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中島 敦「山月記」「李陵」を読む

いつも自分の作品のことしか言及してなかったので、今日は親友の一人から勧められた「山月記」について。

自分の作品「ドキ女」に関して、その親友には割と忌憚なく(文字どおり)意見をもらっておりまして。
「世界観を説明するのに、過不足のない描写で好感」がある一方で、「人物描写が地の文、台詞ふくめて拙い。一稿からの加筆修正品ということもあるが、登場人物の描写、台詞回しは一度ならず読み返しが必要だったり、つっかえる」という、なかなか痛いコメントをいただいています。

苦手な人物描写でもっと深みが欲しいので、参考文献をいくつか挙げてもらったところ、その中に「山月記」(中島 敦)がありました。
私は純文学に苦手意識がありまして、他に「人間失格」(太宰 治)「檸檬」(梶井基次郎)があったんですけど、名だたる文豪に対して「こいつ何が言いたいの」ってレベルで文章が頭に入ってこない。
その中で「山月記」の文体は簡潔にして、しかも人物がありありと目に浮かぶところか脳裏で動くが如く、すんなりと受け入れられたのです。たった十数分で読み切ってしまった、それくらいストンと頭に入ってきました。

科挙に合格するほどの才(これだけでも官僚になれるすごいことなんだけど)がありながら、詩作で身を立てようとして果たせず、結果発狂してしまう、という人物像が序盤の十数行の文章で印象付けられてしまうんです。これすごいなって思いました。
「山月記」だけでは飽き足らず、代表作の一つに一緒に上がっていた「李陵」を会社への往復のうちに読み切ってしまいました。
中島 敦の文章は変にねじ曲がっていなくて読みやすい。しかも、いろいろな人物がどんな人となりかを繕わずにありのまま描いているように受け容れられる。すごいことです。

名だたる文豪の文章を「すごい」としか言えない自分があまりにもちっぽけだけど、ようやく一つ手本になるような作家を一人見つけられたのは幸福だと思います。
他にも芥川龍之介とか勧められたんですが、だいぶ前に国語の教科書で読んだ「羅生門」あたりから読み返してみようか、と思った次第です。

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