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6話 俺だけレベルという概念のある世界

「――きゃああっ!!」
「安心してください姫様。我々ドラゴンという種は炎に耐性があります。この程度であれば生死に関わるダメージを負うことはありません。とはいえ……。どうです? そろそろ人間に協力を求めようなどという愚かな考えを改めていただけましたか? そもそも姫様は人間との交戦によってダメージを負わされたでしょう? 何故そんな考えに至ったのか私どもには理解できません。はぁ……。こんなことになると分かっていれば王の言葉に少しでも耳を傾けず、引き留めておくのでした。やはり王は純潔の個体でないと駄目だったのでしょうかね?」
「あなたもお父さんの悪口を言うのね。爺」
「勇猛果敢で頼もしくはありますが、このような事態を招くようであれば仕方がないでしょう」
「……。私はお父様のためにも自分が今していることが正しかったとあなた達に知らしめてあげないといけない。だから、絶対に帰らない!」
「そうですか……。頭を冷やさせるのはもう不可能のようですね。……その意識をもぎ取って無理矢理連れ帰ります。全員黒い炎の用意を――」


「なんか、殺しちゃまずいっぽいか?」


「なっ!? おま、いつの間に――」

 強化した脚、lv10の状態で地面を蹴り飛ばすこと十数秒。
 自分が思っていた以上にその跳躍は勢いを殺すことなくドラゴンたちのもとまで届いてしまった。
 
まぁそれは良かったんだけど、その時の衝撃波で地面が割れて……あの修繕のことを考えると、時間は掛けられない。
 だから本当は一気に殺してやりたいところだけど……。
 家の事情とか話しだしてて……ここで了承を得ず殺したらアイに恨まれかねない。

 面倒だけどこの先一緒にいる相手とぎくしゃくした生活なんて俺としてはまっぴらごめんなんだよね。

「うん。申し訳とは思うけど……何とかなるかしら?」
「簡単。その代わり貸し一つ、な」
「人間如きが姫様と馴れ馴れしくす――」
「衝撃波だけで十分だったか。……ドラゴンでも年寄りっぽかったもんな」

 背に生やした翼を羽ばたかせ滞空。
 俺が爺さんドラゴンのいる場所よりも上空で足を思い切り振り下ろすと、その衝撃によって爺さんドラゴンの翼は折れて落水。

 他のドラゴンたちも今の衝撃波でダメージを負ったようで、ふらふらと脳震盪を起こしたようになっている個体までいる。

 なんかドラゴンって見た目だけな感じかも。

「……。長い年月を生きるドラゴンの鱗は鉄だって、あのアダマンタイトでできた剣でさえ弾き返すのに……。ただ、脚を振っただけで、だなんて……」
「アイ、もう少し離れろ。こいつらも全員海に落とす。頭を冷やすのはどっちか思い知らせてやるよ」

 翼をはためかせさらに空高く昇った。

 残ったドラゴンたちがその口に特別な黒い炎を貯めているようだから、こっちもそれなりに威力のある攻撃をしてやらないと。

「炎耐性があるならこれでも死ぬことはないってことで……。これが本日最後の魔法にさせてもらうぞ。上級魔法『業火纏:噴出』」

 全身から炎が噴き出し、それを背中に8割、足に2割ほど集中。
 落下とそんな炎による加速。
 それに合わせて踵落としの要領で脚を振るい、纏わせた炎を飛ばす。

 すると今度は衝撃波だけでなく、広範囲に炎が拡散して燃え上がる。

 ドラゴンたちは黒い炎を慌てて吐き出しているものの、衝撃波と炎の2重攻撃によって簡単に押し返すことができた。

「この数を……。一瞬で、ですって……」
「いったろ、簡単だって」
「はっ、はっ! あぼがっ! に、人間が我らドラゴンにこんな、こんな……。これは、夢か?」
「爺、お父様に伝言をお願い。《神子》を連れて行くのは無理だけど、いつかこの人間を説得して連れて行くからって。ただ、他に仕事があるから時間はかかるかもしれないけど……」
「……。その案……異議を唱えたいところですが、今日のところは帰還せざるを得ませんね。まさかこれ程の人間がいるとは……。これを機に王は姫を見守ることに徹するでしょうが、我々が何を言おうが人間と一緒にいるという事実がある限りあの婚約者様が黙ってはいません。婚約者様の強さは我々を遥に凌駕します。その時は……覚悟しておけ、人間。貴様などに我らの姫様はやらんからな!」
「なんか、誤解してないかその言い方」

 しばらく飛ぶことができないのか、身体を振るわせながらゆっくりと海を泳いでいくドラゴンたち。
 なんか全部が済んだ感じじゃないが……。

「やっと休め――」
『レベルが10003になりました。ドラゴニュートのランクがD+に上がりました。取得スキルの選択が可能です。またドラゴニュートから向けられている深愛度が100分の70に上がりま――』
「う、うわああああああああっ!! ち、違うわ! これは、別にあの大軍を倒せたのがカッコよくて、とか、私を必要としてくれて嬉しかったとかそんなんじゃないんだから!」
「……。姉ちゃんの前ではそのツンデレ止めてくれよ。ネタにされるから。それに、俺その気はないから」
「え? じゃあ同姓愛――」
「なんでそうなるんだよ! もう帰るぞ! それで……協力もなにも全部自分で解決してもらえるように明日からはアイ、お前を鍛えていくから覚悟しろよ」

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