https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/16817330660323385540 そんなわけで、第三十二話です。
前半は交渉後のプリシラたち。後半は大佐側の捜索話です。
タケミカヅチとカー君が不寝番を務めることになりましたが、これはプリシラたちが吸血鬼側を完全に信用しきっていないということです。
伯爵は一応信用できるとしても、彼の眷属たちは人間を見下しており、独断で襲ってくる可能性も捨てきれないからです。
ところで、たびたび出てくる闇の通路は一種の異空間なので、距離を無視した移動が可能です。
非常に便利で都合がよいのですが、実を言うとそれなりのリスクも存在します。
伯爵はもちろん自分たちの弱点をさらすようなことをしませんから、それについては語っていません。
なのでその内容は不明ですが、激しく体力(吸血鬼の場合は精力と言った方がいいのかな?)を消耗するとか、寿命を消費するとかではないかと想像されます。
さて、黒死山の噴火については、伯爵が「妙だ」と感じているようです。
彼は四百年にわたってこの館に住んでいますから、数限りない噴火を経験しています。
そのため、噴火には必ず前兆があり、感覚の鋭い吸血鬼はそれを知覚できるはずでした。
今回はそれがない不意打ちだった上に、継続する爆発的な噴火活動が何も起こりませんでした。
実際は、マグス大佐が爆裂魔法で山頂西側の岩盤を爆砕したことで、地表近くまで上がっていた溶岩が流れ出したというだけです。
そのため噴煙も噴石もなかったのですが、高熱の溶岩が冷えた空気と接することで上がる水蒸気、爆裂魔法で破壊された岩盤が、岩石となって降り注ぎましたので、それが噴石のように見えました。
したがって、現時点ではまだ伯爵もプリシラたちも、マグス大佐が爆裂魔法をぶっ放したせいだとは気づいていません。
さてさて、役者は揃い、集合したようです。次回は何が起きるのでしょうか?
どうぞお楽しみに。
ところで、前回「このすば」のめぐみんネタにちょっと触れましたが、読者様の感想でもそこに反応した方がいらっしゃいました。
めぐみんたち紅魔族は、「名乗り」を重要視しています。
めぐみんだったら、「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操りし者!」が有名ですね。
彼女以外でも、紅魔族の名乗りには、頻繁にこの「操りし者」「極めし者」といった「し」が使われています。
私は大学で日本語文法の助詞・助動詞を専攻していたので、この「し」が引っかかって仕方がありません。
この場合の「し」は、助動詞「き」の連体形です。
「き」は古語に出てくる助動詞ですが、「結論ありき」(き)、「在りし日の思い出」(し)のように、現在でも時々使われています。
意味としては過去表現です。
つまり、めぐみんの名乗りでは「爆裂魔法を(過去に)操っていた者(=現在は使えません)」ということになってしまいます。
多分、これは中二病的な性格の紅魔族が、正確な知識もないのに古めかしい語感を安易に借用したという、「可笑しさ」を表現したものなのでしょう。
当然このことを指摘している人が多いのだろうな、と思いましたが、ネットを検索しても案外少なかったです。
ジョークを真面目顔で指摘するのは「野暮」っていうことなんでしょうねw