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【第一章完結】第二十四話「辞令交付」を掲載しました【魔導士物語】

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 そんなわけで二十四話、第一章の最終話です。

 何度か言っていますが、第一章は離陸のための助走期間のようなものです。
 したがって、何か大きな事件起きて、それをすっきり解決……というような、いわばカタルシスがありません。
 そういう点では不満が残るかもしれませんが、最初だけだと思って我慢してください。

 さて、本文を読めばどういう人事が行われたのかお分かりかと思います。
 マリウスは「可能性」「実験部隊」などと、もっともらしい理由を述べていますが、嘘とは言わないまでも誤魔化しに過ぎません。
 本当の目的はエイナとシルヴィアの「監視」です。

 エイナが拉致事件で示した特殊能力は再現ができず、本人の証言を信じるしかないという状態です。
 これを参謀本部(特に外局である情報部)は疑いの目で見ています。
 彼女の能力に対する疑いであると同時に、エイナがまともな人間なのかということにも疑いを持っています。

 また、シルヴィアについても、魔導院の審問官長から密かに疑義が寄せられていました。
 国家召喚士が出現しない年というのは、そう珍しいことではありませんが、今回に関してはシルヴィアは当確だと思われていました。
 審問官たちは多くの卒業生を見てきましたから、こうした勘はまず外れません。

 しかも、召喚したカーバンクルという幻獣が、またよく分からない存在なのです。
 一応、三百年ほど前に一度召喚士されたことがあり、その記録も残されています。
 ただ、その記録を読んでも、カーバンクルの能力は曖昧ではっきりしないのです。
 シルヴィアは召喚時にカーバンクルと意識が融合し、その記憶もある程度見ていますから、儀式後に審問官たちから聞き取りが行われています。

 しかし、小さな炎を吐けることと、魔法を弾くことができるという二つの能力は古記録にも書かれており、シルヴィアのカーバンクルも実験でそれを証明しています。
 分からないのが、新たな魔石を取り込んだ場合、どのような能力を獲得するかということです。
 古記録にはこれが記されていません。恐らく魔石が見つからなかったものと思われます。

 カーバンクルの説明では、同じ魔石を取り込んでも、個体によって発現する能力が異なるため「食べてみないと分かんない」ということです。
 審問官長は、シルヴィアほどの逸材が召喚したからには、カーバンクルには国家召喚幻獣並みのポテンシャルが隠されているのではないか……と疑っています。
 そのため、審問官長は参謀本部に対し、シルヴィアとカーバンクルの動向から目を離さないようにとの要請をしていたのです。

 さて、次回からは第二章「ケルトニアの魔導士」が始まります。いかにも「冒険物語」っぽい内容になりますので、どうかお楽しみに。

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