直木賞作家の辻村深月さんは、「これがわたしの名刺となる小説です」という言葉と共に、長編小説『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞し、デビューしました。
この小説は、魅力ある登場キャラクター全員にスポットを当てながら、次から次へと巻き起こる事件とストーリー展開にわくわくしながら、1000ページにも渡る長編小説であるのに、2周も読んだお話です。彼女はミステリー小説が多いのですが、どちらかと言うと、『島はぼくらと』、『ハケンアニメ!』、『東京會舘とわたし』、『サクラ咲く』のような青春や人間模様を鮮やかに描いた小説の方が好きです。
先ほど、『月を見たい彼女は、ウサギのお面を被る』という短編小説をアップしました。
短編ではありますが、この物語はとても思い入れがあるお話で、私が初めて、1つの作品として完成させた小説です。
私、月瀬澪にとって、「これが私の名刺となる小説です」と言いたくなるほど、個人的に気に入っているお話です。
集英社様のコバルト短編小説に応募しても、箸にも棒にも掛からかなったアマチュア小説ではありますが、素敵なお話だなぁと、よくこんな物語を当時描けたなぁと、今でも思います。
瀬尾まい子さんのような、日々の幸せを凝縮させたような物語に、私は憧れています。心のひだに触れる、とでも言うのでしょうか。温かな木漏れ日のような気持ちが、すっと心の中に満たされて、深呼吸をしたら優しさが滲み出てくるような、そんな物語。
人生は悲しみとか辛いこと、苦しいだけじゃない。いくつもの感情の中に、大切な人の言葉と空気が重なり合い、優しさや情熱がこぼれてきて、私たちの瞳に映るものを鮮やかに彩っていく。そんなことを表現するような世界。
彼女が描いた『天国はまだ遠く』は、私のバイブルです。
私もいつか、そんなふうに読者の心を動かすような素晴らしい物語を、ゆくゆくは描きたいものです。
月瀬澪。