https://kakuyomu.jp/works/16816452221210723112/episodes/16817139558465468005そんなわけで三十九話です。
■いよいよマグス大佐の軍勢と、白虎帝率いる王国第一軍の激突です。
緒戦はタイトルどおりに塹壕を巡る攻防です。
塹壕戦は第一次世界大戦あたりから本格的に普及しましたが、それは銃撃や砲撃から兵士を守る必要があったからです。
この物語世界は、中世から近世に移行する時代のイメージですが、火薬というものが意図的に隠されている代わりに、魔法という脅威が存在します。
塹壕戦は、帝国の魔法攻撃に手を焼いたケルトニアが編み出した戦法ということになっています。
何重にも掘られた塹壕が連絡路で連携し、敵に出血を強いながら後退を重ねるのが、縦深塹壕陣地の考え方です。
塹壕内で円匙(エンピ)が武器として活躍するのも、自然発生的に生み出されたものです。
これも第一次大戦以降の塹壕戦で、実際に起きた史実を基にしています。
■私は大学時代の四年間、休みになるたびに考古学の発掘現場でアルバイトをしていました。
もちろんバイトですから、学術的な作業よりは土方的な肉体労働が主になります。
住居跡などを掘る仕事ですから、スコップは必需品です。
地面を鋤簾(ジョレン)できれいに掻くと、住居跡だけ土の色が黒いので、すぐに分かります。
この黒土をざくざくと掘っていくわけですが、意外に乱暴な掘り方で問題ありません。
掘立式住居の壁や床は、がちがちに固められており、すぐに分かります。特に床はとてつもなく堅く、掘りたくてもスコップの歯が立たないのです。
発掘現場では、スコップやシャベルのことを「円匙(エンピ)」と呼んでいました。
土をすくう匙の部分が長方形のものは、その形状から「角スコ」、折りたたみ式の携帯スコップは、米軍装備品が由来で「アメスコ」と呼ばれていました。
それに比べると「エンピ」という呼び名は不思議で、当時は漢字で「円匙」と書くのを知らず、勝手に「猿臂」なのだろうと思っていました。
「円匙」と書き、それが旧日本軍での呼称に由来すると知ったのは、かなり後になってからです。
これは現在の自衛隊にも引き継がれているそうです。
なお、「匙」に「ヒ」或いは「ピ」という読みはなく「シ」が正しい音になります。
■次回は白虎ラオフウが参戦します。
「いやいや、最初から出てこいや!」と言いたくなる気持ちも分りますが、それを言ったら軍の存在意義がなくなりますw
王国としては、縦深塹壕戦法の経験と実戦データが欲しいので、ラオフウの出撃をわざと遅らせたのだとご理解ください。
それでは、次回をどうかお楽しみに!