『看取られ千字文』大反省会【おまけもあるよ!】

「短編なら早く終わるだろ」

「全く違う設定人物×10とか地獄じゃん!」

実は去年の夏から脳が動く時にちょこちょこ書いていたのですが、投稿し始めてから書いた7以降はやはり悪夢のように辛い作業でした。例え1000字であろうと書くことの恐ろしさは長編と何も変わらず、ただただ打ちのめされる時間を味わいました。
一番苦労したことは「言うほど死ぬときにナオンと話せて嬉しいか?」という暗闇を打ち払うことです。その為に自ら設定したレギュレーションは以下の通りです。

①:現代で現実。
②:お互いほぼ面識の無い二人である。
③:女の子はお前の為に泣かない。

『これに従って産み出された空虚さを積み重ねることで得られる読了後の清涼感が本作の面白さだ』……という目論見もありましたが多くは自分を守る為でした。レギュレーションを逆手に取った8を書くのは本当に辛く厳しい経験になりました。

読んだ感じ、どうでしたでしょうか?
本家『看取られ音声』の素晴らしさには足元にも及びませんでしたが、これだけ無な死に様が集まると気持ちよくありませんか?

正直1の女子高生の時点でスパッと終わらせた方がネタとして切れ味が良かったと思いますが、多い方がグルーブ感出るだろうとキリよく10までやりました。中身は1と2と3と10だけは最初から決めていて、後はネタができ次第と言う形です。
各話の感想を短くまとめるとこんな感じです。

1→自信作。膝枕はキモい上に露悪的だと思ってはいたけど、書いてて浸れたよね……。
2→チンピラの謎の語彙が商売の何に活かされていたか想像すると嬉しくなる。
3→これが一番憧れるシチュエーション。気合入れ過ぎてグチャった感……あり!
4→構図は美しかった。オチが露骨過ぎか。
5→「エクスキューズが提供され続ける」ってワンアイデアだけで走ったのは微妙だったかも
6→楽しかったですよね?
7→初めはただの畜生婆さんだったけど、コンセプトに合わないと思ってこうした。
8→自分の死を他人に押し付けたい願望は9と通じる。差は伝えたい思想の静寂さと言うか、理解不可能性。
9→こういうボクっ娘も好きだ……。完成度についてはもっとできることがあったんじゃない?
10→元ネタは芥川龍之介『黄黍夢』。締めなんで、ちょっと皮肉っぽくしたくて。

みなさんはどの子が良かったですか?
私は3、6、9かな……4、7はちょっと苦手かも、2はあの竹を割ったような性格に友達になっても飯屋で机に財布置いたままトイレ行くと平気で中身抜く倫理観が同居してますよ。

そろそろ真面目な反省をすると、やはりショートショートにインスタントに死を詰め込んで、そこに確かにあった命を書けるか、情緒的な交流を描けるか、そこで1000字という縛りは適切なのかと言うところです。語呂の良さだけで決めてしまったので……。例えば原稿用紙4枚分、あと200字あったらよっぽど出来が違ったかもしれない。でも私は頭が終わってるので1000字と決めたら後は試行もせずに突っ走ってしまった。書いたら出すだけ。コレ良くなイ。

自分は誤字脱字や設定の矛盾以外の推敲ができないと気付いてからどれくらい経ったろう。構成やテーマ、作品の立ち位置みたいなことが全く考えられない。考えようとしても考えたうちから忘れてしまう。怖ろしくて一歩も踏み込めない領域が私には多すぎる。


やはり今後もネットでお話やって行く為にはもっと複雑なことが考えられるようにならないといけないなあ……という感じです。

私からの反省は以上です。
本作を読んでくださったみなさま、ありがとうございました。
何か改善点や疑問点などありましたら忌憚なくコメント欄にお書きください。
みんなで最高の反省会にしましょうね。



今後の予定ですが、ほっぽったままのホラーの練習の年内完結を目指します。
短編についてはカクヨムコンテスト用の短編を一本上げる予定です。


最後に、原点たる『看取られ音声』、そして看取られの概念に百万の感謝を!






・おまけ:10の為に作った『枕中記』の書き下し

原文は中國哲學書電子化計劃にあった標点本です。
※語釈も無いしマジで適当に読んでるので真に受けないでください。

【導入】
 開元十九年、道者呂翁、邯鄲の道經るに邸舍の中に上り、榻を設けて席を施し、囊を擔ぎて坐す。俄に邑中の少年盧生有り、短裘を衣、青駒に乘り、將に田に適かんとし、亦た邸中に止まりて、翁と席を接す。言笑殊に暢やか、久しうす。盧生其の衣裝弊褻なるを顧みて、乃ち歎じて曰く「大丈夫世に生まれて諧わず。而して困ること是の如くならんや」と。翁曰く「子の膚極めて腧るを觀るに、體胖かにして恙が無く、談諧方に適す。而るに其の困を歎じるは、何ぞや」と。生曰く「吾此れ苟も生くるのみ。何ぞ之に適ひて為さん」と。翁曰く「此れを適さずして、何為れぞ適さん」と。生曰く「當に功を建て名を樹て、出でては將入りては相、列鼎して食し、選聲し聽し、族益をして茂しめ家用肥しむ。然して後以て其れ適と言うべし。吾志し學びて藝を游ぶ。自ら惟らく當年、朱紫拾うべしと。今已に壯室を過ぐるに、猶ほ田畆に勤む。困にあらずば何ぞや」と。言ひ訖わりて、目昏み寐ねんと思うに、是の時主人黃粱を蒸して饌と為さんとす。翁乃ち囊中に枕を探りて以て之に授けて曰く「子此れに枕せば、當に子の榮適志が如くせしむべし」と。其の枕瓷にして其の兩端を竅とす。生首を俛れて之就く。
【夢を見てから進士登第~最初の転落】
 寐中、其の竅大にして明朗なるを見るに處るべく、身を舉げて入り、遂に其の家に至る。清河崔氏の女を娶り、女の容甚だ麗しく產は甚だ殷なり。是に由りて衣裘服御、日に已だ華侈たり。明年、進士に舉がり、甲科に登り、褐を解きて校書郎を授かる。制舉に應へ、渭南縣尉を授かり、監察御史・起居舍人に遷し、制誥を為る。三年して即真す。同州を出典し、陝州に尋轉す。生好く土功す。陝西より河八十里を開き以て通さざるを濟す。邦人之を賴り、碑を立てて德を頌ふ。汴州嶺南道採訪使に遷し、京に入りて京兆尹と為る。是の時神武皇帝方に夷狄を事とす。吐蕃新諾羅・龍莽布、爪沙を攻陷す。節度使王君㚟之と河隍に戰ひて敗績す。帝、將帥の任を思ひ、遂に生を御史中丞河西隴右節度使に除せしめ、大ひに戎虜を破ること七千級、地九百里を開き、三大城を築きて以て要害を防ぎ、北邊之に賴る。石を以て功を紀したり。歸朝して勳を策さるるに、恩禮極めて崇く、御史大夫吏部侍郎に轉ず。物望は清重、群情は翕習にして、大ひに當時の宰相の忌む所と為り、飛語を以て之に中て、端州刺史に貶す。
【復活~二度目の転落、処刑寸前】
 三年して徵されて還り、戶部尚書に除さる。未だ幾ばくならずして、中書侍郎・同中書門下平章事を拜し、蕭令嵩・裴侍中光庭と同じく大政を掌る。十年して嘉く密命を謀り、一日三び接し、獻替して啟沃せしめ、號して賢相為り。同列の者之を害し、遂に「邊將と交結し、圖る所は不軌なり」と誣ひて、獄に下さんと、府吏徒を引きて其の門に至り、之を追ふに甚だ急なり。生惶駭して測らず。其の妻子に泣きて曰く「吾が家本と山東、良田數頃、以て寒餒を禦ぐに足る。何ぞ祿を求むるに苦しまんや。而して今此に及び、思ふは復た短裘を衣、青駒に乘り、邯鄲道中に行かんことを。得べからざるなり」と。刀を引きて自裁せんと欲すも、其の妻之を救ひて免を得。共罪の者は皆死して、生は獨り中人の保護有りて、死を減ずる論を得る。出でて驩牧を授く。
【復活、栄華を極める】
 數歲、帝其の冤を知り、復た起てて中書令と為し、趙國公に封じ、恩旨は殊渥、極一時を備ふ。生に五子有り。僔・倜・儉・位・倚。僔考功員外と為り、儉は侍御史と為り、位は太常丞と為る。季子の倚は最賢、年二十四にして右補闕と為る。(←ここ次男だけスルーされてる)其の姻媾皆な天下の族望たり。孫十餘人有り。凡そ兩つ嶺表に竄れ、再び台鉉に登り、中外を出入す、臺閣を廻翔す。三十餘年間、崇盛赫弈、一時無比たり。末節頗る奢蕩にして、逸樂を好み、後庭の聲色皆第一なり。前後に良田甲第・佳人名馬を賜り、勝げて數ふべからず。
【病~感動のお手紙~死】
 後年漸く老ひ、屢び骸骨を乞ひ、許されず。病むに及んで、中人候望すること、路に接踵し、名醫藥を上げて畢く至る。將に終わらんとするに、上疏して曰く「臣本と山東の書生、田圃を以て娛と為す。偶ま聖運に逢ひ、官序に列するを得る。過蒙榮しく獎め、特に鴻私を受く。出でては旄鉞を擁し、入りては鼎輔に昇る。中外を周旋し、綿歷歲年、恩造を忝くすること有るも、聖化を裨くこと無し。負ふて乘り寇を致し、薄を履みて戰き兢る。日に一日を極むも、老ひの將に至らんとするを知らず。今年八十を逾へ、位三公に歷し、鍾漏並びに歇む。筋骸俱に弊して、彌留沈困す。殆ど將に溘盡せんとす。顧みるに誠効無く、上休明を答ふも、空しく深恩を負ふ。聖代を永辭し、感戀の至りを任ふること無し。謹奉して表稱し、以て聞するを謝す」と。詔して曰く「卿の俊德を以て、余が元輔と作さしむ。出でては藩垣を雄し、入緝熙に贊す。昇平二紀は、寔に卿是れ賴りなり。比びに疾を累ぬるに因りては、日び痊除を謂ふ。豈に遽に沈頓せんや。良に憫默深く、今驃騎大將軍高力士を遣わしむ。就第候省して、其れ勉めて針灸を加へ、余が為自愛せよ。讌して冀はくは妄無からん。有喜を期せ」と。其の夕卒す。
【覚醒】
 盧生欠伸して寤む。方に邸中に偃するを見、呂翁傍に在るを顧みる。主人黃粱を蒸して尚ほ未だ熟さずして、觸類故の如し。蹶然して興きて曰く「豈に其れ夢寐なるか」と。翁笑ひて謂ひて曰く「人世の事も、亦た猶ほ是れなり」と。生之を然りとす。良や久しくして、謝して曰く「夫れ寵辱の數、得喪の理、生死の情、盡く之を知れり。此れ先生が吾が欲を窒ぐ所以なり。敢へて教へを受けず」と。再び拜して去る。

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