以前から本棚を晒せとのご要望を何度かいただきつつ、趣味がとっ散らかっていて何の参考にもならなさそうなので控えていましたが、この前「ホラーを書きたいときの参考資料があれば教えてほしい」とのお声をいただいたのでやります。
自分の趣味なので参考になるかはわからない。
・東雅夫『怪談文芸ハンドブック:愉しく読む、書く、蒐める』
雑誌『幽』の編集長が書いたもうこれさえあればみたいな本。
怪談とホラーの違い、創作怪談と実話怪談の違いなど根本的な部分から、和洋中の妖怪話の特徴比較まであるので、自分がまず何を書きたいかの見極めにも向いてます。
実際に長編の書き方の指南や名作怪談ガイドまである。もう本当にこれさえあれば。
・平山夢明『恐怖の構造』
有名ホラー作家のそもそも恐怖って何なのさというとこから始まる本。
馬鹿な若者が死ぬ夏ホラーがウケた背景にあるキリスト教だったり、ホラーってこんなもんだよねというざっくりぼんやりした部分から切り込んで解説していく。
所々で呪いの人形で知人が階段から落ちるわ犬が死ぬわでもう大変みたいなヤバ実話を笑い話として挟むのも魅力。この冷めた視線故の分析力だと思う。
・蒲松齢『聊斎志異』
他作品を参考にしたいけどパクりになるのが心配? でも、これなら大丈夫! 何故なら著作権が存在しない時代の本だからさ!
中国清代の怪談まとめ本。今で言う洒落怖や禍話か。
大昔の話なのにシックスセンス的叙述トリックもあったり、幽霊と妖狐との重婚ハーレムや、死者との悲恋や友情もあったり、いろいろすごい。
・干宝『捜神記』
さらに古い中国怪談集。聊斎志異に比べて身も蓋もないというか、悪いことしなくても泊めてあげた奴が化け物だったらぶっ殺されるし、逆に幽霊を騙して売り飛ばす罰当たりオブザイヤーもあるし、霊も人間も怖い。
でも、ヲタクは皆大好き夢十夜とかFateのエミヤが持ってる双剣とか、今のサブカルに深く根ざしたネタがいっぱい。
現代の漫画『千年狐』は身も蓋もなさを減らして話としての完成度を上げたとてもよいリブートなのでお勧め。定伯売鬼の幽霊が可愛い。
・コリン・ディッキー『ゴーストランド: 幽霊のいるアメリカ史』
幽霊話の根幹は罪と罰による、とのスタンスで、アメリカ各地の心霊スポットを負の歴史とともに読み解く本。
こういう話に相応しいのはどんな場所か参考になるし、南北戦争や参政権を巡る運動など米国の歴史をさらっと網羅する書籍でもあるので、ちょっと昔の西欧を舞台にゴスな雰囲気の話を書きたいひとにもお勧め。
だいたいこんな感じです。
資料も大事だけど小説も大事なので、スティーブン・キングとか岩井志麻子とか小野不由美とか定番でお勧めです。
最近は台湾ホラーも熱い。『返校』のノベライズや張渝歌の『ブラックノイズ 荒聞』もよかった。
他何かご要望あれば。
よい怪異ライフを!