https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/16817330661885344706そんなわけで、第四章の二話目となります。
今回もニコルの話で、前回から四年後の話になります。
高魔研での実験後、ニコルはサシャの予言どおり、軍の特殊部隊に異動となります。
これは秘密裏に結成された魔法の実験部隊で、ニコルは一年半の間に徹底的に鍛えられました。
マグス大佐もかつて一年間ほど、この部隊で訓練を受けています。
基礎体力はもちろん、特殊な方法による訓練で、もともと異常に大きかった彼の魔力量は、さらに増大しました。
爆裂魔法の実験も定期的に行われ、最初の内は魔力切れを起こしていたニコルも、やがてどうにか意識を保てるレベルにまで成長します。
これなら実戦に耐えうると判断された彼は、北部方面軍に送られました。
西部戦線行きとならなかったのは、ニコルの存在の漏洩と戦死を恐れた上層部の判断です。
地獄の西部戦線に比べれば、北部戦線は小学生の遠足のようなものです。
文中にも出てきますが、普通魔導士は大隊付となって、先制攻撃と司令官の防御に当たるのですが、ニコルはいきなり小隊を任されます。
新任の小隊長は、士官学校を出たての若者に用意される定番コースです。
ここで指揮官としての能力を試されるわけですが、その合否判定は割と簡単に出ます。
すなわち、小隊の先任下士官(曹長・軍曹・伍長)の評価です。
ニコルが指揮を執った小隊では、オイゲン曹長が先任下士官でした。
彼はニコルを高く評価し、経験から得た多くの知識を若いニコルに惜しげなく与えました。
一年後、多くの戦果を上げていたニコルは、小隊長から中隊長に昇進し、同時にオイゲン曹長も少尉となってニコルの跡を継ぐことになります。
帝国とアフマド族の関係は、農耕民である漢民族と、遊牧民である北方騎馬民族の関係によく似ています。
大事な家畜の餌場である草原を、見知らぬ連中がやってきて耕し始めたら、普通怒りますよねw
武装開拓移民といえば、太平洋戦争の前に盛んに行われた「満蒙開拓団」が頭に浮かびます。
帝国の場合は、これよりも遥かに荒っぽい連中が集められています。最初から喧嘩腰だったというわけで、アフマド族との紛争が起きるのは必然でした。
今回の話の最後に、謎の人物が登場します。
勘のいい人は、「あ、あの時の……」と気づくかもしれませんねw
ニコルの話は、あと二話くらい続くはずです。
いったいマリコフ村で何が起きているのか?
ニコルが受取る命令とは、いかなるものなのか?
なぜ黒の騎手は、一人でマリコフ村に向かっているのか?
なぜ爆裂魔法がマグス大佐の専売特許となり、ニコルの名前が消されてしまったのか?
その謎のすべてが明かされていきます。どうか次回をお楽しみに。
ちなみに、アフマド族との国境になっているクルゲ川や、トルゴル王国との位置関係などは、以下の地図で確認できます。
https://36646.mitemin.net/i636474/