昨日公開のジョーカーを見てきました。
とにかくやばいですね。
圧倒的な共感を伴ってなにもない男が最悪の街の救世主になって蘇る。
メシアですよ奴は。
搾取されて限界まで追い詰められて貧しさと抑圧と暴力に怯える人々にとって、あの男は間違いなくメシアなんですよ。
たとえ実際問題として自分たちが救われることが無いと知っていても、自分以外の人間にも自分の感じる苦痛を伝えることができれば、人間はそこに救いを見出してしまうんですよ。辛いのは俺だけじゃ、私だけじゃないんだって。だから奴はメシアなんです。この世の救いを諦めるしか無い人々の前に舞い降りた救済者なんです。
もう守りたいものも何もない無敵の存在となったジョーカーが、人々の目の前で復活し、狂乱の世界を作り上げていく。バットマンが戦うに足る最悪の街が完璧に形成されていく。なにもないから。それどころかマイナスだから。不幸ばかりをねじ込まれて良いことなどなにもない人生の中で、彼は皆から愛されて祝福されちゃったんですよ。それは誰にでも共感できてしまう筋立てで、最悪の誕生が描かれてしまったということで。もうこんなの世界中で見られたら、誰だってピエロの仮面で立ち上がりたくなりますよ。俺だってピエロの仮面つけたくなった。
誰だって辛い。手に入ったしょっぱい拳銃一丁で目の前の世界を壊してみたくなるんです。自暴自棄になれない理由を、皆が持てるような社会にしないと、こういったものはなくならない。いや、何しようと亡くならないと思うんですよ。だって不満なんてどうあがいても出るもの。今は確かに溜まりやすい世の中だから、本当に簡単に爆発してしまうだろうけど。そうでなくたって絶対に危ないよね。
ただ一丁の拳銃と練り上げられた純粋な悪意で、世界は変えられるかも知れない。全ての人にその希望を見せる最悪のヒーロー映画でした。