白い頬に、男性らしいがっしりとした輪郭、極太の眉毛で構成されている。
そのキャンバスに幾重にもカラフルな化粧を塗り重ね、実に個性的な印象を与えている。
「そうそう、関川さん、ハーフ&ハーフに残酷・暴力・性描写の三点レートセットつけてたからそこは大丈夫だったと思うけど」
○
異常が……以上が円卓会議の構成メンバーのすべてである。
そして幽鬼が再び口を開いた。
ちょっとマーボ豆腐を食べるためである。
「思ったより辛いなココの……そう、真実はいつもツライものよ。あたしはこの中の誰かが通報者だと推理している」
「またまたぁ、そんなこと言って幽鬼ハンが犯人チャイまっかー? 大汗かいてはるし」
「そ、それは、このマーボー豆腐が辛いせいでだな……」
「ねぇカラオケ行かないのぉー?」
「はぁ? これが鉄槌丼? 話にならないわ、シェフを呼んで頂戴」
「セキカワさん来てないの? アタシ彼に会いに来たのにィ……さ・び・し・いぃー」
○
一気に混乱する円卓会議。
それでなくともまとまりのない烏合の衆であった。
当初の目的もすっかり失せようとしていた。
その時である。
「お待たせしました。シェフの関川です」
シーンと緊迫した空気が張り詰める。
「みなさん初めまして。そして一部始終を聞かせてもらいました。そしてわたしを殺した犯人が分かりました。その動機もね」
まさかの本人の登場であった。
○
「あの、コレ、飯テロ編の番外編じゃなかったでしたっけ?」
恐る恐る声をかけたのは幽鬼。
一同もゴクリと唾を飲み込んだ。
こんな状況から、どんなどう飯テロに絡めるのだろう? どんなオチにする気だろう?
事態はますます混乱していく。
だが関川にはこの状況を打開する秘策があったのだ。
○
「もちろんさ。この後、犯人には犯行の動機と飯テロにふさわしい感想を語っていただく」
「なんや恐ろしうなってきた」
「あたしもや、書ける気がしまへん」
「ハーフ&ハーフ史上、最高に続けづらい問題編だろう。わたしも自分が何書いているのか分からないくらいだ」
うんうん、とうなづいている一同。
「だが飯テロのテーマだけは貫かせてもらう。出でよ 霧野君!」
○
ドン!
と扉が開かれ、赤い鞭をもった女性が現れた。
「さぁ、どこのどいつだい? 関川さんを困らせている悪い子は?」
ビシッ!
と鞭が幽鬼のマーボー豆腐の皿をたたき割る。
身をすくめる一同。
それをブタを見るように平然と見下ろしている霧野女史。
「あたしの鞭の前で嘘はつけないよ。覚悟しな!」
○
「そういうことさ。これから君たちにご馳走してあげよう、霧野君の『フルコース』を!」
どや。
関川の目にはそんな愉悦の表情が浮かんでいた……
⇒ to be continued