2章フィルニカ王国編に登場するメカについての設定まとめです。
・〈アイゼンリッター〉PMCカスタム
ベガニシュ帝国およびベガニシュ貴族の息のかかった民間軍事会社が運用する第2世代BK〈アイゼンリッター〉の総称。
正式にこのような仕様があるのではなく、ベガニシュ帝国の国外で傭兵が運用するカスタム機に便宜上ついたもの。
民間軍事会社の傭兵と呼称しているものの、実質的にはベガニシュ帝国による影響力拡大工作の尖兵である。
敵国や第三国への技術流出を警戒して、ベース機には光波シールドジェネレータおよび熱線砲の運用能力がないモデルが選定された。
このため軍では陳腐化しつつある〈アイゼンリッター〉C型がベース機となっている。
今回、エルフリーデが使用している機体もそのような有象無象のカスタム機の一つである。
ミトラス・グループ系列の民間軍事会社で運用されるモデルを、警備のためにフィルニカ王国内に持ち込んだもの。
フィルニカ王国内での規制により、その武装は正規軍のバレットナイトと比較して軽装なものである。
見た目の相違点としては通常の〈アイゼンリッター〉の胴体装甲がプレートアーマーの意匠を組むのに対して、こちらは近代的な防弾鎧/タクティカルベストを模した装甲を身にまとっている。
これは光波シールドジェネレータ(エネルギーバリア)が運用できず、防御力を稼ぐのに増加装甲を身にまとっているため。
これに伴って胸部内蔵の対人機銃は撤去されている。
またオプション装備としてアルケー樹脂と合金の複合装甲の携行盾を用いる。
腰部には電磁投射式のアンカーユニットとワイヤーケーブルを装備。
脚部による跳躍と組み合わせることで、より三次元的な戦闘機動が可能になっている。
武装
・右腕部:20ミリ機関砲(電磁投射式)
・左腕部:複合装甲カイトシールド
・胸部ハードポイント:対装甲ナイフ・スティレット×2
・腰部ハードポイント:ワイヤーアンカーガン×2
・背部ハードポイント:超硬度重斬刀(バスタードソード)×1
・背部ハードポイント:12.7ミリ3銃身回転式機関砲×1
・〈M4Fカフドゥ〉
第2世代バレットナイト。
ガルテグ連邦の生産する〈M4パートリッジ〉の輸出型。
〈M4パートリッジ〉は〈M3エヴァンズ〉と同じ駆動フレームを使用しており、なめらかな曲線を描くボディを持つファミリー機。
ベガニシュ帝国のバレットナイトと同じくマニピュレータによる武装保持を行うが、構造の簡略化を指向しているため指は三本のみ。
このため細やかな動きが苦手であり、ベガニシュ製バレットナイトのような剣術は難しいため近接戦では分が悪い。
性能面では〈アイゼンリッター〉に比べて運動性で劣るが、パワーは同等以上と評される。
カフドゥとは、フィルニカ南部の伝承に登場する妖精の名前。たいまつを持って夜に旅人を惑わす鬼火のこと。
この地方において夜間、盗賊が出没して旅人の命を奪っていた事実から生まれた伝承である。
原型機である〈M4パートリッジ〉と比較した場合、〈M4Fカフドゥ〉は最新モデルに匹敵する性能を持つとされる。
これはフィルニカ王国陸軍の要望に応えてガルテグ連邦の重工業メーカーが仕様変更に応じたためであり、輸出仕様だが低グレード品ではない。
武装
・20ミリ機関砲(電磁式・携行型)
・47ミリハイブリッド狙撃砲(携行型)
・近距離防空ミサイルランチャー/携行型レーダーユニット
・対装甲刺突剣カタール
・短距離徹甲炸裂弾発射筒パイルランチャー
・超硬度重斬刀(サーベルタイプ)
・成形炸薬ウォーピック
など
・〈M4パートリッジ〉/〈M4パートリッジ〉秘密工作仕様
〈M3エヴァンズ〉と共通のフレームを使用したファミリー機。
〈M4Fカフドゥ〉のベースになったバレットナイトであり、分類上は第2世代に属する。
曲線を描くなめらかな装甲が特徴であり、騎士甲冑を思わせるベガニシュ帝国製バレットナイトとは対照的な見た目を持つ。
背部ハードポイントとサブアームによる武装保持、バレットナイト同士の白兵戦を見越した駆動フレームなどの特徴はベガニシュ帝国の〈アイゼンリッター〉を模倣したもの。
こちらは近接戦闘と工兵用途に開発されており、人間と同じマニピュレーター型の両腕を備えている。
専用のスコップやショベルユニットを装備し、短期間で土木建築が可能になっている他、BK同士の白兵戦が可能になっている。
元々は工兵のための機体だったが、バレットナイト同士の近距離戦闘を経験した前線の声により、これをベースにした戦闘仕様に改められた経緯を持つ。
射撃戦に特化した〈M3エヴァンズ〉の駆動フレームの特徴を受け継ぎ、運動性で〈アイゼンリッター〉に劣るものの、パワーでは上回ると評される性能。
最新型のA3になると、フィルニカ王国に輸出されている〈M4Fカフドゥ〉との性能的・仕様的な違いはほとんどない。
フィルニカ王国で登場したのは秘密工作仕様の〈M4パートリッジ〉であり、機体各部が改修されたカスタム機。
これは書類上、廃棄された軍の旧型〈M4パートリッジ〉を、裏ルートで調達された予備部品を用いて修復、最新のA3タイプと同等の水準までカスタムしたもの。
塗装は|群青《ダークブルー》。
動きの硬い〈M4パートリッジ〉で近接格闘戦を行うために装甲を削って軽量化してある他、テロス合金を用いたバックラー・シールドを装備。
この特殊合金はベガニシュ帝国では超硬度重斬刀に利用されているもので、エネルギー消費による強度向上を利用し、あらゆる攻撃を防ぐ盾として利用している。
この合金装甲の盾は極めて高い防御力を誇るが、高密度金属であり、独特の重心を持つため運用には熟達の技量が必要。
武装(秘密工作仕様)
・右腕部:短距離徹甲焼夷弾発射筒パイルランチャー×3
・左腕部:超硬度バックラーシールド
・背部ハードポイント右:超高速運動エネルギーミサイル発射機
・背部ハードポイント左:予備ミサイルチューブ
・腰部ハードポイント右:90ミリ低圧散弾砲
・腰部ハードポイント左:超硬度重斬刀(サーベル)
・〈ホーラドーン〉
首なし騎士。
身長4メートル。
フィルニカ王国初の純国産バレットナイトである。
開発にはフィルニカ・ヘヴィ・インダストリー社が関わっており、鹵獲した〈アイゼンリッター〉のデータが用いられている。
ベガニシュ帝国以外では初めて光波シールドジェネレータの装備に成功している第2世代機で、便宜上、2.5世代に分類される機体。
現在は本格的な配備に向けて、精鋭である山岳猟兵でデータ収集のため先行配備されている。
ホーラドーンとはフィルニカ北部の伝承に登場する死神の名前で、それを見たものの命を奪うとされる。
首なし騎士、デュラハンの類。
古くからベガニシュ帝国の山岳部隊と国境を巡って殺し合ってきた血まみれの歴史から生まれた伝承である。
〈ホーラドーン〉は頭部を持たず、胴体上部にセンサースリットがついた独特の形状を持つ。
この頭部を持たないという構造は直感的操作を阻むため、操作の習熟に時間を要するが、これによって機体全高を抑えつつフレームの大型化に成功した。
優れた駆動フレームによって瞬発力と持久力それぞれが高水準でまとまっており、光波シールドジェネレータで高い防御力まで備えている。
山岳地帯での運用のため軽量化が指向されており、装甲は重要部位に限って厚く、他の末端部は薄くなっている。
このため軽快な機動性を活かした機動射撃を得意とする反面、広い視界と厚い装甲が求められる格闘戦は不得意。
機械設計的な合理性が必ずしも操縦インターフェースに対する最適解ではないケースと言える。
陸軍次期主力BKの開発に当たって、軍が出した要求仕様はシンプルなものだった。
「ベガニシュ帝国の〈アイゼンリッター〉を上回る性能で、山岳地帯で運用可能な機体」。
これに対しては2つの解決案が提示された。
ガルテグ連邦から供与されている〈M4Fカフドゥ〉をベースにした発展改良機と、まったくの新造フレームを用いた新型機である。
天才設計者ラト・イーリイの参加によって後者のアイデアは実用化に至り、その独特の機体形状から〈首なし騎士〉の名を与えられた。
彼が王族の血を引くことは知られていない。
これは軍部のナショナリズムと彼の存在が結びつくことを嫌った国王の指示と言われている。
武装
・胸部固定機銃
・20ミリ電磁機関砲
・47ミリハイブリッド狙撃砲(携行型)
・超硬度重斬刀(サーベル)
・M45自走無反動砲〈ロータスルート〉
装輪式自走無反動砲。
ガルテグ連邦で開発・運用されていた自走砲をフィルニカ王国が輸入したもの。
車体中央部に小型砲塔を載せ、その外側左右に3連装120ミリ無反動砲が1門ずつ固定装備されている。
つまり全部で6つの無反動砲が装備されており、その1つ1つがリボルバー式弾倉によって再装填して5回発射可能。
全部で30発の無反動砲を発射可能であり、絶大な制圧火力を誇る。
バレットナイトに随伴可能な火力支援車両として設計されており、その火力で大陸間戦争でも猛威を振るった。
乗員2名。HMDで操縦。
砲塔の自動化、再装填機構、レーザー照準装置など砲撃性能は充実しているが、装甲は小銃弾を防げる程度しかなく、またバックブラストによる発射位置の露呈などの問題から平時はバレットナイトの狩りの対象。
モデルはM50オントス自走無反動砲。
武装
3連装120ミリ無反動砲(リボルバー弾倉5発)×2
・軽戦車〈クサーリア〉
フィルニカ王国独自開発の空挺戦車。オーソドックスな砲塔形式の装軌戦車の形態を取っている。
装甲材にアルケー樹脂を使って設計された最初期の戦闘車両であり、ベガニシュ帝国が第1世代バレットナイトを開発していた時期、新技術を導入して研究開発していたもの。
従来の装甲材に比べて格段の軽量化が可能となるこの特殊樹脂の恩恵で、恐ろしく軽量化されていながら頑強な車体を誇る。
車体も全長5メートル半以下に抑えられており、フィルニカ王国の国境線の多くを占める険しい山岳地帯での運用に適する。
これらの特徴から輸送ヘリでの吊り下げ輸送が可能であり、高速での展開能力を備えている。
主砲には150ミリガンランチャ-を搭載。
対戦車ミサイル、成形炸薬弾、対人キャニスター弾を発射可能。対戦車ミサイルはレーザー誘導装置によって照準され、タンデム弾頭を採用。
長距離射撃・対装甲兵器の火力をかさばる対戦車ミサイルに依存しているため、小型の車体と相まって継戦能力は低い。
また車体の小型化と軽量素材の使用が祟って、対戦車火器に対する防御力は不足しており、その存在はバレットナイトを代替するものにはなり得なかった。
山岳地帯での火力支援にうってつけの画期的な戦闘車両だったが、より軽量・高機動で長射程の重火器を運用可能な第2世代バレットナイトの登場により、その性能は陳腐化しつつある。
自動装填装置が採用されており、乗員は車長・操縦士・砲手の3名。
〈クサーリア〉とはフィルニカ王国の伝承に登場する人面獣で、おぞましい人食いの怪物とされる。
モデルはM551シェリダン。
武装
・主砲150ミリガンランチャー
・無人銃塔12.7ミリ機銃/発煙弾発射機
・主砲同軸6.8ミリ機銃
・重攻撃ヘリHAH-1〈モラガルファ〉
フィルニカ王国で使用されている大型攻撃ヘリ。
全長26メートル、全高5メートル、翼長9メートル。最高速度は時速300キロメートル。
シングル・ローターとテール部ダクテッド・ファンを組み合わせた電動回転翼機。
フィルニカ王国独自の設計思想により対地攻撃機として巨大化し、バレットナイトと同じアルケー樹脂の軽量で強靱な装甲を持っている。
中腹から突き出た大型スタブウイングに大量の武装を搭載可能であり、その重武装ぶりからガンシップとも呼ばれる。
タンデム型の二人乗りで前部座席に射撃手が、後部座席に操縦士が配置されている。
コクピットは完全に装甲化されており、バレットナイトのそれに近しいセンサーターレットと分散配置された複眼型センサー群によって外界を認識する。
高精度のモーショントラッカー(動態探知)機能を持つ本機は、その巨体に反して隠れ潜む歩兵を駆り出すことが得意。
このセンサーターレットが眼球のように見えることから、〈モラガルファ〉の通称を持つ。
〈モラガルファ〉とはフィルニカにおける民間伝承の一つで、邪眼で見たものを死へ至らしめるという一つ目の妖怪。
重攻撃ヘリの名の通り、通常の攻撃ヘリの1.5倍はあろうかという機体全長、長大な固定翼として揚力を発生させるスタブウイング、ペイロードギリギリにまで武装を搭載した場合には離陸に滑走路が必要となるなど、半ば固定翼機になりかけている。
大型の機体ゆえ対空砲や携帯式防空ミサイルシステムに捉えられやすいが、アルケー樹脂の装甲により、携帯式ミサイル程度なら被弾しても問題なく戦闘が続行可能なほどの重装甲で補っている。
最も脆弱なテール部のダクテッド・ファンでさえ防弾性能を有しており、装薬式機関砲の直撃に易々と耐える。
〈モラガルファ〉はバレットナイトに準ずる技術を転用した攻撃ヘリと言えるが、電脳棺は使用されていないため動力源は大容量パワーセルに限られている。
このため稼働時間が短いという問題を持つが、攻撃ヘリの運用の性質上、問題はないとされる。
フィルニカ王国の王立航空騎兵隊では重攻撃ヘリ〈モラガルファ〉を74機運用している。
強力な対地攻撃機である〈モラガルファ〉の開発には、隣国であるベガニシュ帝国とバナヴィア王国のバナヴィア戦争が深く関係している。
ベガニシュ側が投入した新兵器・|機甲駆体《バレットナイト》による機動戦、包囲殲滅戦によって、バナヴィア王国軍は壊滅的な被害を受けて大敗を喫した。
従来の兵器をその火力と機動性で凌駕するバレットナイトの登場を、隣国であるフィルニカ王国は重く受け止めた。
これまで装輪車両では通行できなかった峻厳な山岳地帯も、この2足歩行兵器は踏破しうる。
ベガニシュ帝国との国境線の大半を天然の要害である大山脈に依存しているフィルニカ王国にとって、バレットナイトの脅威は極めて大きかった。
バレットナイトを撃滅しうる航空機の開発にフィルニカ王国が多大な予算を投じたのは間違いなく、クーデターによる政変などを挟みつつもその実用化まではごく短期間であった。
武装
・機首20ミリ連装機関砲(可動式)×1
スタブウイング装備
・30ミリ機関砲ポッド×2
・4連装空対地ミサイル×2
・20連装ロケットポッド×2
・240ミリ無誘導ロケット弾×4
・〈BP281拳銃〉
ベガニシュ・ピストーレ281。
ベガニシュ帝国陸軍で制式採用されている電磁式自動拳銃。
ベガニシュ帝国で標準的な9ミリ拳銃弾を用い、弾倉に内蔵されたパワーセルからの電力供給で銃弾を加速・投射するコイルガン。
その性質上、実包式に比べて発砲音が静かで使用者の耳に優しいが、ストッピングパワーは苛烈。
複列弾倉で装弾数18発。
・消音特殊拳銃〈ブギーマン〉
ガルテグ連邦の諜報機関が使用する実包式自動拳銃。
5.6ミリ亜音速拳銃弾を使用する。
セミオートで装弾数10発。
銃本体とサイレンサーが一体化したインテグラルタイプで、発砲時の銃声はほとんど生じない。
モデルはスタームルガーMk2。
・〈SMP3短機関銃〉
シュツルム・マシーネン・ピストーレ。
ベガニシュ帝国で開発・製造された短機関銃であり、〈BP281拳銃〉と同じく電磁加速式で9ミリ弾を用いる。
近距離射撃においては、長銃身の自動小銃に匹敵する精密射撃が可能とされる。
見た目はほぼ|騎兵銃《カービン》のそれであり、操作性もこれに準じるとされる。
どうしても火薬の炸裂音がする実包式と異なり、電磁加速式のため発砲音が小さく、特殊部隊の隠密任務に適する。
GCIはフィルニカ王国内での工作活動のため、闇市場を通じて銃身を切り詰めたモデルを調達した。
口径9ミリ、装弾数は15~32発。