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物語が始まらない『月の墓』

―――月にお墓を建てるプランが発表されましたが、あなたなら建てますか?

「月に墓?ありえないね。人間、最期は土に還るもんだ。それが自然ってもんだろ。」

「月の墓。興味ありますね。ただ宇宙へ行けるのって選ばれた人だけじゃないですか。努力した人の特権というか‥‥‥。だから僕は遠慮します。僕なんかが行っちゃいけないと思っちゃうんです。あ、でも僕が今回演じた彼なら、必ず希望すると思います。」

「月のお墓ですか?嫌ですよ。だって、誰もお墓参りに来れないのよ?寂しいじゃない。」

「ああ、今話題の。そうですね‥‥‥。月に建ててほしい、かな。人生の半分を過ごした場所ですから。もはや故郷ですよね。」

「地球ですね。ずっと月にいたでしょ?最期くらい家族と一緒にいたいです。」

「もちろん、月です。月に行くことは叶わなかったけど、管制室の画面越しに見続けたあの大地に、死後くらい立ってみたっていいじゃないですか。家族には呆れられると思いますけど。それに月を見上げれば墓参りになるって、ロマンチックでしょう?」

231128発案

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