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「大正霊能科学奇談」あとがきと雑記③

キーワードは「どんでん返し」──

ちょうどその頃「5分で読書 昼休みの冒険」のネタだしをしていました。
どんでん返しが出てくる5分シリーズを買い、読み、初めてシャーロックホームズに触れ、どんでん返しとはなんぞやと考える時間がありました。(ここで得たのは、短納期で短編案をいくつか出す方法でしたが、それについてはいつか機会があればお話しします)
その瞬間、「大正霊能」の主人公、一色がちゃぶ台をひっくり返すイメージがポン!と浮かびまして、突然にやる気がみなぎりました。
そして、あの第四章の仕掛けが出来上がったわけです。「ちゃぶ台返し」は比喩ではなく、そのまんまの意味です笑

さて「大正霊能科学奇談」とは、どんな物語なのか、さらっと解説します。
当初のコンセプトは「大正時代の福岡で、奇術師が超能力者に出会って、神様や未来人、最凶最悪な敵に立ち向かう」でした。
というのも、今まで書いてきた「霊媒堂猫の手」「4番街のアンベシル」「天神さま」の要素をすべて兼ね備えた小説、いわば小谷杏子大乱闘スマッシュブラザーズがしたかったわけです。
この三作はカラーは違えど、やっぱり私の好きなものが詰まっています。創作に行き詰まった私がやるべきなのは、この「好きなもの」の再構築でした。
しかし、前回も言いましたが「大正霊能」は最も駄作であり、私も書くのがしんどいお荷物小説となってしまいます。
キャラクターたち、とくにメインの二人である一色天介と後藤祥馬とは、たびたび喧嘩をしていました。
物語を作るとき、私は脳内でキャラたちと会話するのですが、一色には怒られ、後藤には無視され、挙句に夢にまで出てきて文句を言われる始末で「こいつらとは分かり合えないわ!」とへそを曲げていました。
これは「猫の手」の主人公、仁科とも同じで、彼とは最終回が終わった後に打ち解けました笑

冗談はさておき、一色がちゃぶ台をひっくり返してから、私は手のひらを返しました。
元々は、奇術師として失敗した一色が故郷に帰り、自暴自棄になって己を見失うも、危機に直面して立ち直る物語として進めていました。
自分をクビにした座長に「もう一度、東京でやり直さないか」とまたも騙されそうになる一色が、自分の死期を背負いながら、この座長に一泡吹かせようとするラストを考えていたのですが……やめました。
そもそも、第一章の時点で高尾譲ノ助という人物が出てきてから、すべての計画が狂いだしたんです。やっぱり、彼は諸悪の根源ですね。
もっとも、本作のヒール役である御影泰虎を出すことは最初から決めていたので、座長と一色の絡みがあると後藤くんたちとの関係がどうでもよくなってしまいます。
要するに、あのラストに座長まで参戦していたら収拾がつかなくなるわけです。そんなわけで、ひとまず座長を消しました。

また、本作の主人公である一色は奇術師です。大掛かりな仕掛けをやるべきだ、だったら、いっそのこと四章はまるまる彼の舞台にしてしまおう。と思いました。
そこからはとても楽しかったです。そして、もうつまらない駄作だなんて思わず、むしろ「これが一番面白い!」と開き直ることができました。
今、私の作品でもっとも面白い小説は「大正霊能科学奇談」です。
一色と同じように立ち直ることができました。
「私が面白くて、誰か一人くらいには刺さる物語を書く」というのが、小説を書き始めた私が掲げた目標です。これからもその心だけは忘れたくないですね。

一色と後藤はまだまだこれから仲良くなります。口喧嘩は絶えませんし、奇術師と超能力者という相性の悪さがありますが、どこかお互いに信頼しあっています。
後藤は一色に兄の面影を重ねていますし、一色は元々の性分で「お人好し」なので、後藤に構いたくてしょうがないんですね笑
松本くんや日野子さんが後藤くんにできなかったことを、一色はサラッとやってのけるんです。
そういうところが「相棒」って感じで、私は好きです。
彼らはこれから二人で色々乗り越えます。

そういえば、本編で一色の本名を出す機会がなかったのですが、それは次の機会に覚えていたら出します。
というのも珍しく、続編を前向きに検討しています。
ようやくアイデアも出たので、今度はゆるりと物語を綴っていきます。
この物語はどうしても「天神さま」の世界へ着地しなくてはならず、彼らの物語はちょっと過酷なものになりそうです。
本作のラストで復讐を誓った横江美鳥と、神殺しを誓う狂人・百崎調がどうやってタッグを組み、悪の種をばら撒くのか──
「猫の手」「4番街」「天神さま」もその他の物語もそうですが、私は行き過ぎた正義感が嫌いです。
なんと言いますか……強い正義感を盾に「自分は善いことをしている」「正義に逆らうものは排除」という思考のキャラクターを悪役にしたがります笑
とはいえ、この理論でいえば果たしてどちらが善で悪なのかは、読み手の方の解釈に任せるしかありません。
どちらの側にも「正義」と「悪」があるので。
ことごとく、自分は「勧善懲悪」というのが苦手ですね。今後の課題にします。

さて、同時並行で「天神さま」の続編(こちらは完結編になりそうですが)もできるでしょう。きっと。
でないと「大正霊能」は終われませんから。
まさかまさか「修羅の国ネタ」をここまで広げて、壮大な物語になるとは夢にも思いませんでした。妄想ってすごい。

それでは、今回はこの辺で終わります。
また長々と語ってしまい、申し訳ありません。ここまでのお付き合い、誠にありがとうございました。
引き続き、小谷杏子を見守っていただきますよう、よろしくお願いします。

下の画像は、一色がちゃぶ台をひっくり返し、私の興が乗った時に作ったものです。
赤と黒を使って、ちょっとオシャレにしたかった……こういうのをよく作ってはTwitterにぶん投げています。供養。

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