https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/16818093079266450570そんなわけで、第七話です。
前半はエイナと曹長の模範試合、後半は巡回業務の実際というか、エイナの社会勉強回ですw
エイナは前回、素人に毛が生えたような新兵とはいえ、立て続けに六人を相手にしています。
曹長との立ち合いは、新兵たちからすると、どっちが優勢なのか判断がつきませんでした。
ただし、試合をしている当人たちは、エイナの体力が先に尽きそうだと分かっています。
はじめからエイナが不利なのですから、コンラッドが途中で剣を引いたのはフェアな判断です。
両者が万全な状態だったら、当初は二対三でエイナの負け越しですが、しばらくすると三対二で勝ち越しになりそうです。
エイナの実力は、新兵相手の稽古で見えていましたが、実際に対戦したコンラッドは、エイナの思い切りのよさに感心し、内心で相当喜んでいます。
後半に出てくるヨイド村は、現在では普通の村なのですが、かつては辺境の開拓村でした。
開拓が進んで、辺境と呼ばれる地域は百キロ以上も東に移動しているのです。
村では現金が不足して、肥料の購入に支障をきたしている……と説明されています。
辺境を含む第四軍管区は、シドの積極的な産業振興策で、空前の好景気に沸いています。
農村も、どんな作物であろうが飛ぶように売れる(しかも高値)ので、その影響を享受しています。
当然、増産圧力がかかるわけですが、辺境の場合は森を伐採して新しい農地を開拓すればよいことになります。
しかし、ヨイド村が農地を拡大するには限界があります。
農地が増えないのであれば、収量を増やせばいいということになります。
そこで登場するのが肥料です。
この世界の一般的な農村では、人糞、家畜の糞尿や敷き藁を混ぜて発酵させたものを、肥料として使用するのが一般的です。
これに対し、イワシ類など大量に獲れる小魚を乾燥させた魚肥は、はるかに効率がよく劇的な収量アップが期待できました(寄生虫の心配もありません)。
農業国の王国では、東海岸のカシル周辺で生産される分ではとても足りず、主として東沿岸諸国から大量に輸入されています。
ただし、この魚肥はかなり高価です、そのため「金肥(きんぴ)」と呼ばれるのが普通です。
金肥は貧しい辺境では購入できないため、使用されるのは豊かな中央平野がほとんどで、これが経済格差の原因ともなっています。
ヨイド村が現金を欲しているのは、この金肥の購入に必要だからです。
さてさて、次回は第四小隊にとって、初任務が終わる土曜日から始まります。どうかお楽しみに!