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読んだ

軽快なユーロビートを流しながら赤城と榛名で出力不明キュウリと出力不明ナスによる精霊馬アップダウン二本勝負に白熱していたら小説を書く時間を取れませんでしたが、墓石の前で書いたのも含めてなんとか昨晩というか今日というかウカガイ様を書けました。

なので、もうXとか言うのダルいしツイッターで通しちゃいますが、あの人類の嫌なところばかり目にする動物水族博物美術館の公式だけが救いな世界でバズるまで存在を知らないでいた彬子女王『赤と青のガウン』を読みました。
面白かったー!! ので、ネタバレ注意ー!!

本作は元々こだわりにこだわったハードカバーで、それがどういう経緯かネットでバズって文庫化が決まった本だそうです。著者名で分かる通り皇族で現在唯一の女王(という格? 称号?)に該当する名字のない、あるいはいらない、彬子さんによる著作となります。さんだと不敬か? そうです。須賀敦子の著作になんともいえないものを感じたがために、もう文句のつけようがないやんごとなき世界で中和ならぬペイントイットキングスしたのです。この場合はクイーンですけれども。
……というか発表済みの論文はおそらくプリンセスアキコオブミカサで登録されているはずですが、現在はクイーンアキコオブミカサになっているんでしょうか。気になる。

あ、以下ややこしいので不躾ながら敬称略かつ尊敬語等は省略して記述します。


さて、タイトルにある赤と青のガウンというのは英国オクスフォードの卒業式に着るガウンのことのようです。何を隠そう、私も黒いガウン(大学からの貸出)なら着たことがある身ですから学帽の投げ方まで心得ています。投げさせてもらえませんでしたけど。あ、海外では大学出でガウンに学帽ですが、日本の場合は大学院修士から黒ガウンに黒学帽になるようです。つまり日本の修士は向こうの大卒くらいの()。いま思えば勝手に赤と青のガウンを発注して一人だけオクスフォードを纏うという分かる人にだけ分かる笑いを取るべきだったと若干の後悔が生まれました。なんてことを。

まず冒頭、ときは2011年、5月28日、彬子女王がDR.Phil.すなわちドクターオブフィロソフィー(哲学もしくは教養=課程博士)を与えられ、学位授与式に臨む直前から始まります。
……冒頭から親父さんと御本人がカッケー!
おりしも東日本大震災の直後であり、彬子女王は学友と一緒に式に出れないなら別にいいから郵送しろといい、父は父でそれまで何度も衝突していながらも「一生に一度なんだから行って来い。雑音は私が文書だすなり会見すっから」と答えます。
パワーオブロイヤル!!
率直かつ素朴な文体で皇族あふるる。つよい。
この冒頭だけでこれはいい意味でライトに楽しめるエンタメに満ちていると確信しましたね。ライトに楽しむのが不敬と言われる危険性はなくもないですが。

文体は……意外に思われるかも知れませんが、質実剛健なハードタイプです。柔らかいというより軽いですし、硬いといってもガチガチではないんですが、文章よりも内容で円味を伝えてくるタイプです。伝われこの感じ。
さすがだと思うのは皇族だからか父や母や親戚友人に対する言葉遣いの抜け目なさというか品位。品位ですこれは。ここまでサラリと敬語を使いこなしている文章は、これまで私は見たことがないと思います。編集さんが職業生命を賭けて頑張った可能性も無きにしもあらずですが、だとしても素晴らしいです。



ではお気に入りポインツ1!
お父さん。寛仁親王殿下の娘に対する圧が一般家庭でもありそうなノリで笑いました。御自身もオクスフォードで学び栄誉ある八人乗りボートの船員に選ばれたこともあり、しょっちゅうお前はオクスフォードに行くのだと唱え続けていたとか。当事者でなければ分かりませんが、うっざ的なハイハイなあるあるですよね。可愛い。それをそうなんだなあと受け入れる彬子女王殿下となると私はそこまでの境地には至れませんでしたけど。

お気に入りポインツ2!
入院生活! 冒頭、学習院に入ることを入院というという話がでてくるのですが、私も大学院に入ることを入院と読んでいたので親近感が爆発炎上しました。でもたぶん、日本国内の大学院生およびなんとか院卒の3割くらいは入院、退院って言ってると思います。

細々あげているとキリがないくらいゲラゲラ笑えるし分かるよってなるので、ここからは真剣に考えないとですね。


お気に入りポインツ3!
彬子女王殿下『ごとき』感覚。位置的には女王陛下のいとこの子どもという、遠いっちゃ遠いけどそんなんでいいの!? みたいなアレが衝撃でした。まあどこの国でもそうなのかもしれませんが、須賀敦子のお金持ち感と上がいる感とはさらに一線を画す現実感を突き放してくる凄まじさです。ラノベか。御本人殿下であらせられた。でもイギリス来たしとりあえずフィッシュアンドチップス食ってくか感覚なのは良い意味でそれくらいしたいよね感があり……このエッセイ上手いな!?

お気に入りポインツ4!
皇家メシ。多方面に気を遣って書かれるに決まっているであろう彬子女王殿下をしてあんまり美味しくないと言われる英国メシ。対抗するために御自ら拵えられましたおうどん。マッシュルームとプチトマトをオリーブオイルで炒め冷水で締めたおうどんに……ここら先は本でご確認を。
他にもいくつか皇家メシについて書かれていて、それが美味しそうだったので、彬子女王殿下は皇家メシについてのエッセイ漫画原作をなされるべき。

お気に入りポインツ5!
私がぼんやり知りたかったオクスフォード学食に存在するハイテーブルの細かな仕様とか学位の取り扱いとか、おそらく小説に使う場面はないだろうけど知りたかった細々とした情報が嬉しかったです。


ここから気になるポインツ!
正直これといって気になるところがないんですが、気になるところがなさすぎるとそれがまた気になるというのもあるあるですよね。ただまあ、立場を考えると……ねえ。


まとめ……皇族であることを抜きにしても、とても面白いオクスフォード留学記でした。
なにより非常に読みやすく、そこらに生息していて喫茶店でばったり出会ったから長話しちゃうくらいのノリを感じたのが驚愕です。ある一定ラインを超えるとスノッブを感じなくなるのかもしれませんね。
昨今の英国事情やら(英国)大学院事情、皇家メシなどを知りたい方には特におすすめできますし、そうでなくても近所の大学院留学したお姉ちゃんの話くらいの感覚で読めるので暇つぶしにもよろしいかと。

余談ですが、この感想を書くにあたってCiNiiで彬子女王の論文検索をしたのですが、プリンセスアキコオブミカサで登録されておりました。タイトルはウィリアム・アンダーソン・コレクション再考なんですが、カタカナ名を先に見てしまったがために『ウィリアム アンダーソン コレクション サイコウ』のサイコウを最高と誤読し大英博物館で万歳している彬子女王殿下を想像してしまい恐ろしく不遜かつ身勝手な親近感をおぼえたのち違うわ再考だわとなったことをここに謹んで謝罪いたします。いやでも本文を読んでいると彬子女王殿下は人目のないところでそういうことやってそうな気配を感じてしまうんですよ。本当ですよ。



明日のラッキー思いつき嘘知識
『昨今の流行を受けてオクスフォード学食にも食券式のラーメン屋が入っている』

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