んなことやってる場合じゃないというのに、外は嵐だし気温が上がるし頭痛は酷いしうまくいかないし、クサクサしてるときは読書だべ、ということで月村了衛『ガンルージュ』を読みました。
面白かったーのでネタバレ注意ー。
ざっくりいうと頭を使わないでいい現代アクション小説の部類ですね。文春文庫版は2018年の発行なり。なにやら表紙の絵がいい意味でパルプ感あって好きです。
物語はPTA会長にしこたま叱られている女教師からスタートです。女教師はメジャーデビュー手前で解散したロックバンドの元ボーカルですが、舞台となる群馬県はみなかわ町では誰やねん状態。もう一人の主人公は主婦で、中学生の息子と二人、母子家庭。
あるとき、息子くんが幼馴染ちゃんと青春しに出かけ、韓国の特殊部隊が要人拉致をしている現場に出くわしてしまいます。
理由はともかく探しに出かけた主婦は偶然にも教師と合流、断るけどガン無視でついてくる教師に呆れつつ現場で死体を発見するのでした。
主婦は死体から拳銃と予備弾倉を回収、教師にその場を任せて山を降りフィールドストリップしつつ状況把握、公安に電話をかけるのです。
そう、奥様は元・公安にしてFBIのHRT(人質救出チーム)訓練で最高成績を収めたコンバットかーちゃんだったのです!
かーちゃんは息子さんの救出に向かいますが、道中で公安に連行されかかる女教師を発見します。
すると女教師、警官に肘鉄くれてしばき倒す始末。なんと、女教師は別れた恋人が元・公安で日体大武道科卒で元ソフトボール部でヤンキーでやさぐれた三十路すぎで巨乳だったのです!
主婦は拳銃と出刃包丁を、教師は金属バットと根性と悪運と勢いを手に、口喧嘩をかましながら人質救出に動き出す!!
……ハーブか何かやっておられる? というテンプレなツッコミをしておきましたが、ハリウッドのよくあるアクション映画設定ですよね。私は大好物ですし、そこまで変わった設定だとも思いません。むしろ安心感すらある。
文体は三人称一元の主婦、教師、敵の三種類を使い分けますが、教師の文体が超絶に軽くていい具合にバカでとても好きです。一方で主婦と敵はゴリゴリの特殊部隊なのでガッチガチのハードです。冒頭の教師の文体に引っ張られると、やや読みにくく感じてしまうかもしれません。私はどっちも好きですが、主婦ももうちょっと主婦な思考が紛れ込んでくれたらもっと良かったかもです。
お気に入りポインツ!
教師ちゃんです。ロックバンドの名前が『マッドアリス』というのもいかにも内輪もめで解散しそうですし、戦い方に戦略性もへったくれもないのが好きです。特にすっ転んだ結果として一人を間抜けな格好で断崖から叩き落とし、もう一人が銃を構える前に突っ込んで金属バットでタコ殴りにするところ。特殊部隊員との原始的なドツキ合い。銃を向けられたら勝ち目はないからそんな暇もないほどドツキ回す。その時の内心のセリフ。
コノヤロ、コノヤロ――。
ドツキ回すのは正義。この主人公、始終こんな感じなのでお気に入りです。
気になるポインツ・ワン!
敵の特殊部隊なのですが、教師にやられちゃうのはまあ別にいいんです。ブランクありまくりの主婦にやられるのも。お約束ですから。
現場で居合わせた中学生をさらうのもお約束です。理由は誘拐目標が足をケガして歩けないからお前たちで運べ。まあいいです。お約束です。
まず主婦+教師に三人やられます。
次に主婦に三人、教師に三人やられます。
敵が吐露します。残っている仲間は九人で――――多くない!? いくらなんでも多くない!? 足したら20人になっちゃうし出くわした中学生なんぞサクっとコロコロして自分らで運んだほうが早くない!? 敵は多いほうが楽しいから仕方ないですね!
気になるポインツ・ツー!
ベレッタのM8000クーガーFとウージー・プロとグレネード付きM4が出てくるんですが、こいつら装備の統一感どないなっとんねん2018。韓国の特殊部隊がなんで……と思うものの実際どうか知らないしどうでもいいですね。
てかM8000とかロータリーバレルとかいうマニアック銃を信頼性重視しそうな特殊部隊がというのもどうでもいいですね。
まとめ。頭カラッポ型アクション小説として大変によろしい出来です。文春文庫ってこういうのも出しているんですね。知らなかった。気になるポインツでも上げましたが、主婦の設定がデイトレもしてたりであんまり主婦じゃないのが気になるところ。もうハリウッドのワカリヤスイ・アクションを小説に落とし込んだって感じなので、お約束なオチも含めて私はとてもとても好きです。
てか解説に同作者の『コルトM1851残月』は江戸の町でコルトをぶっ放すノワール小説ってあるんですが、ケレン味すごすぎません? 好き!
明日のラッキー思いつきケレン味アクション設定
『真夏の山中、サバイバルゲーム・イベントの終了間際、近隣のダムから爆発音と銃声が谺する。すわ何事かと急行した準優勝チーム『第一食うっていってん団』は事件を某国のテロと看破し、通信回復と抵抗の必要に迫られる。そう彼らは元および現役の第一空挺団所属自衛官だったのだ。手元にあるのは電動ガンのみ。仲間は優勝チームのド素人『SAS(睡眠時無呼吸症候軍団)』のみ。無茶無謀の国土防衛がいま始まる!』