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『倫理的シンギュラリティ』あとがき

 新年おめでとうございます、御坂稜星(みさか・りょうせい)です。
 カクヨム掲載作二作目、『倫理的シンギュラリティ』はいかがでしたか。正月早々なんて話をという向きはあろうかと思いますが、ネタが降りてきたのだから仕方がない(笑

 というわけで今作もぱっと思いついたネタをこねくり回してみました(笑
 執筆時間は全体で五時間程度。文書量のわりにちょっと長いかもですが、構想に割いた時間が約一時間、あとはPCで資料を漁りつつ一切筆が止まらず脱稿という流れに。前作に続き私の創作意欲は一体どうなっているのか。まあいいんですけどね。こう、なんというか脳内に専用のネットワークができてそれがうまく機能している証左なんでしょうし。

 前段でぱっと思いついたと書きましたが、実際のところきっかけはあったのです。ここしばらくはプロフィールにもある通り新作を書いていたわけですが、同時に“戦争犯罪を題材に一本書けないか”と考えていました。
 これは明らかに某洋ゲーの影響……それはともかく、元々そういう土壌があったのは間違いなく。とはいえ漠然過ぎて何をどう切り取るかはまったく決まっていませんでした。ひとまず戦争犯罪といえばと考えて真っ先に思い浮かんだのが、映画「ヒトラーの忘れもの」。でも地雷撤去なんてありがちだし、どうせなら影響を受けた某洋ゲーを超えるものを書きたい、というところで少々停滞していました(もっとも後者を超えるのはそもそもハードルが高すぎて無理でしたが)。
 そして執筆開始当日。入浴中にぼんやり思考を彷徨わせていると、突如地雷撤去に混入するSF要素(今もってわかりませんがこれは本当にどこから来たのか)。そこからぐんぐんストーリーが構築されて――前段に戻ります。さすがに一日かからず一本仕上げられるとは思わなかったなあ。
 いつも通りストーリー自体は『砂忘の記憶』と同じく暗くならないように。しかし今回は読後にずっしり残って引っかかるよう心がけましたが、結果として最後まで読むと意味がわかる、なかなか気持ち悪くうすら寒い一作になったかなと。
 字数としては前作の半分程度ながらも、話の密度はこちらのほうが上になりましたね。戦争犯罪という意味合いはちょっと薄れてしまいましたが、代わりに裏テーマとして“パラダイムシフト”を設定したのが功を奏したのでしょう。――主人公たちが人間でないと露見した時どう感じましたか。主人公たちが人間であると認識する限り、戦争捕虜を危険な地雷撤去に従事させるのは非人道的かつ立派な戦争犯罪です。しかし世界のルール、常識、価値観が変わったら……。
 五年前反乱を起こしたのは一体どちらの側だったのか。到来し得る未来について思いを馳せていただければと思います。

 さて、このあとがきを書いている現在、某国内自動車会社元会長の違法国外出国が連日話題になっています。
 なので明言しなければなりません、主人公の相棒の名前が“カルロス”なのはまったくの偶然です。とはいえ毎日その名を目にし耳にしていれば、無意識化に刷り込まれる可能性が充分あったりするのは事実でしょう。それは否定しませんが、淡々と語る主人公に対し、周りを憚らず言いたい事を言う相棒の名前……なんて考えていた時にたまたま思いついたのが“カルロス”だっただけの話です。それ以外の意図はありませんので誤解なきよう。
 人名といえば“ノートン”も出てきます。こちらは元からなんの候補もなく、グーグルで外国人名を検索している際目についたものをそのまま採用しました。なんでもよかったんですね(笑

 ここまで読んでいただければわかる通り、今作は意図して読者のミスリードを誘うような記述をしています。そこで問題になったのが作品につけるタグでした。
 より検索に引っかかりやすくするなら、SFと謳う以上例えば「アンドロイド」などとストレートにつけるべきなのでしょうが、それは作品にとって間違いなく重大なネタバレです。なので思いきって避けました。そのせいで本来獲得できるはずの読者を逃したとしても、それはまあ仕方がないのでわりと早い段階で諦めましたね。こういう事もあるかと。

 時期が時期だけに、『倫理的シンギュラリティ』はわたくし御坂から読者の皆様へお年玉という事になるとかならないとか。最後になりましたが楽しんでいただけましたか。
 これからもあまり間を置かず読みごたえのある小説をアップしていこうと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

二〇二〇年一月五日

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