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チャットGPTと喧嘩した話

こんにちは。
エジプト好きオバちゃんの、みかみです。

梅雨明けしたんでしょうか。
なんだか急に暑くなりましたね。
蝉の鳴き声も気持ち大きくなった気がするし、草の香りも濃くなって。今朝の陽射しは少々暴力的に感じました。

さて。
古代エジプトを舞台にした、カタブツ神官と肉食お譲様のロマンス?小説『彼女と私の秘話』https://kakuyomu.jp/works/16818093079862556066をGSこえけんに絶賛投稿中!寄ってらっしゃい見てらっしゃーい♪状態のワタクシでございますが。
昨日、この作品の重要な仕掛けとなる古代エジプト語について、チャットGPTさんと大いに闘いました。

まあ、ぎゃんぎゃん騒いでたのは私だけだったんですけどね。

※すみません。今回のノート、結構長くなります。
オタク語りが9割なんで、「いらんわい」という方は、ここでバックしてくださいね。


さてさて。
古代エジプト語と一言でいっても、その歴史は約3000年と超長い。その間で、古代エジプト語は発展し、また変化を遂げました。
ある古代エジプト語の書籍によると

古エジプト語:
第1~第8王朝
初期王朝時代・古王国時代・第一中間期(第7~11王朝)に相当
紀元前3100年ごろ~紀元前2160年(第11王朝まで含む)ごろ

中期エジプト語:
第9王朝~アマルナ時代以前
第1中間期・中王国時代・アマルナ時代(新王国時代の中にある)
紀元前2160年ごろ~紀元前1345年ごろ

新エジプト語:
アマルナ時代~第3中間期(21~24王朝)
紀元前1345年ごろ~紀元前727年ごろ

デモティック:
末期王朝(第25~30王朝)~ローマ帝国時代
紀元前747年ごろ~紀元前30年ごろ

コプト語:
紀元後300年頃~640年のイスラム征服時代


こんな感じで分けられるそうです。
書籍やネットによって若干のずれがあるかもしれませんが、そこはご容赦くださいね。

――で、新エジプト語に変わる頃には、中期エジプト語は文語化(文書を書く時に使う言葉で、日常とは違った特色を持つ言語体系)してました。変化の過程で古代エジプト語は、単語の意味合いが変わったり、文法も変化したり、おそらく発音なんかも変わったりしたんです。あと、新エジプト語では、口語的な表現が文章に沢山反映されるようにもなったらしく。
つまり、結構大きな変化を遂げたようなんですね。


で、私は、”古エジプト語”で呪文を作りたかったわけです。
新王国時代(第19王朝ラムセス二世治世下)の古代エジプト神官が、さらに古代のエジプト呪文を唱える。

超絶ロマンじゃないですか!?

うっひょー♪です。

同じ物語のレクミラ視点となる『草色神官の秘話』では、その辺の呪文をぼんやりさせて終わったので、呪文を唱える本人イエンウィア視点である本作では、なにがなん台詞で表現したかった、ワガママなわたし。
ヒエログリフ読めないくせにね(笑)
古代エジプト語の文法だって、分りません。『動詞→主語→目的語』のVSO型が基本ってことしか知らない。

だから、自分で作れるわけがない!

というわけで、頼ったのがAI。チャットGPTさんでした。
幾つか条件を入れて、呪文を考えてもらいました。

さあできた!――とそれまではよかったのですが。

で、これで合ってるかどうか、どうやって確かめたらいいのかしら……

と、学者でも学生でもない私は、たいそう困りました。
実は、以前投稿した古代エジプト小説『ネフェル・メスェティは歌う』のメスェティって、歌声という意味じゃなかったんです。推敲で『イウヌ』に直しましたが、それでもなかった。結局最近になって、歌声に相当する名詞ではなく、『ハスィ(歌う)』という動詞が、とある書籍で見つかっただけ。単一のAI情報を鵜呑みにして、新人賞に出しちゃうなんて、なんて馬鹿な事をしたんでしょう。あーあ……(カクヨムの方は、再公開する時に直しますね。ホントすみません)

だからせめて今回は、単語の整合性だけはとらきゃ、と。


そんなわけで、そこから、頭がパンクするような確認作業が始まり、私は何度もチャットGPTさんに噛みついてしまいました。
古代エジプト語と日本語への単語変換をしてくれるページも見つけたのですが、やはり収録数が足りない上に、私が欲しいのは古エジプト語なので。ヒットしても単語の意味が違ったりするんです。

一番苦労したのがssp(シェスぺ)という単語でした。

私『だから、この情報のソースを提示してよ! どこを見てもsspは”照らす”しか意味が書いて無いんだよ!』

GPT『sspはメジャーな意味は”照らす”だけど、古エジプト語では文脈によって意味合いが”受け取る”にも変化したんだもん。ピラミッドテキストにも書いてあるもん(←実際はこんな話し方はしない)』


私『ピラミッドテキスト検索したけど、そんな文言なかったもん!』

GPT『でも実際あるんだヨ。他にもこれ(URL)と、ここ(URL)でも書いてあるし』

私『英語300ページ分も読めるかーっ!(PDFだった)』

あーもう無理!

あーもうお手上げ!

でもこの呪文(祝詞)だけは諦めたくないんだよぉぉぉぉ!

こんな感じで、晩御飯を作りながら闘い、買い出しをしながら闘い、娘と息子にオヤツを食べさせながら闘い……夫が帰って来る頃には頭痛でヘバッておりました。

で、頭痛の理由を聞いて「随分とまあ専門的なことを」と苦笑いした夫が

「じゃあ、別のAIに質問して確認とってみれば?」

と提案。

「あかんよー。やってみたけど、ワケ分らん答えしか出てこんかったし。そこで同じ意味の古エジプト語文作ってもらったら、イルイルイルイルばっかり連発してさー。こんなん、確かめるまでもなくハッタリやん」

「ふふん。これなら大丈夫だと思います」

夫が得意げにイチ押しのAIさんを紹介してくれました。

そしたら、本当にシェスぺという単語が文脈によって”受け取る”に変化したのだという解答がきました。
しかも、GPTが考えた呪文を、このAIさんに日本語に翻訳してもらったところ、ほぼ同じ意味合いでした。単語だけじゃなくて、文法もちゃんとしてたんですね。

すげー。
チャットGPTよ。疑ってごめん。噛みついてごめん。苛々してごめん。

そして夫とperplexity(AI)。ありがとう。


というわけで、私が頭を爆発させた古エジプト語の呪文は、20日と21日の投稿にあります。
どうか、それまで見捨てずお読み頂けたらありがたいです。

すみません。
結局は最後に宣伝でした~。

長々としたオタク語りを、ここまで読んで下さってありがとうございました。

21件のコメント

  • あぁ!きっと、あの場面の呪文ですね♪
    (*´∀`*)
    と、予想して、楽しみに待っております。
    (ヒントは犬、夜、墓で合ってますか?)
  • すごい、本格的。
    そこまでこだわられるのはさすがみかみさんです!
  • 結音様

    そうそう!
    キーワードは 犬・夜・墓 です。

    楽しみにして頂けるなんて、ほんと有難い!
    ありがとうございます~!!(泣)
  • 和泉将樹様

    私はワガママ言って噛みついてただけなので(笑)
    凄いのはチャットGPTさんかな。うへへ

    ものすごく厚かましいんですが、「もしこれがボイスドラマ化したら、この呪文を喋ってもらわないと駄目なんだよね~。じゃあ、もうちょっとちゃんとしとこうかな」
    という考えから何度か修正し、昨日の喧嘩に至りました。
    まあ、落選しても後悔はしません(笑)。

    GPTさんと仲直りできてよかったです!
  • sšp(セシェプ)は、私もいつも使うオンライン辞書で「輝く」、「照らす」といった意味しか見つけられませんでした。「受け取る」という意味になる文脈を知りたくなりました。でも300ページは読みたくないですよね😅

    ちなみにこちらが私の使ってるエジプト語のオンライン辞書サイトです(英語•ドイツ語):
    https://thesaurus-linguae-aegyptiae.de/home
  • 田鶴様

    そうなんですよ~。300ページも無理です。
    何かで翻訳する事ができるのかな?
    またちょっと調べてみよう……

    ご紹介下さったサイト見ました。
    凄い。こんなんあったんですね!
    世界最大の電子コーパス!
    まだちょっと、使い方が分りませんが、色々試してみたいです。
    ありがとうございます!
  • pdfファイルをWordで開くと、テキストになるので時間かかるけど翻訳できるはず……です。
    ChatGPTを使いこなしていないのですが、テキスト化できていれば翻訳してくれるんですかね?←
  • 香坂 壱霧様

    ありがとうございます!
    wordでの開き方が分からなかったのですが……範囲選択コピーで、ChatGPTで翻訳できました!
    今、全部範囲選択してciciAIさんに翻訳頼んだんですが、動かなくなりました(笑)量が多いだけにちょっと無茶振りだったかなと反省してます(^_^;)

    これからPDFはコピペで翻訳してもらおう(^^)
    教えてくださって、感謝です!
  • 香坂 壱霧様 追記

    コピペ可能だと分かったので、グーグル翻訳にペーストしてみました。
    こっちでもできましたー!

    ほんとありがとうございます!
  • 田鶴様 追記

    ChatGPTさんが、ピラミッドテキストにあるよ、と言っていたフレーズです。

    ḏd-mdw: di.nṯr.w šsp.n.f snb ḥr ḥtp ḥr.k

    日本語訳:
    「神々が言う:彼が健康を受け取り、あなたの前で平和を享受する。

    もしよかったら(^^)
  • 知識の裏取りは悩ましい問題ですね。素人でもある程度正確なことができるようになったのは、ありがたい時代だと思います。しかし、Wikipediaや出版物の学術記事にも間違いが堂々と書かれていたりしますので、迂闊なことをすれば嘘を普及させかねないわけでして、頭の痛い問題です。AIも間違いだらけ(正確に言えばAIが学習に使用している資料が、古いものになればなるほど間違いだらけ)なので、現状ではほとんど使いものにはなりません。

    まあでも、その辺の苦労をきちんとされている作者さんと、裏取りのない嘘知識だけで突き進んでいる作者さんとは大違い。両者の差は厳然として存在しますので、出版社さんのようなプロであれば、その違いを見抜いてくれると思います。
  • 杜若狐雨様

    そうなんですよねー。ネットは情報量が多いし、すぐに関連情報を出してくれるから便利で、ついつい使っちゃうんですが(;´∀`)信頼性の高さを問われると、苦笑いたくなりますね。
    私が学生の頃は、参考文献や引用文献にネットを使うのは駄目だよーって実習で言われてました。信頼性に乏しいから。今の実習環境もそうかなぁ? 離職した身なので、とんと分かりませんが(笑)

    学問はどんどん新しい事が発見されたり、常識が覆ったり、面白いですね。本当に、終わりがなくて。一生楽しめると思います。

    私は結構、何でもかんでも「そうなんだー!」で信じちゃうオメデタイ人間なので、ネットAIは要注意だと肝に銘じておきます(笑)

    出版社さんに、古代エジプト語の間違いを指摘してもらえるレベルの選考まで、上がれたらいいなと思います(*^^*)
    ありがとうございます。
  • みかみ様

    「受け取る」の意味になるソースをありがとうございます。

    šsp𓊏𓊪𓂡または𓋴𓈙𓊪𓊏(受け取る)とsšp𓋴𓈙𓊪𓇶または𓋴𓊏𓊪𓇶(輝く、照らす)は違う単語ですね。オンライン辞書ではšspじゃなくてšzpになってたので、単語がヒットしなくて気づきませんでした。ヒエログリフからアルファベットの変える翻字方法が色々あって統一されていないので、紛らわしいです。でも単語自体も紛らわしいですね。šspとsšpのヒエログリフでの書き方は、ここに挙げた他にも色々ありますが、古代エジプト人自体も混同してšspの綴りをsšpと書くことも(2番目のヒエログリフです)ありました。

    Thesaurus Linguae Aegyptiae(ご紹介したオンライン辞書です)は、ユーザーフレンドリーな作りじゃないのが少し残念なんですが、慣れればとても便利です。ヒエログリフでは検索できませんけど、Search for lemmaのTranslationに探したい単語の訳を入れると、それに合うエジプト語の単語を検索できます。Transliterationにアルファベット化したエジプト語の単語の読みを入力すれば、検索結果に合った単語の意味を調べられます。

    コメントを編集したくて1度削除してまたコメントを投稿しましたので、2度通知が行ってしまったかと思います。煩わしくしてしまってすみません。
  • 田鶴様

    凄いです!
    お詳しいんですね!
    ありがとうございます!

    で、つまりえっと……sšp(セシェプ)とšsp(シェスペ)はよく似てるけど実は全く別の単語で、正解は、šsp(シェスペ)が受け取る。sšp(セシェプ)が照らす。
    だから、文脈によって変化する単語というわけではない。

    発音は、sšp(照らす)がセシェプ。šsp(受け取る)がシェスペ?💦
    ああでも、正しい発音などは、エジプト考古学ではまだちゃんと確立されてないんでしたっけ。

    色々聞いてすみません!
  • šは、shシュ(日本語だとどうしても母音が入ってしまいますが)という発音ですが、エジプト語は母音を書かずに子音だけで綴るので、大抵の現代のエジプト学者は子音の間にエを入れて読んでます。なので、おっしゃる通り、sšp(照らす)がセシェプ、šsp(受け取る)がシェスプですね。šは普通のアルファベットにないので、AIはšとsを同じ字ととらえたんじゃないでしょうか。AIにエジプト語の翻字を学習させれば、その辺の混同はなくなるんじゃないでしょうか。AI専門家でないので、私にはできませんけど。
  • 田鶴様

    そっか、šsp(受け取る)は『ペ』じゃなくて『プ』。シェスプ。なんですね。
    ありがとうございました!
    教えて頂いた翻訳サイト、練習します!
    これからAIも古代エジプト語の翻字をどんどん学習してくれて、英語の翻訳並みの精度になってくれたらいいなぁなんて思いました。

    とても丁寧に教えて頂けて助かりました!
    なんも知らんくせに「やりたい」ばっかりで突っ走ってたので、本当に有り難いです(〃∇〃)

    小説に書いた呪文の発音、シェスペになってるんで、シェスプに直しておきます(^^)v
  • 田鶴様 追記

    先に書いてあった英文数百ページ(見直したら300ページ以上ありました)のソースも、一応貼らせて頂いておきますね。
    これです。↓

    James P. Allen, "The Ancient Egyptian Pyramid Texts

    もしよかったら、お暇な時にでもm(_ _)m

    私もボチボチ翻訳しながら読んでみようかなと思ってます(^^)
  • すみません、šsp(受け取る)の読みはシェセプのほうがいいです。書き間違えてしまいました。二度手間になってすみません!アルファベットで書けば、shesepです。最後の音にはエを入れないのですが、日本語だとン以外全部母音が入ってしまうので、便宜的にウ行の音を使います。

    古代エジプト語を翻訳できるアプリもAIも知らないんですけど、Hieroglyphs AIというアンドロイドアプリを知ってます。でもイマイチです。カメラに写ったヒエログリフをバラバラに認識できるだけなので、あんまり実用的じゃないという感想を持ってます。

    ピラミッドテキストの参考文献、ありがとうございます。
  • 田鶴様

    あ、そうか。子音の間に『エ』が入るんだからshe・se・pですね! 失礼しました〜💦
    最後にはエを入れないというのも、ありがとうございます。覚えておきます(>ω<)
    全然、手間なんかじゃないですよ。とっても楽しいです(〃∇〃)

    こんな風に教えて頂いたり参考文献やサイトのやり取りができて、本当に嬉しいです(*´ω`*)

    こちこそありがとうございます!
  • あ、ここに壮大な制作秘話がヽ(´o`;
    お疲れ様でございました!
    頑張りが大いに反映・結集された感動的なお話でありましたよ!!
  • 蜂蜜ひみつ様

    ありがとうございます〜(´;ω;`)
    このノートの後で、再調整したから大体は合ってるんじゃないかと思うんですよね☆大体は!(笑)

    感動してもらえて嬉しいよーっ!(*^^*)
    やったーっ!
    私も蜂蜜さんみたいに、エジプト行きたいなぁ。
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