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水星の魔女12話を受けて~祝福~

 昨日放送された『機動戦士ガンダム 水星の魔女』前半最終回となる第12話を視聴し、すでに昨夜も感想やら考察やらをツイッターで垂れ流しましたが、一晩明けた今日もまだ言いたいことが溢れてきて


「よ~し、今日も色々ツイートしちゃうぞ!」


 という気分だったのですが、ツイッターが乗っ取りに遭った結果しばらくツイートを控えることになったので、代わりにここで語ってしまうことにします。

 さて、前期OPテーマ『祝福』の一節である『逃げ出すよりも進むことを』がサブタイトルになっている12話ですが、個人的にはそことは別の一節もまた本編の内容に直結していると感じました。それは


 僕達は操り「人形」じゃない


 『祝福』は主人公スレッタの乗るMS(巨大人型ロボット)エアリアルの視点で歌われていて、それは人間と言葉は交わせられないものの実は人並に思考と感情を持っているエアリアルの人工知能の想いを表したものですが……

 この「僕達(エアリアルとスレッタ)は操り人形じゃない」というフレーズは不満の表明であり、実際は「エアリアルもスレッタも操り人形である」という残酷な現状を逆説的に示唆しています。

 その心情は水星の魔女の公式サイトで見られる小説、アニメのプロローグから第1話のあいだの出来事を記した『ゆりかごの星』にて語られていますが、そこでエアリアルはスレッタが母プロスペラの復讐の道具とされていることに心を痛めています。

 復讐には自分だけが付きあえばいいから。

 あんなにいい子なスレッタは巻きこまないでと。

 そんな優しいエアリアルですが、その意思を人間たちに伝える術がないため、それから起こる「スレッタが操り人形にされる現実」を見ていることしかできません。

 エアリアルの機械の体はスレッタの乗機として戦闘で活躍して彼女を支えはしますが、エアリアルの心(自我)自身は自らの意図でその体を動かすことは全くできないか、できたとしても操縦者の入力が優先でそれには逆らえないようです。

 だからアレをとめられなかった。

 エアリアルに乗ったスレッタが、ミオリネに銃を向けた敵──生身の人間──をエアリアルの手で叩きつぶして殺害し、そんなショッキングな光景を見せたためにミオリネから「人殺し」と罵倒される地獄のような展開を。

 スレッタは母の操り人形であり、エアリアルもまたMSという機械仕掛けの操り人形であることから逃れられなかった。母に言われるがまま戦いで人を殺すことに順応したスレッタは躊躇なく生身の人間を攻撃するようエアリアルを操縦し、エアリアルの体は忠実にそれを実行してしまった。

 あの時、エアリアルの心は「ダメだ」と叫んでいたでしょう。

 エアリアルは『ゆりかごの星』を見るに若干サバサバしたところはあるものの、人間社会の常識的な倫理観はスレッタ以上に理解しているように思えます。エアリアルなら「いくら命を助けるためとはいえ目の前で人間を潰したらミオリネに怖がられる」という、スレッタが思い至れなかったことにも思い至ったはずです。それでもどうしようもなかった。

 どちらも操り人形である。

 その事実をこれでもかと示された12話でした。リアタイ時は衝撃でしたが、時間が経って少し落ちつくと、そういう話が来るのは必然だったという思いも浮かんできました。

 なぜなら『ゆりかごの星』と『祝福』でエアリアルはスレッタが操り人形にされていると警告し、その呪縛からの解放を訴え続けていたにもかかわらず、実のところ本編ではまだそんなやっきになって解放しないといけないほど深刻な呪縛は描かれていなかったからです。

 もちろん、11話までにもスレッタには母の操り人形らしいことに起因するらしい、不穏な描写が多々ありました。ですが、まだ生ぬるかった。


「これはダメだ! スレッタを呪縛から解放しないと!!」


 と視聴者に強く思わせるに足る強烈な呪縛の描写がまだなかったと僕は感じていました。だからこそ『呪縛からの解放』というテーマを描く前に、まずがっつりと呪縛イベントが来るだろうとは予想していたのですが……まさかあそこまでとは……グフッ

 そういうわけで、前半最終回でしっかり呪縛が描かれたので、4月からの後半戦でようやく『祝福』で歌われた呪縛からの解放を目指した物語が始まるのだと思います。

 それなら後半のOPも『祝福』でいいように思いますが、そこは変わるのでしょうね。そして本編でいよいよ呪縛が解かれる時になってBGMとして『祝福』が流れるのだと予想しています。使い古されたお約束な展開ではありますが、そういうのでいいんだよ! ホント頼みますよ!? そんな心境で後半戦を楽しみにしたいと思います。

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