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【魔導士物語】第十五話「逃亡」を掲載しました

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そんなわけで、第十五話です。

マグス大佐とカメリア少将は、若い時から何かと縁がありました。
特に、大佐が独立遊撃大隊を一から立ち上げた際は、カメリアは大佐の片腕として苦楽を共にしてきたという経緯があります。

ですから、大佐はカメリアにとって上司である以上に〝戦友〟でした。
今回の話でも、少将であるカメリアが、大佐(名目上ですが)に敬語を使う一方で、遠慮なく「馬鹿」呼ばわりをしているあたり、二人の関係がとてもよく表れていると思います。

マグス大佐の方も、カメリアは部下である以上に女同士の親友であり、美味しい食事やコーヒーを用意してくれることに甘えたりもしています。
それだけに、カメリアが結婚したと聞いた時にショックを受けたのです。

前回割愛した、アメリアとパン屋のご主人との馴れ初めです。
彼女はそのパン屋(司令部から下宿先に帰る途中にあった)が好きで、よく通っていました。
特に好きなのが、干したブドウとクルミ、それにハチミツを練り込んだネジネジのパンでした。

仕事を終え、いつものようにパン屋に寄ったカメリアでしたが、あいにく目当てのネジネジパンは売り切れで、彼女はがっかりして何も買わずに帰ろうとしました。
パン屋の主人は、もちろんカメリアのことを覚えていましたから「あんたの分くらいだったら、これから焼くから少し待ってくれ」と言います。
〝少し〟と言っても、一時間くらいかかるので、カメリアはご主人の住居である店の二階で待たせてもらうことにしました。

パン屋の主人は十年前に妻を亡くし、子どもはもう独立していましたので、独り暮らしでした。
家の中は、男やもめにしてはきれいに片付いていましたが、たまたま流しに食べ終わった食器が置かれたまま、そのままになっていました。
初めは単に性分から(彼女はきれい好き)食器を洗い始めたカメリアですが、台所に立つとうずうずと腕が鳴ってしまいますw

カメリアはその場にあった食材で、勝手に料理を作り出し、パンが焼き上がるころには立派な夕食を用意し、呼びに来たご主人に無理やり食べさせました。
その間の店番は、カメリアが務めたのです。
これがきっかけとなって、カメリアはたびたび上がり込んで食事を作るようになり、そのうちに何となく何とかなってしまった……というわけでした。

さて、次回はカメリアの話からいったん離れ、エイナとマグス大佐の話に戻ります。どうかお楽しみに!

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