この小説を読んだ者は幸せなはずだ。
小説が満たされないものへの慰めならば、僕はこの作品に強く心を慰められました。
金輪際先生も、まことちゃんも、兎谷くんも、いずれもモデルとなった人物とお話した美味しい立場で書籍版を読むと一層味わいが深く、思わず友人のうさぎや先生に国試前日に「めちゃ面白かったから終わったら読むと良いぜ!」というラインを送りつけてしまいました。
いや本当に世界で十指に入るくらいには美味しい立場で読んでいるのでは?
作品をちゃんと読んだなら感想を書く暇があれば自分の原稿に立ち向かえって話になるし、それに関してはマジで反論できないのですが、書きたくなったので書くのです。こんなに贅沢な読書体験をさせていただいたのですから。


さてここから先はネタバレを含む感想になるのですこし改行













やっぱり圧巻ですよね。あとがき以降の怒涛の展開。あれが始まった瞬間に「トゥルー突入キタコレ!!!!!」ってなりません? 僕はなりました。僕の中のこう、元気いっぱいの読書少年が小躍りしてしまいました。しかもあれ物理書籍でやったのが大きくて、物理書籍であの後書きを見た瞬間にわずかに手の中に残るページの質量だけでもうニヤニヤしちゃうんですよね。これは終わらない。まだあるんだ。本当の終わりに向けて月を撃つ物語が。そうやってワクワクさせちゃうのは本当に罪な作品ですよ。これで何人の壁にぶつかる作家を勇気づけて魔道へ呼び戻してしまうことか。本当に素敵なことです。
呼び戻すと言えば現実と超現実が幾度も交差する構成。これこそ現代の奇書と呼ばれる最たる原因ですよね。何度安心しても足元をすくってきて、そのうち上下左右も分からない物語の激流になって読者を飲み込む。読者の楽園にたどり着けるのでしょうか、作家の地獄にたどり着くのでしょうか。あるいは何も変わらない現実なんでしょうか。けど、この大きな流れに飲み込まれてたどり着いた先にはたしかに幸せな時間を刻んだ自分が居るんですよね。命が続いている間に、あと何回月を撃てるだろうか、月を撃って望んだものが手に入るのだろうか。それでも何度でも月を目指すあの二人の関係性が尊く、愛おしいものでした。
絶対小説はスパロボで言うところのスーパー系作家小説みたいなところがあって、現実を超えたアイテムと幻想から生まれた強大な力を振るいながら絶望と向き合って超克する物語だと思うんですよね。必中熱血ボスキラーみたいなですね、一切合財を装甲で受け止めて突き進む情熱の巨人みたいなね、そういう感じなんですよ。そもそも兎谷くんも金輪際先生も特別かつ非凡な存在で、その優れた能力ゆえの悩みや苦しみがあるんですよ。けどこれがまた最高で、読んでいる間はきっと誰しもその悲哀みたいなものに共感してしまうんですよ。「俺めっちゃ好きだけどこれ伝わるかな俺好きだけど~!」みたいなタチの悪いファンマインドを発生させてしまいそうになったものの、読むほどにこれは「不満・不幸を抱えた人に刺さる」って思えました。半年で悩むとかのあたりはこう、若干の優しさみたいなのも感じ、うさぎやぁ~!となりましたが、その後に金輪際先生の濃厚な苦悩を見せられたことで、二作目の壁に悩んでいる私めが調子に乗ってしまいまことに申し訳ございませんでした……ってうずくまりました。
作家の生き方だけなら一般的じゃないですが、作家の苦闘苦悩は思ったよりも共感しやすいんじゃないだろうかって思いが強くなりました。自らの創作にも生かしていきたいと思います。
最高な作品をありがとうございました。