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消費財だねい

『ひのきとひなげし』
 筒井康隆説における宮澤賢治作品は、ちんこが勃つ以前の少年のソコへビンビン来るエロスを指摘したものであるが、
 それ以降のソコへアレするものとしての。資料。

 ひのき 檜フローラは福島県が北限。ひのきを指す岩手県方言はヒバと言ふらしいのだが、ヒバは翌檜かもしれんらしい。ヒノキの古語は「ひ」。檜皮とかが使はれる。火を興すために使はれるが、檜のヒは甲音。なんぞ火(乙音)と火口的な者を区別する言訳があったらしいので「日」も甲音。天沢退二郎説では賢治先生はこの樹に「特別の索引を感じ」 檜関係の連作の一節「まことになれはいきものか/われとはふかきえにしあるらし」を引いてゐる。また、 『女』の解説で、宮澤大先生はソレを歌ふことによって「菩薩を、ひいては仏性を」歌ふとか言ってるので大先生のトーテムで良さげである。でその翻編(の筈)は、「性的な惑乱を押しひしぎ隠しおおせようとする」主体の端的な表出ださうである。この「絵の具そのもので塗りたくられ描きだされた」やうな「地獄絵図」は、かなりキてるので、いい感じのファンタジー(ホラー寄り)としてさう言ふ短編に(以下内田百閒大先生に対する出版の理不尽が小一時間)。平凡社ナントカライブラリ『可愛い黒い幽霊』結構面白い。

 索引と言ったら折口信夫説でのマナあるいはそれを齎すまれ人は「らいふ・いんできす(lifeindex)」であったが、このひのきは―、うぜー説教たれる(星とスターに、オールスターキャストときたか)しー、没稿では「はらぎゃてい」とか言ってる上に悪魔を退散させるしー、なんかー、太陽をさして「みがきたて燃えたての銅(あかがね)づくりのいきもの」とか言ってるし―、うーん。

南方熊楠によれば、支那の古伝に曰く、千歳の(木+舌)木(カツでゆはず テンでたきぎ)あり その根、座せる人の如く 長さ七寸 これを刻めば血あり。

 之を以て
足下に塗れば水上を歩ける
水に入ると水が開く
身に塗れば体を隠す(取るのも可能らしい)。

 の、カツは栝樹で檜。

 ひなげし 阿片を作ると言ふ設定。コーラス(合唱手)であるらしい。赤い。センターつうかスター(女王の字があてられる)の名前「テクラ」は一応ドイツ語。テクラの原語はギリシャ語の筈。彼女らに来る「青いチョッキの虻さん」や「黄のだんだらの蜂め」が、ファンなのか何なのかは不明。彼女らは少なくともアイデンティティフリーの地獄でのたうち回り、決して自身のポジションへ満足をしない上に向上心以外でも、現状を無駄に否定してゐる。初期形ではひのきの功徳をもって魔道に落ちる所をひのきによって救はれました 皆さんはしいんとなりましたで終わるのだが、決定稿では
「わぁい わぁい おせっかいの背高ひのき」
 とはやし立て、どっかから引かれる花奔のスター性を否定する。恒常性があると困るんだけど。

 美容術。ふしぎな呪文で登場する、赤い光と黄色い光を発する気体らしい薬を三服、吸引によって摂取すると効果が出る(具体的にはどうか不明)。
 没稿で アセンションの言訳としてその辺の草が善逝(スガタ)の功徳をもって転生する植物に青蓮華、黄薔薇がでてくるのだが、カラーリングにパドマ(紅蓮)、クムダン(黄蓮)と言ふパラフレーズをやった、訳ぢゃねえよなやっぱ。南無妙法蓮華経の蓮華は白蓮華らしい。魔道に落ちると来世はツチグリらしい。茸ときたか。
 初期形では、1服で新月くらゐ 二服で十五夜の月くらゐ 三服で夕日くらゐ 四服で卒業するがやると太陽くらゐになると言はれる。で一服二百両(「テール」のルビは、没稿で一回 あとは「りゃう」).決定稿では「一人5ビル」

 多分、「さっさっさっと大きな呼吸を四五へんついて」沈む太陽も、恒星信仰ってわけぢゃないか―、ラストの説教と関連する何かか―、よくわからない。この辺「磨きたての銅の盾のやうに」は初期形ではひなげしの台詞。

 没稿。『オツベルと象』では、大昔宮沢賢治関係リスペクト音楽とドラマが収録されたCDがあって、『オツベルと某』がドラマで、遊佐未森様が象の声を当ててて、「なんとかです サンタマリア」とやってゐたんだ。アレはいいものだ。その象は摩耶夫人がお釈迦様を生む前に降りたと言はれる象を連想させ、サンタマリアはイエスの母であるとする説があるので、特に問題がないが、聖テクラ(パウロの弟子)かなんかに取材した名前のひなげしが生えてる樹の「はらぎゃてー」はカット。

 『春 水星少女歌劇団一行』や『春と修羅』3所収七一一の『水汲み』に出て来る青い衣のヨハンネスを、天沢説では問答無用で洗礼者ヨハネとする。
 あをき衣を纏ひて赤色の野に降り立つべき者はこっちではあれなのだが、あー。ニューヨーク。

 『ひのきと某』 『春 水星少女歌劇団一行』 
ヨハネ的なもの。1名前だけ 2強くて物知りの勲爵士(ナイト)ジョニーと、すこうし瓦斯を吐いてゐる死火山みたいな山セニヨリタスの中に棲むヨハンネス(一回「リエンネス」なほ没稿では山中に「テムール共産国」があったらしい)
娘 1コーラスの儘で生きるのが嫌なひなげし(彼女らが作る阿片はなんかに垂涎の物らしい) 2「ドラゴン!ドラゴン!香油をお呉れ」と言ふ皆さん(謎 没稿ではドラゴン問題でアレする皆さんは「スター同士で喧嘩」と表現される)

 あとカエル。狐と並ぶ賢治作品二次消費者のくせに生意気な特殊部隊ぽいこれは、本作の方では、厳密には出てこない。詩の方では情景で出て来る。

 宮沢賢治作品で「銀いろの星」ときたら『烏の北斗七星』にあるごとく西の空にひらめくマシリィ即ち水星なのだが、こちらの星は「東」で「またたいて」ゐるので、メルクリウスと言ふより恒星みがある(天沢退二郎説)。没稿では「波羅蜜の星」

 香油を吐くドラゴン(没稿では「ドラゴノイド」「ドラガノイド」)と、芥子坊主として薬を出すひなげしをアレして。

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