https://kakuyomu.jp/works/1177354054888825836 の反省会会場です。
みなさんからの感想や疑問、改善点等お待ちしているので読んでください。
長かった。
本当に長かった。
打ち切りとかプロットを端折るとかも一切なく、連載開始時に予定していたことをやり切った状態です。
嘘偽りなくこれが俺の今の実力です。至らぬところ、書き落としたところ、お見苦しいところがたくさんあったと思います。最後まで読んでくださった方々には感謝の言葉もありません。大変だったでしょう、ありがとね、小銭ぐらいなら出すけどいりますか?
そんなわけで、大変頑張って書いた本作ですが、今回は何でこんな感じになっちゃったのか振り返る形にします。連載期間について・構成・キャラクターと、軽い解説と反省をつらつらと述べていくので、みなさんも作品へのリアクションがあれば好きなように書いていってください。コメント欄でもツイッターのDMでもマシュマロでもどこでも構いません。
1.連載期間について
まず一番はやっぱり、「何で二年も(投稿前の構想含めると三年)かかったのか?」ですよね。
これはね、書くのが怖かったからです。
『ホラーの練習』はホラーのふりをして恐怖について語るお話です。それは取りも直さず「自分にとっての恐怖とは何か」を語る作業に他ならなかった。それが怖かった。別に本作に何か克明な実話が含まれているわけではありません。本当にあったのは東中で昔誰かが死んだことと、西武何とか線でお兄さんがびょんびょん吹っ飛ばされてたことだけ。怖かったのは、怖いことを書くこと自体でした。語り得ぬ感情を語り得ぬことを恐れ、wordから逃げ出す。それは自分の書く技術の無さ故でもあったし、精神の弱さ故でもあった。恐怖を語る為に必要な文字数は自分にとって余りにも巨大で、とても管理できないと諦めて酒に逃げた夜が何度あったことか。たまに書けると思う日が来るのを待って書くだけ。それ以外の日は毎日「『ホラーの練習』が書けない」と後ろめたい思いで過ごしていました二年間。普通に生きてても短編を書いてても、「逃げている」という気持ちが付いて離れなかった。でも、その毎日降り積もる後ろめたさに比べても、恐怖を書くのは怖かった。ミハルちゃんが終盤包丁を手に取ったのは、俺にとって一番怖い記憶が「包丁を持ってこちらにやってくる家族」だったからです。
そして、『ホラーの練習』は時代劇でもあります。
協調性という秘剣一つを頼りに、中学生という時代を渡り歩いた侍の物語。少女は未熟で独善的で、しかし悲壮な決意を固め強大な敵に立ち向かう、俺の母校で。これも辛かった。別に大した過去ではないんですが、あの頃のことはもう誰にも話したくない。臆病で卑怯ではあるが誠実で善良でもある彼女を書いていると、ただただしょうもなかったあの頃の自分がチクチク刺されているようだった。最後には自分だけの真実に辿り着き、愛すべき存在を見つける彼女を書くことがただ悔しい日もあった。そういう蟠り全部合わせても「もうこれは終わった時代の話なんだ」という諦観が制作自体への虚無感を抱かせることも嫌だった。あの頃の記憶に苛まれながら、生々しく現在を生きる彼女達を書く。これも自分が傷付くことが怖くて、辛いことった。
ただ、これらのことは全部やらなければならないことだったと思っています。
自分はお話を書くことは使命だと思っています。自分から自分に対して課した使命なので、必ず果たさなければならなかった。「じゃあ、もっと早く書けよ」って話なんですが。仕事とか生活も自分にとっては十分辛くて……。「仕事に比べたら、使命なんて」と刃牙の梢江ちゃんも言ってますしね。
2.構成
次は「何でこんな地味になっちゃったのか?」です。
まず本作では練習と言うコンセプトの元、「各章でそれぞれ別の系統のホラーをやる」という意図の章立てでした。内訳は以下の通りです。
一=異次元系
二=土俗系
三=ネット系
四=呪い系
五=妖怪系
六=幽霊系
七=全部混ぜ
八=オリジナル
このうち「怪談五と六が一緒になってるのは結局何で?」と思った方もいたかもしれません。
正直に言うと上手く行かなかった部分です。この章においては妖怪=輪ゴムの付喪神と、幽霊=付喪神(とソコツネさん)に輪ゴムを飛ばすハルカっちの霊が怪異として存在しています。後者の印象が全然残らなかったんじゃないかな。書いた時には既にそう思っていました。でも、この章から視点変更やソコツネクラスタとの暗闘、ヤマダさん等周囲のキャラクターのドラマ開始等の要素も加わり、当時はまだ読み易い文字数とか気にしていたので「これ以上詰め込めないよ!」と投稿しちゃいました。しちゃったんだよね(笑)。笑うな。はい。一応、㊙情報が発狂した時も輪ゴムに関してだけ二つツイートしてますが……まあ伝わりませんでしたよね……。すいませんでした。
と、大分脱線しましたが、練習ありきでやっていたので、本作のプロットは読み進めてもらう為の魅力となるものを設定しませんでした。
特に序盤。我ながら凄いよね、何あの地味な始まり方。わけわからん主人公・わけわからんヒロイン・わけわからん怪異がわけわからんままベーッと出されるだけ。当然のように離脱率は阿鼻叫喚。
でも、そうしたかったんです。
あのタイトル、あのキャッチコピー、あのあらすじ、あの出だしで、それでもこの先にある“面白さ”と彼女達の秘めた思いに気付いてもらいたかった。そういう人達にだけ読んでもらえればいいと本気で思っていた、二年前は。その時の思いに逆らいたくなかったので、結局このまま書きました。
今は「せめて、もうちょっと百合っぽいパート増やした方がよかったんじゃないの?」とか「確かにテーマやプロット上怖くない怪談を書くの大事だけど、ちゃんと怖いシーンを書いてメリハリをつけるべきでしょ、ホラーなんだから」とか思っています。
後、振り返ることとしては、一応本作では「マナは何をしようとしているのか」というのを大きな柱として、様々な謎を追う形で読者さんに読み進めてもらうフックとしていたわけですが、これもどうしたらいいか全然わからなかった。自分、難しいことが考えられないッス。
能力的な問題で『謎の提示→解答の提示』しか管理できなかった(できてないかも)のですが、やっぱり「謎は解答を予想し得るものかどうか」って大事なんですかね。自分わからないッス。ミステリーとかも「ワッ大変な事件ポル! 探偵しゃん頑張って解決して欲しいポル!」って思いながら読むタイプなので。後、自分はホラーって「わからない」ことが一番怖いかなと思うので、全部書かなかったり筋を通さなかったりしたんですが、ストレスになってしまいましたか?
まあ何にせよ、謎の使い方については、今後も使うなら特に要勉強ですね。
3.キャラクター
それから「何でこんな奴らを書こうと思ったの?」ですね。
まず前提として本作のキャラの関係性のモデルは『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い』から取っています。知らない方の為に解説しておくと、これは当初ぼっちの女の子が痛々しく鬱屈した高校生活を送るギャグ漫画として有名だったのですが、後年主人公の特殊なキャラクターが周りに受け入れられて友達ができていく展開になったんです。この奇跡的で愛らしい人間模様が当時(2019~2020年ぐらい)の俺にバカウケで「これは良い!」と取り入れることにしました。しかし、『ホラーの練習』を書けなくなるにつれ『ワタモテ』を追うのも辛くなり、もうずっと読んでいません。これからようやくあの時の続きを読めそうです。名前も当該のキャラクターから一文字変えたものになっているのですが、わかりますか? わからなかったらここまでの数行は全部忘れてもらって結構です。ということで、本作では『ワタモテ』の中でも大好きな関係性、具体的に言うとマコっちと田村ゆり、南さんにスポットを当てたものとなっています、わからない方はこの行も忘れてもらって結構です。
まあそれで何がしたかったかと言うと、「やってしまった人間達の本気のごめんなさい」を書きたかったんです。本作の参考となった百合ホラーの一つに『裏世界ピクニック』があります。これ面白い作品なんですが、そこで主人公とヒロインの関係がよく「共犯者」と現わされているので、そこから変形させ本作ではミハルとマナの関係を「贖罪者」として設定しました。お互いに同じ罪を抱え、償う為に大暴走。自己肯定感は最底辺なのに尊大で傲慢。そんな二人のお互いに独善的な共感と慈しみ合いが本作の百合の柱だったんですね~。そんなんどうでもいいから、もっとイチャイチャさせるべきだった!!!
で、まあ百合としての狙いはそんな感じになっちゃいましたが、ドラマとしての贖罪のあり方はまあまあ書けたんじゃないかと思います。自分の精一杯です。
以下は各キャラへの反省です。
ミハルちゃん
コミュ強に見せたかったが、作者のコミュ力が低すぎて、何かゴリ押しのコミュしかしてなかった。まあ本当にコミュ力高かったらあんなことになってないから、間違ってはないか。
本当に凄い子でしたね。ビビり役もやるし、高度な情報戦(爆)もやるし、何より全力で間違えられる。
本当に二年間ずっと彼女のことを考えていました。練習する子どもとしての彼女は書きき切ったと思います。
でも多分これからも彼女を書く機会があるでしょう。それぐらい彼女のことが好きです。
裏設定と言えば、「話しかけられば男女問わず100%聞きたくなる」レベルで美人、ということですかね。本編中だとコイトやハラダの反応ぐらいからしか察せませんが。
あとこんな筋肉除霊術の使い手になるんだったら、オカルト知識じゃなくて鎖帷子とか身に付けた方が良かったよね。
マナ
何か……もっと書きたかったッス。
奔放なところや悪いところ、ヒロインとしての役割は書けたけど、可愛いところが足りなかったと思う。
怪談もう一個多くても良かったよね。百合百合する為の怪談。でも差し込む余地が思いつかなくて……。
ちなみにマスクは変化を象徴する小道具の一つで、仕込みは何も考えてませんでした。ソバカスを気にしている説の他、防寒具説も有ると思います。
ヤマダさん(ユキ)
反省の多いキャラ1。
皆さんにはどういう子に見えたでしょうか?
俺としては「悪い子じゃないけどちょっと関わりたくないかも」って位の温度感にしたかったんですが、そう書けた自信が無い。嫌いになって欲しくはないけど、一方的に正しい立場にあって共感できるキャラだとも思われたくなくて。難しかったです。「そこまで複雑な設定や立場である必要あったか?」という視点もありますね。ただ、この時期特有の人生で初めて「友達の仲良し度」の重み付けを自分の意志で変える瞬間、その切なさとか悲しさを書きたかったので、このような造形としました。もっと細やかに人間関係を書ける腕が欲しかった……。
ゴミさん
お前がもっとしっかり教室見とったらこんなんならんかったと違うんか!?
そうなんですが、まあ彼女もトラウマになってる奴のいる教室なんか見回したくも無かったんですね。
というか、気付きにくいように頭を弄られてるんで。
後、友達といる時以外は男性声優とゲーム実況者のこと考えています。
まあツッコミどころの多いキャラになってしまいましたが、お話を畳む為には仕方なかったんだ……。
ハラダ&タナカ
百合男子ーズ。ハラダは最初は百合に挟まろうとした罪を犯し、物理的に「挟まっちまった」になる予定の役でした。絶対スベってたのでやらんで良かった……。タナカは本当ならミハルとマナの深まった関係に対し、「気持ち悪いんだよお前ら」とか罵倒して生々しくもミハルちゃんに二人の関係性を自覚させる役割がありました。が、全然二人がイチャイチャしなかったので、ボツに。聖剣タナカブレードを授与するだけの仕事となりました。ちなみに(二回目)、タナカブレードは結局返却されませんでした。
ハルカっち
カスでしたね~。でも世の中にはこういう奴もいるんです。
俺も彼女のめっちゃショボい版だった。
コイト
反省の多いキャラ2。
要するに「ミハルちゃんを襲う恐怖」の類型の一つとして出てきたわけですが、そんな気楽に出していいキャラじゃなかった。小児性愛者・性犯罪者の書き方については後になってすごく悩みました。彼らへの先入観、差別、あるべき扱い方。しかし、そこに寄り添おうとすればするほど「それはミハルちゃんに寄り添えてないよね」と、自分の公正性に欠けたバランス感覚を自覚させられることが何度もありました。散々悩んだんですが、結局「チャイルドマレスターはパクられて欲しい」という素朴な思いを優先してしまい、あのような形になりました。この問題に関してはいずれちゃんと勉強して書こうと思います。
うーみん
元ネタは韓国のホラー映画『哭声(コクソン)』です。國村準が出てたやつ。「どの辺が?」っていうとネタバレになるので伏せます。
これもまあ、ネットを介した男性と若年女性の交流、そこに潜む恐ろしさを書きたかったんですが、扱いきれませんでした。いかな長編と言えども詰め込める上限というものがあるのでしょう。技量の無い素人にとっては特に。
ちなみに(三回目)、本編終了後はミハルとうーみんの交流は普通に復活します。「友達だと思っています」って言ってたし、ミハルちゃんはそういう子だからね。むしろお互いにとって最も重要な友達の一人になり、高校生になったあいつが普通に人とコミュニケーション取っているのはミハルちゃんに教えてもらったからです。あいつにとっても本作は練習だったということですね。
最後に
のんのんと書き連ねましたが、これぐらいにしておきます。
再度になりますが、最後までお付き合いいただいた方々には本当に感謝しています。本当に好きなようにやりました。皆さんも好きなように受け止めてください。もし、何か感想や疑問点、アドバイス等あればよろしくお願いします。「アレ何だったの?」とか「アイツは何がしたかったの?」とかお気軽に聞いてください。何でも答えますので。
また、今後についてですが、今回の反省を受け実力不足が身に染みたので、しばらく長編の書き方を勉強しようと思います。具体的にはよくネットで見かけるハリウッド脚本術系、ロバート・マッキーとかシド・フィールドとか。それ以外にも何か実践的な小説の創作術の本とかあれば是非教えてください。
あとは、年末のカクヨムコン短編賞に向けて1~2本ぐらいラブコメの練習をして、余裕があれば“使命”の短編も一本書きたいと思っています。
もしよろしければ、そちらもお付き合いください。
それでは、お疲れさまでした。