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【魔導士物語】第三話「里帰り」を掲載しました

https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/16818023213570528176

そんなわけで、第三話です。

前半はシルヴィアの一級召喚士(=国家召喚士)昇格に関する実地検分の続きです。
魔導院審問官のお爺ちゃんたちが興奮していますが、それはカー君の飛行能力が龍のそれと同じ性質だからです。
カー君も龍も、翼で飛翔するにはもの凄い翼面積のある翼が必要で、それを動かす筋組織も巨大なものとならざるを得ませんが、実際には小さな翼しか持っていません。

要するに、両者が保有する翼では、物理的に飛ぶことは不可能で、この辺が鳥型幻獣のロック鳥と大きく異なります。
分かりやすく言うと、カー君と龍の翼はイオンエンジンのようなもので、プラズマイオンの代わりに、体内に蓄えた精気(生体エネルギー)を噴射して飛んでいるのです(だからほとんど風が起こらない)。

彼らがもともと住んでいた幻獣界は、通常の動植物以上に霊的な存在が大量に棲息しているので、精気に満ちた世界となっています。
そのため、巨体の龍でも精気を吸収し放題で、自由に飛び回ることができます。

エイナたちの人間世界は、それに比べれば精気が少なく、龍は短距離しか飛ぶことができませんし、しばしば幻獣界に帰って精気を補充しなくてはなりません。
カー君は龍に比べると遥かに身体が小さいので、比較的自由な飛行が可能となっています。

なお、シルヴィアが少尉に昇進したのは、国家召喚士は任官時点で少尉になるからです。

後半は、題名どおりエイナの里帰りの話です。
彼女は一か月以上(期限は決められていない)の休暇を与えられましたが、これはマリウス参謀副総長の裁量です。
王国にとっても、爆裂魔法の取得は軍事的に決定的な意味を持つため、その可能性を探るとあっては、新人准尉の一人をひと月遊ばせるくらい、痛くもかゆくもありません。

さて、故郷に帰ったエイナは、父親の遺品を探すことになります。
隣家のヨナーシュは、村の中でも富裕な(あくまで比較した場合の話)農民です。
ヨナーシュも妻のマルチナも筆舌に尽くしがたい努力をして、やっと人並みの生活を手に入れた苦労人です。

夫妻はろくに文字も読めない無学者でしたが、子どもたちには教育が必要だと考え、三人の息子はちゃんと小学校を卒業しています。
と言っても、年に三か月程度、親郷の小学校に通うだけで、あとは村にやって来る巡回教師に教えてもらうレベルです。
それでも、ちゃんと読み書き計算はできるようになっていますから、息子たちは将来の肝煎(きもいり=村長的な役目)の候補と言えます。

エイナの幼馴染のオルガは貧しい農家の娘ですが、親は無理をして小学校に通わせました。
結果的に資金が続かず、彼女が学校に通えたのは三年だけでしたが、初歩的な読み書きができる女性というのは、当時の農村においては珍しい存在です。

オルガは率直に言って、小太りで狸顔ですが、性格は穏やかでとても優しい子でした。
そのため、マルチナが不慮の事故で腰を痛め歩けなくなった時、ヨナーシュはマルチナの両親を拝み倒すようにして、彼女を介護に雇いました。

オルガは性格がよいだけでなく、母親から家事もしっかり仕込まれていましたので、男所帯のヨナーシュの家では彼女を大切に扱いました。
ヨナーシュの三男ボリスは、文中でも説明されているように、いわゆる〝イケメン〟で、とても村の女子から人気がありました。
彼はよりどりみどりだったはずですが、一緒に暮らすうちにオルガの性格のよさに気づき、何より彼女の料理に胃袋をがっちり掴まれました。

二人は自然に仲良くなったのですが、最初にオルガに言い寄ったのはボリスの方で、自分の容姿に自信がない彼女は、当初ボリスを拒絶していました。
しかしボリスは諦めず、一年以上の月日をかけて、オルガの心の壁を崩していきました。
当時の田舎では親のいいつけで縁組がされ、自由恋愛は〝恥ずかしいもの〟とされていましたが、息子からオルガを嫁として迎えたいと打ち明けられたヨナーシュとマルチナ夫妻は大賛成で、山のような結納品を携え、オルガの両親に是非にと懇願したのです。

村の娘たちにとっては、これは大きな衝撃で、オルガに対して心無い陰口を叩く者もいましたが、最終的に二人は祝福されて結婚にこぎつけています。

そんなわけで、次回は父の遺品探しです。どうかお楽しみに!

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