「はぁ、はぁ……結局脚はボロボロ? だし、キラーフィッシュどころじゃなかったし、でも【タッケタッケ】は採取できたんだよな?」
「ごふぁがっ!」
「そっかそっか。お前1人……1匹でも【タッケタッケ】が採取できるってわかったのは良かったよ。でも……やっぱりまだ1匹で第2区画はやめておこうか」
「ごふう、あ、がっ!!」
「ぎぎいぎぎぎぎっぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっぎっぎいぎぎっ!!!」
――ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!!!
「いやー、にしても今日のダンジョンはなんか騒がしいな。なんかあったのかなぁ。あ、あと20分くらいで戻る時間じゃん。早く帰って足のケアしないと。夜の営業はなかなかにタフな仕事だか――」
「ごふがあああっ!!」
……。
言語は違えど今ならなんとなくこいつの言ってることが分かる気がする。
多分だけど『呑気に話してもいいから、頼むからこれの処理だけはして帰ってくれ』だよな?
いや、それしかない。
イキリ爺に背負われながらマッスルチキン語を察する。
今のこの状況、捕まえたコムボールのこの鳴き声によって呼び寄せられた大量のコムボールが俺たちを追うというかなりヤバい状況の中、こうしてこんなことを考えたりふざけられるのだから、脚が悪い状態、スキルの重ね掛けのデメリットはメリットとして活きている。
イキリ爺には悪いけど。
実はもうそんなに痛くないけど。
「って出迎えも見えたし、そろそろふざけるのは止めないとか。イキリ爺、餌泥棒処理班のマッスルチキンたちに柵を開けさせてくれ。養鶏場メンバー総出であれを止めるぞ!」
「ごふがあああああああああああああっ!」
いつもの第1区画、いつもの養鶏場が見えると、イキリ爺に指示を促し、コムボールたちとの総力戦に打って出ることにした。
案の定格上のコムボールたちに戸惑いを見せるチキンチキンたちとマッスルチキンたちだったが、ここから逃げれば住処を奪われる、と防衛本能が働いたのだろう、恐怖で目をひんむき、よだれを垂らし、中には失禁しながらもコムボールに次々と向かっていく。
確かに1匹でこれにぶつかっていくのならこれはただの自殺。
だけど増えに増え、第1区画全体を養鶏場として運営できるほどの数なら……。
「よし! 止まった!」
先頭に立つマッスルチキンだけが、大玉にめり込んでつらそうだが、大量のコムボールの突進は停止。
「よっしゃ!俺は大玉を壊す! お前はマッスルチキンやチキンチキンたちと一緒にまたコムボールを捕まえてくれ! ふぅ……。お前ら! ビビってねえで働けやあああああああ!! ここで踏ん張れたチキンチキンには、上等な寝床、マッスルチキンには俺特製シナチクをたらふく食わせてやるからよおっ!」
「「ぎかごがえがきがごぶふぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」
「思ったより効果てきめんなんだけど……もしかしてかなり不満あったりした?……まぁいいか。やる気でたみたいだし――」
『第1区画のモンスターの統率に成功しました。第1区画の統率者としてクリエイト機能の利用が可能になりました。第1区画のモンスターの連れ出しが可能になりました。防御壁のコントロールが可能になりました。第1区画の状況を分析。進言。他区画のモンスターを収容できる檻を増設することができます。ドロップ品、鶏ガラを消費して増設しますか?』
「鶏ガラ? まあ、いいか。はい」
全チキンたちを鼓舞すると、またまた頭にアナウンスが流れたので適当に返事をした。
まさか店よりも先に第1区画をいじれることになるなんて思ってなかったけど……このシステム最高かよ。
だってこれじゃんじゃん他の区画のモンスターをここに連れてきて、食材生産させて、養鶏場だけじゃない、俺だけの生産場が作れるってことだろ?
ダンジョンツクール始まっ――
『――骨の収容所が完成しました』
「うーん、ドクロの見た目に若干の匂い付きか……。なんか思ったんとちゃうなぁ」