・〈アシュラベール〉
深紅の悪鬼。
全高5メートル(ブレードアンテナなし身長4・5メートル)。
一本角のような頭部ブレードアンテナ、両肩の光波シールドジェネレータによる、東洋の鎧武者を思わせるシルエットと全体的に丸みを帯びた装甲が特徴。
ミトラスグループによって開発が進められた第3世代の先進技術実証機であり、世界初のジェット推進機構を内蔵したバレットナイト。
その機体コンセプトは「ジェット推進機構による機動力で戦術的優位を確立し続ける機動兵器」。
第2世代機とは比べものにならない有機的で滑らかな駆動システムを搭載しており、瞬発力と持久力、最大出力すべてで従来機を凌駕している。
大出力の光波シールドジェネレータを二基搭載している他、電気熱ジェット推進機構(膨大な電力によって大気を加熱、推進剤として噴射する)によって絶大な機動力を誇る純粋な近接強襲型駆体。
腰部に電気熱ジェット推進機構が集中しているため、ハードポイントはバックパックと両足のみ。
また格闘戦での操作性向上のため、つま先に指がある独特の構造を持っており、新型人工筋肉と相まって非常に高い運動性を実現。
〈アシュラベール〉最大の特徴はその異様な機体強度。
装甲こそ通常のバレットナイトと同じ素材(アルケー樹脂)を用いているが、駆動フレームはアンゲルシウム製ナノマシン群体で構築されており自己修復する。
これによりエネルギー供給用の超伝導回路の許容出力も上昇しており、従来では使用不可能だった重火器の運用が可能になっている。
あらゆる意味で高負荷・高出力を目指した技術実証機である本機には、武人の蛮用に耐えうる機体強度が求められていた。
技術実証機である本機は多くの改善点を抱えている。
例えば兵装ハードポイントはあくまでウェポンラックに過ぎず、火器管制システムは未搭載のため火器の運用はマニピュレーターによる手動照準のみ。
これは通常のバレットナイトで受けられる照準補正が一切存在しないことを意味しており、兵器システムとしてはお話にならない。
さらに腰の電気熱ジェット推進機構は、「人体に存在しないジェット推進装置を感覚的に制御する」という極めて難易度の高い動作を要求し、メンテナンス性の面でも多くの課題を残している代物である。
つまり〈アシュラベール〉は高い性能を誇るが、優れた才能を持った搭乗者でなければフルスペックを発揮できず、さらにその高出力ゆえ戦闘中にも繊細な制御を要求される――汎用兵器としては欠陥品なのだ。
実質的にエルフリーデ専用機として調整が施され、公爵軍のサンクザーレ侵攻によって実戦投入が決定された。
武装
・肩部光波シールドジェネレータ×2
・腰部ジェット推進可動バインダー×2
・腕部内蔵自在軌道剣パイチェシュヴェールト×2
・超硬度重斬刀(太刀タイプ)×2
・対装甲ナイフ:スティレット×2
オプション
・240ミリ多連装ロケット発射機(特別仕様)
・〈シュツルムドラッヘ〉
白銀の竜。
ベガニシュ帝国の先進技術研究所で開発された次世代機の技術実証機であり、単独で高速飛行が可能な戦域支配機甲駆体《エリア・ドミナンス・バレットナイト》を目指して開発された。
身長8メートル、全長10メートルにもなる大型機であり、通常のバレットナイトよりはるかに大きな機体容積に飛行システムと内蔵火器を詰め込んでいる。
第3世代機の概念を模索する中で建造された機体の一つで、その機体コンセプトは「他を圧倒する火力と機動力による少数での敵地殲滅」である。
テスト中だった技術実証機を急遽、実戦投入したもの。
その存在は恐竜的進化の果てとも、醜悪な肥大化の末路とも評される怪獣じみた大型バレットナイト。
本機を成立させているテクノロジーはすべてが先史文明種《プリカーサー》の遺跡からの発掘技術をベースにしているが、リバースエンジニアリングが上手くいっておらず、主機であるエーテルパルスロケット推進機構(熱線砲や光波シールドジェネレータに使用されている高エネルギー粒子を推進剤に使用する試み)は大型化、動作も不安定であった。
これを補うためのサブシステムとして、別種の発掘技術である抗重力場発生装置リパルサーエンジンを搭載したが、再設計を余儀なくされ機体はさらに大型化している。
再設計の悪影響は駆動システムに及んでおり、二足による走行はほぼ不可能になっている。
このためエーテルパルスロケット推進によるホバリングと弾丸的飛行が移動の基本。
機動兵装翼と呼ばれる複合兵装バインダーに飛行ユニット/射撃ユニット/光波シールドジェネレータを搭載しており、左右四対八枚の翼により低空を飛行可能。
食虫植物の花弁を思わせる異形のマシンであり、そのシルエットは完全に人型を逸脱、これに伴って人機一体の電脳棺《サイバーコフィン》システムでの制御が困難となり――操縦難易度は極めて高い。
安定性に欠けた機体を制御し続けるため、先天的な才能が求められるとさえ言われる始末である。
本機の目指すところは陸上駆逐艦に代表される大艦巨砲主義的な兵器システムを、バレットナイトの関連技術で小型化して運用することにある。
身長4メートルの陸戦兵器である機甲駆体から見れば大型化しすぎた駆体だが、熱線砲を搭載した航空機として見れば小型化に成功している、と言えよう。
その主兵装は指向性エネルギー兵器・熱線砲であり、従来機では不可能だった長時間の連続照射が可能になっている。
武装
・機動兵装翼内蔵式熱線砲×2
・機動兵装翼内蔵光波シールドジェネレータ×2
・機動兵装翼エーテルパルスロケット推進器×4
・腕部五連装超硬度重斬爪×2
・腕部30ミリ機関砲ポッド×2
・尾部副推進機構リパルサーエンジン×1
・脚部エーテルパルスロケット推進機構×6
〈ブリッツリッター〉
精鋭部隊向けの上位機種として開発されたバレットナイト。
第3世代の開発過程での技術的成果が還元された2.5世代機と呼ぶべき第2世代BK。
駆動フレームや電子機器などの基本的な部品は〈アイゼンリッター〉と共有化されており、性能的には〈アイゼンリッター〉の上位互換。
光波シールドジェネレータの搭載によるBK同士の白兵戦能力を重視して設計されている。
皇帝近衛師団や精鋭部隊を中心に配備が進められており、エルフリーデとミリアムのかつての乗機もこの機体だった。
性能向上型である〈ブリッツリッター〉では素材や駆動系の見直しが図られており、装甲全体の軽量化と次世代型人工筋肉による高い瞬発力が特徴。
ベガニシュ帝国の固有兵器である指向性エネルギー兵器・熱線砲の運用能力も備えている。
総じてその戦闘能力は初期型〈アイゼンリッター〉2~3機分に匹敵する。
武装
・胸部固定6.8ミリ機関銃
・携行型熱線砲
・12.7ミリ重機関銃
・20ミリ機関砲
・40ミリ狙撃砲
・80ミリ自動迫撃砲(グレネードランチャー)
・光波シールドジェネレータ
・対装甲ナイフ:スティレット
・超硬度重斬刀
・〈パンツァーゾルダート〉
ベガニシュ帝国で最初に実用化された人型機動兵器。
先史文明種《プリカーサー》の遺産であるサイバーコフィンと、先史文明の自動生産プラントの限定制御に成功したことがその開発の発端。
電磁式機関銃の普及や火砲の精度向上に伴い、この世界の軍事技術は急速に発展していった。
いち早く戦争技術の進化に気づいた帝国は、これをさらに克服できる兵装として、歩兵を3~4メートル大の巨人へと拡張強化する機甲駆体システムを提唱。
この効率的戦争システムは他国の嘲笑を余所に実用段階にこぎ着け、対反乱作戦でのブラッシュアップを経てバナヴィア王国併合でその威力を発揮した。
機銃や砲撃をものともせず、戦場を駆け巡る異形の甲冑は、その様子を弾丸のごとき騎士――バレットナイトと称された。
〈パンツァーゾルダート〉は黎明期の機甲駆体であり、現在、帝国ではすでに〈アイゼンリッター〉にその地位を明け渡している。
とはいえその正面装甲は堅牢であり、前線から引退した〈パンツァーゾルダート〉は後方警備任務などで使用されている。
装甲化された電脳棺から手足が生えたような見た目で、ブリキの兵隊と揶揄される。
武装
・胸部固定6.8ミリ機関銃(歩兵用小銃と弾薬共通)
・12.7ミリ重機関銃(極めて高速で発射される電磁投射砲。電源は機体)
・〈アイゼンリッター〉
帝国製第二世代駆体の傑作機であり、大陸全土に配備されているベガニシュ帝国陸軍の主力バレットナイト。装甲化された電脳棺を中心にした駆動フレームにより、第一世代に比べて等身が高いバランスになっている。
騎士人形。
現在、帝国で運用されている駆体のほとんどが第二世代機である。
第一世代機よりも高出力化した駆動フレームを持ち、より三次元的な戦闘機動が可能になっている他、ハードポイントに複数の武器をマウントできるのが特徴。
モジュラー構造によりパーツの交換やアップグレードが容易になり、現地でのメンテナンス簡便化している。
最初期型で防御性能や機動力の不足しているA型、光波シールドジェネレータ搭載で現行機のD型、熱線砲の運用が可能になった最新鋭のE型などに別れている。
背部のハードポイントにはサブアームが付属しており、重機関銃や自動迫撃砲ならばそのまま使用可能。
また電磁機関砲と重斬刀の持ち替えのような動作にも対応しており、アタッチメントによって柔軟に対応可能。
武装
・胸部固定6.8ミリ機関銃(歩兵用小銃と弾薬共通)
・12.7ミリ重機関銃
・20ミリ機関砲
・40ミリ狙撃砲
・80ミリ自動迫撃砲(グレネードランチャー)
・光波シールドジェネレータ
・対装甲ナイフ:スティレット
・超硬度重斬刀
・携行型熱線砲