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どの程度?①

友達、恋人、親、などとの間で取り交わされる約束ごと、皆さんはちゃんと守りますか?
例えば、四月一日 午前九時 駅前 改札口集合、という約束をした時。そもそも約束を忘れた、という人もいるかもしれません。面倒で忘れたふりをするとか、エイプリルフールを理由にする。仮病を使ってみたり、寝坊して時間に間に合わなかったり。ここら辺は時間に来ない人に責任がありますね。
では、途中で事故に遭った、親か誰かの叱責を数時間に渡り受けた、その上携帯は壊れたか没収されたかで連絡手段はない。
さて、どうしますか?一時間遅れてもその場所に行きますか、それとも諦めて、かくかくしかじかの理由から遅れたまたは行けなかった、申し訳ないで、済ませますかね。
いずれにせよ大抵は・・・よほどのことでない限りはそれで一件落着です。ひょっとして、約束の内容・・・ちょっとお食事に程度の約束だった時は、同情されることもあるかもしれません。でも、時代や身分が違ったら、どうなるでしょうか?
菊花の契りという物語では、友人と、重陽節、つまりは陰暦の九月九日に再会する約束をするのですが、武士の「契り(やらしい方じゃないです、約束です)」のもつ意味の重要さから、悲劇で幕を閉じるわけですが・・・

以下、雨月物語 菊花の契りのほぼ全文ネタバレになります。前回ので懲りました。自分にはやはり紹介文とか要約といった才能は皆無です。はい。今回は開き直って、前後編に独断と偏見で分けて、やっつけてしまいます。

文章は始めに、軽薄な人と交際してはならないと、いきなりズバリと来ます。柳は茂りやすいが強風が吹けばひとたまりも無いように、軽薄な人は何かあればすぐに離れていくからだと。しかも柳は毎年葉を付けるけれど、軽薄な人は会いに来ることは絶えてない。

ここは多分、今の世の中でも通用しますね。軽薄な人、と言うとちょっと古臭い気もしますが。

現兵庫県、昔の播磨国の加古というところに、丈部(はせべ) 左門という博学な人がいて、貧乏だが心は清潔(いわゆる清貧)大好きな書物のほかの物は煩わしいと嫌ったらしい。

・・・アレですね。古典的なミニマリストってやつですかね。しかも、この人には奥さんはいなくて年老いた母親との二人暮らし。そのおばあさんがまた、賢明な人で、糸紡ぎなどをしながら、息子の勉強したい気持ちを支えるわけです。他の家族に妹がいますが、それは同じ里の富み栄えた佐用家に嫁いでいます。
(本筋とは関係ないですが、この佐用家の人というのも賢い人のようで、丈部親子の賢明さを慕い、例の妹を迎えて親族になると、何かにつけて物を送ったようです。もちろん、丈部は一家の生計のために他人の世話を受けることはできないとか言って受け取ることはないわけですが(笑)、賢明な人を賢明だと見いだせるというのも、なかなか稀有なことのような気がしますね)

そんなある日、教養人丈部は同じ里の誰それの(まあモブですね)屋敷を訪問して、まあ・・・要は四方山話に花を咲かせていたんですね。そうすると、壁を隔てた向こう側から、人の非常に苦しそうな声が聞こえてくるのです。

今ならどちらかといったらホラーになるか、さもなければ主人公丈部が口封じで殺害され、名探偵が出て来ちゃうような感じですが、どちらでもありません。幽霊や監禁ではなく、 困っているところを助けただけです。

誰それさん(モブ)は、武士っぽい気風があるからと、一夜の宿を貸してあげることにしましたが、それがその夜から酷い熱を出して、立ち歩くのもままならないのが可哀想に思って三日、四日・・・

BLならそろそろなにがしか起こりそうですが、起こりません(笑)それどころか、主はどこの人かもよくわからないのを泊めてしまったことを後悔していると、お手本のような男丈部左門に言うわけです。
すると丈部 左門は、お気の毒、不安に思うのもごもっともとナニガシを擁護した上で、けれど、知人のない旅の途中で病に伏すのは心細いだろうから、自分も様子を看たいと申し出ます。
しかし主人は止めます。疫病は人を破壊させるものだから、家の人もその部屋に立ち入らせない、だから、立ち寄って身を害し給ふことなかれ、と。

触らぬ神に祟りなし的扱いを受ける病気、それを丈部は一笑に付します。曰く、人の生死は天命によるもので、人力でなんとかなるものではない、どんな病気なのか伝えてあげるべきであり、立ち入らないといったことは無知なものの考えてある、自分はその考えに従わない、と。

病名は知りたいですよね。咳き込んでいたら引きこもれは、昔の人でもダメだと知っていたようです(笑)

さて、丈部が部屋に入り、病人を見ると、ナニガシが語ったのと違わず普通の人( 多分、ここでは農民)と思えないけれど、それが酷い有様・・・顔は黄色く、肌が黒く痩せた状態で、ひどく苦しみながら床に伏しています。その人物は丈部の方を見て、「湯ひとつ恵み給へ」

どれだけ放置されていたんでしょうか、酷いことですが仕方なかったでしょう。丈部はそんな状態の人の近くに寄って、心配はいらない、必ずお救いしようと言います。
そして博学の丈部左門が本領を発揮します。薬を選んで自分で処方を考え、(当時の儒者、学者は医学の心得がある人が多かったらしい。決して素人ではないので悪しからず)、お粥を与え、実の兄弟のように看病します。
その厚意に武士は涙を流しながら、これまでよく、行きずりの旅人を面倒見て下さった、死すとも御心(ご親切)に報恩いたします、というと、丈部はその言葉を諌め、疫病は日数が定まっていて、その期間を過ぎれば生命に問題はない、であるから、私が毎日参上し、看病いたしますから心弱いことはおっしゃるな、と、誠実に約束します。その後、細やかに気遣いをしていると、病も軽くなり、気分も楽になったところで、武士はちょっとひどいモブのナニガシにも心からお礼をいい、左門の善行を尊敬し、その職業をたずね、自分もようやくその身分を明かします。
曰く、 出雲国(島根県)松江の郷に成人した、赤穴 宗右衛門というもので、兵法書を会得したため、富田の城主塩冶(えんや) 掃部介(かもんのすけ)は自分を師匠として物を学んだ(これはほとんどただの自慢ですね)。で、自分は近江の国 佐々木 氏綱への内密な使いに選ばれ、佐々木の屋敷にいる間に、 前の城主である尼子経久が大晦日の夜不意に城を乗っ取り、掃部介も討ち死にしてしまった。もともと出雲は佐々木の持国であり、塩冶は守護代であったから、私(もちろん赤穴さん)は、豪族と力を合わせ、経久をほろぼすよう氏綱に進言したけれども、一見勇猛であったものの、実は臆病で愚かな大将でだらしがない人だった。
(原文、外勇にして内怯えたる愚将。普通にひどいこと言ってます)
しかもその「愚将」は赤穴を近江国、つまり自分の領地に留まらせます。
それに対し赤穴は、理由もないところに長くはいまいと、体一つ、そっと国へ帰ろうとする道で、 この病にかかってしまったというあらまし。こんな経緯もあって、貴君(我らが丈部)に世話になったのは見に余るご恩であるから、あと半生の命を以って必ず報恩申し上げる、と言います。
我らが聖人君子丈部が、まさか死ぬまで仕えろなんて言うはずもなく、人の不幸を見捨てることができずに助けるのは、人間の本来持っている心であるのだから、深い感謝の言葉を受けるいわれはない、もう少し滞在して養生するといい、と。

すごい人です!当然のことだと嘯き、暗にできない人をこき下ろしているくせにあまりイヤミがない。武士赤穴はその誠実な言葉を力に、日を経るにつれ体も普通に戻っていきます。
この頃になると、我らが大将左門は良い友人を得たと、武士赤穴と昼も夜も語りあい、そうこうするうちに赤穴も相当な知識人であり、理解力に優れていることを知り、お互いに意気投合して、それぞれに感心したり喜んだりで、ついに兄弟の盃・・・というとアレですが、つまりは義兄弟の約束を交わします。赤穴の方が5歳歳上であるから、兄であるべき礼儀を受け入れて(ここは時代ですね。戦国らへんの話を江戸の人が書いているので)、左門に、自分は父母と別れてしまってから長くなる、賢弟(左門)の老母は即ち自分の母であるので、改めてご挨拶申し上げたい、老母を憐れみ、子供っぽい私の気持ちを受け入れてくれるか、と問います。

さて、なんと答えて結果どうなったかは、明日か・・・どこかそこらへんに載せます。約束は、しなければ破ることもありませんからね。
(それを軽薄というかもしれません 笑)

注意!
適宜言葉を補ったりもしてます、全訳っぽいですけど、テストで書いたら減点で点数ないくらいのものなので、本当に軽い娯楽的に捉えてください。一応、申し訳に参考にしているのは新潮日本古典集の、雨月物語・癖物語というものです。参考にしたなんて言ったら殺されそうですが 笑

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