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【魔導士物語】第五十三話「戦場」を掲載しました

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そんなわけで、第五十三話です。

今回から、しばらくネクタリウスの手記(の朗読)が始まります。
一見すると、日記のように見えますが、そのあまりに説明的な記述からして、日記と呼ぶには無理がありそうです。
これは明らかに不特定多数の〝読み手〟を意識した文章です。
しかも、今回見つかった彼の著作はエルフ語で記述されていますが、この手記だけは何故か人間の言葉(中原語)で書かれていますw

いや、そこまでやるか魔導王?
もう少し進むと明らかになりますが、内容的にも露悪趣味が爆発しております。

さて、前回で説明されているように、朗読されている手記は、およそ百年前の出来事を綴っています。
ちょうどケルトニアと帝国の百年戦争が始まったばかりのことで、この当時、軍に魔導士を制式採用しているのは、帝国軍が唯一です。
現在のような魔導士の養成機関も存在していませんから、今以上に魔導士の数は少なかったと思われます。
それ以上に魔導士の質も玉石混交で、今だったら絶対採用されないような者も混じっています。

当然ながら、魔導士を組み込んだ戦法も手探り状態で、今のように魔導士が戦いの鍵を握るような存在にはなっていません。
その大きな要因のひとつが、魔法の開発・発達が進んでいないことです。
本文中でも説明されていますが、当時の魔導士はろくな攻撃魔法を持っていません。

例外的なのがマジックアローです。これは立派な攻撃魔法で、珍しく遠距離攻撃(と言っても、射程は三百メートル程度)が可能で、かなり命中精度も高く、魔力消費も大きくありません。
ただし、威力はその辺の弓矢とあまり変わりません。魔法の優位性を示す範囲攻撃ができないのです。

なぜエルフがこの魔法を人間に教えたかというと、まさに戦場での魔法の悪用を避けるためです。
この魔法は、一対一での戦いでなら威力を発揮しますが、集団戦闘ではロングボウに劣る存在です。

そのロングボウですが、これは簡単に言うと「大きな弓」です。
弓自体の寸法がデカくて、最低でも一・二メートルはあります(ケルトニアの制式弓は一・六メートル)。
張力も強いので、引くにはもの凄い力が必要ですし、安定した力で引いて、的に命中させる技術を習得するのは大変です。
そのため、ケルトニアの弓兵は完全な専門職で、そのほとんどが傭兵です。
全兵科のなかで、ロングボウの射手は最も報酬が高く、その技能に応じて格差もつけられます。

一方の帝国軍は、弩(ど・いしゆみ)=クロスボウを採用しています。
一応、その専門部隊も存在していて、クロスボウと互角に渡り合える実力を持っています。
しかし、実際の戦場では、一般兵が持つ携帯弩(小型で張力も低い)が主力で、機動戦で威力を発揮しています。
ただ、ロングボウとまともに射ち合えるほどの力はありません。

さて、次回も戦争の続きで、帝国軍の撤退戦が語られますが、いよいよあの人との出逢いがあります。どうかお楽しみに!

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